手の届かない君に。

平塚冴子

文字の大きさ
281 / 302
3学期

王子の待ち侘びた日1

しおりを挟む
翌日は結局、シカト作戦解禁になったのに、田宮 美月の謝罪やら何やらで授業中しか君に会えない僕は、欲求不満だし、禁断症状出そうだし…。
やっぱり、電話掛けようかな…。
ベストのお礼も言いたいし。

そんなモヤモヤした気持ちで午後の授業の中休み、職員室で椅子をユラユラと揺らしていた。
「おう!何ダレてんだよ。」
パコパコと丸めたクリアファイルで清水先生が僕の頭を叩いた。

「あ、別にダレてた訳じゃ…。」
「今日はもう、放課後の謝罪は俺がやるから。」
「えっ…。」
「これでも学年主任だし、金井先生とお前だけにやらせとくのも何だしな。
午前中と昼休み立て続けはさすがにキツいだろ。
明日もあるし。」
「あ!ありがとうございます!」

これで、放課後に旧理科準備室に行ける!
思わず喜びの声で返答してしまった。

「おう?おう?そんなに喜ぶ事かぁ?
まあ、この件については後半、お前と金井先生にばっかり重荷を背負わせちまったけどよ。」
「いえいえ。
そんなつもりじゃ…。
でも、助かります。
丁度一息つきたいと思っていた矢先だったので。
つい、喜んでしまって。」

本当は田宮 真朝に2人きりで会えそうで、興奮して喜んでたんだけど。

「まぁ、これが終わったら卒業式まですぐだ。
春休みはゆっくりと休め。
お前の場合別に担任クラスも持ち上がりだから、変わらないし。
春休みにイチャつけるだけイチャつけ。」
「なっ!教師のセリフじゃないっての!
全くゲス牧師健在ですね。」
「いーじゃねーの。
教師の仮面外す時間くらいあってもよ。」
そう言いながら、またパコパコと僕のおデコをクリアファイルで叩いた。

「もう!やめて下さいよ!
中学生並みですか、あんたは!」

クリアファイルを振り払う仕草をして、笑顔で返した。

さて…あと1時限終えたらホームルームやって、旧理科準備室に行くぞ!
そして…君が旧理科室に来たら、そしたら…僕は…!

颯爽と午後の残りの授業をしに教室へ移動した。
心はもう旧理科室の妄想に囚われていた。

とはいえ実際、早朝とは違って生徒も沢山残ってる放課後でイチャイチャとまでは出来ないのはわかっていた。
それでも、ベストのお礼を言えたり話せたりするだけで僕は嬉しい。
何せずーっとガマンしてたんだからな!


そんなこんなで、帰りのホームルームを早めに終えて、猛ダッシュで職員室に戻った。
出席簿やら教材をサッサとしまい、いざ旧理科準備室に!…というところで、急に着ていた白衣を引っ張られた。
牧田か…?
と、思って振り返ると、田宮 美月が立っていた。

「清水先生まだなの。
来るまで少しだけど、話したいの。」
「えっ…わかった。」
くそっ!運悪い!
けど…清水先生はホームルームさえ終えれば職員室に来るはず。
ほんの少しの辛抱だ。

清水先生の椅子に田宮 美月を座らせて、僕は自席に座った。
「バレンタインの事だけど。
あの娘、金井先生とディナーですってね。」

「ブッ!ゲホッ!ゴホッ!」
思わずむせ返ってしまった。
何せ意気揚々で会いに行こうとしてたんだから。

「武本先生はバレンタインは1人で過ごすの?」
「まあな。相手いねーし。」
「マンションで1人きり?」
「…ンだよ!そうだよ!孤独なオッさんだよ!
悪かったな。
お前みたいなリア充じゃねーよ!
イジるなよそこは!」
「あははは。ムキになって。
金井先生に取られてるの気にしてるのね。」
「黙れ!シッ!他人に聞かれる!」
そんなに腹を抱えて笑うなよ…傷つくだろ。
「まぁいいわ。確認したかっただけだし。
清水先生が来たわ。」
後ろを振り向くと、鳩が豆鉄砲食らった顔した清水先生が立っていた。

「そこまで仲良くなったのかよ。
順番逆じゃねーの?
なんで姉貴と先に仲良くなってんだよ。」
「違うっ!そんなんじゃ…!」
「あははは~本当。
武本先生って、からかうの面白い~!」
清水先生は呆れるわ、田宮 美月は腹抱えて笑うわ、もう踏んだり蹴ったりだよ!

「じゃあ、僕はもう行きます。
後、宜しくお願いします。」
僕はその場から逃げるようにして、職員室を後にした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

処理中です...