手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

王子のバレンタインデー7

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「王子のバレンタインデー7」

「真朝…その。眠っちゃう前に…一回キスを…。」
「キスしたいですか?」
「したい!メチャクチャしたい!
でも…真朝がしたくないなら…しない。
一方的なのはやっぱり、良くないから…。」

そう、言い終わる前に…真朝は左手で僕の頬を引き寄せて自分の唇を僕の唇に重ねた。
完全に閉じてなかったお互いの口は、自然と舌を絡めていた。

「もう眠った方がいい。
明日、学校だし。」
僕はそう言って真朝をお姫様抱っこしてベッドに運んだ。
「先生…じゃなくて正輝さんは?」
「いいよ先生で。
僕はソファで眠るから大丈夫。
暖房付けとくし。」
そう言って、真朝をベッドに寝かせ、腕を外そうとした。

「一緒に…。
添い寝して貰えませんか?」

ん?
今、何て言った?
添い寝…一緒に……同じベッドで!?


「いやいや、ダメだろ!
それは…。って…えっと。」
「眠れそうで眠れない感じなので…人の呼吸を聞いたら眠れるかと…ごめんなさい。
不道徳…ですよね。」
試してるのかな…僕が約束と気持ちのどちらを優先させるのか…気持ちを試されてるのなら…。

「そうか…わかった。
一緒に眠ろう。
嫌になったら言ってくれ、直ぐにソファに移るから。」
「…はい。」

僕等は部屋の電気を消して、同じベッドの中で向き合って寝た。
僕は真朝が安心出来るように、髪を撫でた。
僕の顎下におデコを埋めて君は眠りについた。

意外にも僕は、欲情する事はなかった。
このままが、あまりにも雲の上で寝てるような気持ち良さで…。
ふわふわのベッドに真朝の呼吸が子守唄のように耳に流れて来て…お互いの体温が暖かくて…まさに夢心地だった。
幸せのままに、僕も眠りについた。

翌朝。
コーヒーの香りと眩しい朝日で目が覚めた。
ベッドを出ると既に制服に着替えていた田宮がエプロン姿でキッチンに立っていた。
「おはようございます。
日本食にしたかったのですが、お味噌がなかったので。
トーストとコーヒーとハムエッグで許して下さい。
後…おにぎり。
先生、好きみたいだから。
お昼に食べて下さい。
梅干しとおかかですけど。」
「おはよう。
こんなに…ありがとう。
嬉しいよ。
顔洗ってくる。
朝飯一緒に食べよう。」

日常の中に僕と君がいる。
なんて夢よのうな穏やかな風景だ。
ゆっくりとゆっくりと流れる時間。

僕は朝食を食べ終えて、席を立った。
「後片付けは、僕がやっておくから先に学校に。」
誰かに見られて騒がれても困る。
時間差で出なきゃならない。
「はい、よろしくお願いします。
あの…先生。
『勉強会』ですけど…。」
「心の準備は出来てる。
土曜日でいいだろ。
他の生徒も居ないし、旧理科室でやれる。」
「はい。
時間はお昼の後で。
万が一…食事前だと食べられなくなるかもしれないので。」
「そうだな…メンタルな事だし。
わかった午後2時にしよう。
久瀬には僕から連絡を入れておく。」
「はい。お願いします。」
頭を下げて、手荷物を持ったまま、真朝は足早に部屋を出て行った。

僕は部屋の中から手を振って見送っていた。

魔女の魔法にかかったバレンタインデーが終わった。
後は…『勉強会』だ。

僕は身支度をしながら気合いを入れた。
もう、何もきっと怖くない!
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