理衣さんは異世界に召喚されましたぁ!。〜病弱な僕だけが魔王を倒せるらしい〜

柚亜紫翼

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005 - こんやくさせられていた! -

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ざわざわ・・・

「皆に紹介する!、我がローズマリー王国の新たなる救世主、勇者リィ・ダテハ!」

がやがや・・・

わいわい・・・

「わぁぁぁ!」

「リィ様可愛い!、綺麗!」

「勇者さまぁ!」

「魔王を倒して下さい!」

僕が目覚めてから10日経った、正確に言えば僕が召喚されて改造手術を受けていた期間が80日あったから召喚後90日が経っている。

僕は今王城のバルコニーで国王から紹介されているところだ、隣には王妃様とまだ幼い王子王女様、城の前に広がる庭には大勢の国民が集まっていて国王陛下は初対面の時とは別人のように威厳がある。

庭の上空には小型の飛行物体が多数浮いている、ドローンっぽい形だがどうやって飛んでいるのか全然分からない、カメラが付いていて世界中に生中継されているらしい。

王城の周りは近未来的な大都市だ、今は夜だから遠くまで見渡す限り光の海・・・この王城は浮遊島の上に建っていてローズマリー王国の首都ゼーレの中心に浮かんでいるそうだ。

「勇者リィよ、魔王を倒してローズマリー王国を守ってくれ!」

「はい、偉大なる国王陛下のお望みのままに!」

心にも思っていない発言をしたのは別に僕が10日の間に洗脳された訳ではない、「今日は国民にリィを紹介するんだ!、私もたまには国王らしいところを見せたいな・・・」そんな独り言を聞いてしまった僕から彼へのちょっとしたサービスだ。

実際彼にはとてもお世話になっている、王城に大きな部屋を与えられて何不自由なく暮らせているからね。

僕の声を聞いて集まった民衆からは大歓声が起こる、いつもはポンコツな国王陛下もちょっと嬉しそうだ・・・。

「リィ、部屋に戻ろうか、明日は出発式で街中をパレードするから早いうちに休んでおいたほうがいい」

僕は大勢集まった民衆に向かってもう一度手を振った。






王城の中に入った後、僕は国王がプライベートで使用しているリビングに招かれた、同席者は宰相と主任エンジニアのスチールさんだ。

「お疲れ様・・・明日はいよいよ魔王討伐に出発だな」

そわそわ・・・

「はい・・・」

「重い責任を君一人に押し付けてすまない、だが魔王を倒せる者は勇者殿しか居ないのだ、パレードには私も出るが次に落ち着いて話せるのは討伐が終わってからになるだろう」

そわそわ・・・

「はい・・・お気になさらず」

目覚めてから今日まで国王とは何度も会って話をした、僕の身体の件については丁寧な謝罪をされたから受け入れたし普通に会話ができるくらいには仲良くなった・・・筈なのだが今日の彼は少しおかしい。

何か落ち着きがないし目が泳いでいる、こんな時の国王は僕に何か隠している・・・。

「あの、国王陛下・・・」

「な・・・なんだろうか?」

なんで目を逸らすんだよ!。

「僕に何か話したい事があるのでは?」

僕が察してくれて嬉しいのか国王はとてもいい笑顔になった。

「実は・・・勇者殿に頼みがあるのだ」

何かとても頼みにくい案件があるらしい、嫌な予感がする。

「何でしょうか?」

「勇者殿の生身の身体は今も生命維持装置に繋がれて生きている」

「は?」

衝撃の事実が告げられた、そんなの初耳だぞ、どこかに廃棄されたのかと思ってた。

「我々の技術でも脳や脊髄の無い状態で長く生き続けさせる事はできない、時間と共に障害が出ていずれ死んでしまう・・・1年か、持って1年半だろう」

ここの1年は地球と異なりちょうど400日だ、あと1年ちょっとで元の身体が死んでしまうのか。

「・・・」

ぱらり・・・

「実は勇者殿の身体を研究素材として活用し未来の為に役立てたいのだ・・・これがその承諾書になる、もし提供してくれるのならサインを貰えないだろうか」

つまり献体のような形で僕の身体を使いたいって事なのかな?。

「以前聞いた時に僕は生身の身体には戻れないと言ってましたよね?」

国王が頷きスチールさんが答えた。

「はい、一度機械化改造手術を受けた人間は二度と生身の身体には戻れません、なので研究に使わせて頂こうと・・・」

「良いですよ・・・僕にはもう必要無いものなので好きに使ってください」

「ではここにサインを・・・」

かきかき・・・

「どうぞ」

ぱらり・・・

僕は書類に目を通した後サインをして国王に渡した、顔を見るととても嬉しそうだ・・・。

「国王陛下・・・」

「な・・・何だろうか?」

「僕に隠している事・・・他に無いですか?」

「ぐっ・・・」

本当にこの国王は隠し事が出来ないみたいだな!。

「実は・・・勇者殿に婚約の話があるのだよ、しかも我が国だけではなく国外からも大量に・・・」

「こっ・・・婚約ぅ!」

挙動不審になっている国王を見かねた宰相が会話に入って来た。

この宰相も身体が大きくて怖い・・・名前はアーノルド・コナーン、まるで歴史を変える為に未来から送られてきた殺人マシーンのような見た目だ。

ターミネー・・・いや、宰相がとんでもない事を僕に言った、何で僕に婚約の話なんて来てるんだよ!。

「勇者殿の今の実力であれば魔王討伐に失敗する事は無いだろう、討伐が終われば君は世界を救った英雄だ、国からは最上位の爵位が与えられる予定になっている・・・勇者殿と縁を結びたいと考えている貴族家や諸外国の王族はとても多い」

「でっ・・・でも僕は・・・」

魔王を倒した後は日本にも帰りたいし・・・この国に残るとしても堅苦しい貴族の生活なんてしたくない、そもそも僕の身体は機械なんだから結婚しても子供は産めないし!。

「魔王討伐の後、我々としては勇者殿の自由にしてもらって構わないと考えている、元居た国に帰ってもいいしこの世界で暮らしてもいい・・・だが勇者殿を利用したり派閥に取り込みたい勢力もあるのだ」

「・・・」

「そこで提案なのだが・・・国王陛下には信頼のできる友人がいてね、その男は上級貴族で権力もあり性格も良い、早くに妻を亡くしていて長く独り身でもある・・・」

「ちょっと待って!、僕にその人と結婚しろっていうの?」

「そうだ、結婚といっても勇者殿に群がって来る連中を牽制する偽装結婚という事になるかな、彼は莫大な資産や権力を持っているから他の貴族達は迂闊に手を出せない・・・悪いとは思ったのだが既に婚約の手続きは終わっていて教会に君のサインが入った婚姻届を出せばすぐに結婚が認められる状態だ」

知らない間に僕は婚約させられていた!。

「待ってよ!、何でそんな大事な事を僕に一言も相談してくれなかったの?」

「陛下には事前に伝えて了承して貰うようにお願いしていた・・・だが、ようやく仲良くなった勇者殿をまた怒らせるのではないか・・・そう思ったのだろうな、言い出せず先延ばしにしていたらしい」

僕は国王の顔を見る・・・目を逸らされた!。

「結婚と言ってもあくまでも書類上のものになるだろう、もちろん相手を気に入ったのなら本当に夫婦になって貰っても構わない、むしろ我が国としては大歓迎だ」

「ぼ・・・僕に拒否権は?」

「もちろんあるが・・・独身のままだと勇者殿に求婚して来る何百人もの上級貴族や他国の王族を相手して貰わなければならなくなる、それは面倒だろうと思って提案したのだが・・・」






かきかき・・・

ぱらっ・・・

「・・・」

「確かに受け取った、明日にでも教会に提出しておこう」

僕は婚姻届にサインをして宰相に手渡した・・・どうしよう本当に結婚しちゃったよ!。

相手に会ってみたいと言ったのだが魔王誕生の報告を受けて領地に帰っているから王都には不在らしい、写真を見せて貰うとワイルドなイケオジだ・・・。

名前はダニー・オルネン・・・この国の北部辺境を守る騎士で上級貴族家当主・・・体格は筋肉モリモリマッチョマンという訳ではないがとても強そうだ。

「いやぁ本当に良かった、断られたらどうしようかと思っていたのだ、魔王の住む魔界に行く途中オルネン領を通るから一度会っておくといい」

国王が僕に満面の笑顔でそう言った・・・やはりこいつはクソ野郎だ。
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