【完結】鶴汀楼戯伝~BLゲームの中の人、男ばかりの妓楼に転生する~

鹿月

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第二話 紅梅《最後の願い》

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 ……はああぁ!?なんでばれてんの!?その事は程将軍の世間体もあるし秘密だって、鶴天佑も言ってたのに!
 動揺を隠して必死に平静を装い、俺は言った。
「……人違いじゃないですか? 蛋は僕だけじゃありませんし」
 ごめん秋櫻。でもここは言い逃れておきたい。なんとなく、真波さんに迷惑をかけそうだから。すると洸永遼は首を横に振って言った。
「私を誰だと思ってる? この街で、私が知らないことはないよ。この前の花祭りで孵化したはずの皐月はまだ店に出ていないそうじゃないか。代わりに出ているのは君だろ? ……しかし、指名できるのはただひとり。程真波青鎮将軍だけ」
 ……ぐっ。なんだこのひと、完璧に知ってるな?  誰が言ったんだ、と青くなっていると、鈴蘭が助け舟を出してくれた。
「秘密にしていたはずなんですけど。青鎮軍に睨まれるのはいやですからね。さすがによくご存じでいらっしゃる」
 すると洸永遼は朗らかに笑った。
「別にいいだろう、孵化の前だろうが可愛い子には声はかけたいものだ。しかし気になるのは、程将軍が君のどこにそんなに惹かれたかということだ。今年孵化した皐月には私も会った事があるが、綺麗な子だしね」
 そうだ。皐月は綺麗な子で、一方俺は綺麗というかかっこいい系(ということにしておく)。とはいえ中身は28のお兄さんだし、もはや可愛げなどないとも思う。
「そうなんですよね、僕も不思議なんです」
 素直に答えると、洸永遼は俺の方を向いて、また俺の顎に手をかけた。
「……君は程将軍と、どんな夜を過ごしているのかな?」
 端正な顔を近付け、魅力的な低音ボイスでささやく。
「まさかただ話をしているだけ、ではないんだろ?」
 ふっと香るアルコールのにおい。酔っ払いめ、と思いつつ、正直に答える。
「……一緒に、寝ます」
 すると彼はふふっと微笑んだ。
「程将軍は堅物だと聞いていたが。案外やるものだね」
「洸の旦那、閨でのことを聞くのは野暮ってものですよ」
 鈴蘭兄さんが割り込んでくれる。しかし洸永遼はにやっと笑ってさらに続けた。
「君はまだ孵化前だろう? どんなふうに彼と寝るの?」
 うわ! セクハラだ! コンプラ違反で訴えてやる、ってどこに!? 鈴蘭兄さんに目線をやると、困ったように笑っていた。こういう反応がセクハラを加速させるんだ! ……なんて言っていても仕方がない、そもそもセクハラなんて言葉も通じない世界観だろうし。俺は彼をまっすぐに見つめて言った。
「寝ます。ただ一緒に。それだけです」
 すると洸永遼は若干の動揺を見せた。
「……寝るって、そのままの意味で?」
「ええ。程将軍は、お優しい方ですから」
 ありったけの嫌味を込めてみた。しかし通じなかったようで、洸永遼は首を傾げた。
「妓楼に来て? ただ君と寝るだけなのか? なんのために?」
 理解できない、というように眉間にしわを寄せる彼を見ていると、だんだん面白くなってきた。
「程将軍は、僕のことを『暖かい』って言ってくださいます。寒い日にはちょうどいいって」
 すると洸永遼は「ぷはっ」と吹き出した。
「あっはっは。なんだそれ。まるで犬猫みたいに、暖を取るために抱いて寝るっていうのか。面白いな!」
 あまりに楽しそうに笑うので、俺もつられて笑った。確かに、程将軍はなんで俺と寝てるんだろう。正直俺と寝たからって武運が得られるわけじゃないと思う。陽と陽を合わせるっていったって、俺たちは単に寄り添って寝てるだけだし。仮に陽と陽云々の話が本当だったとしても、もっと生々しい行為が必要なんだろうし。
「僕にもわかりませんけど。でも、すごく穏やかなひとときです」
 考え考え言うと、笑い続けていた洸永遼はぴたりと笑うのをやめた。
「……へえ」
 そして、すこし考えるように俯いたあと、鈴蘭のほうを見た。
「……鈴蘭。すまない。今夜は私も、この子と寝ることにする。程将軍の気持ちを、味わってみたい」
「「ええええっ」」
 鈴蘭と俺の声が図らずも重なって、きれいなハーモニーが生まれた……じゃなくて!
 なんでそうなるんだよ。鈴蘭と夜を過ごしにきたんだろ、俺といたってやらしいことなんにもできないよ! 金持ちの道楽マジで困るんだけど! 
 俺の動揺などどこ吹く風で、洸永遼は楽しそうに笑って、目の前の杯を呑み干した。
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