【R18】巫女と荒神 ~いまだ神話の続く町~

ゴリエ

文字の大きさ
4 / 51
第一章 神に選ばれしもの

選定の儀①

しおりを挟む
 選定の儀の当日を迎えた斉城さいじょう学園は、いつも以上に清浄な気で満ちていた。いたるところに紙垂しでの下がった注連縄しめなわが張り巡らされ、学園敷地内を神域として包み込んでいる。学園全体が神社のような装いになっていた。

 このように特定の場所を結界占地とする技は、南条がもっとも得意とするものだ。
 そのため桃子の母――雪江は、昨日桃子が帰宅したときには、すでに祭祀さいし準備のために家を出ていた。桃子が雪江を振り切って家を飛び出した、昨日の朝以来、会ってはいない。

 桃子は正直なところ、帰宅後母と顔を合わせずに済んでほっとしていた。

 しかし、問題はあくまで先延ばしになっただけで、少しも楽観視はできない。加えて、相変わらず夢見も悪いまま。
 それでも、桃子の気持ちと関係なく空はよく晴れ、大半の人々にとっては、幸先の良い一日の始まりに映っていると見えた。

 学園内には生徒や教師だけでなく、その保護者や町の神社の代表者たち、そしてそれぞれの神社の氏子総代うじこそうだいなども一同に介しており、ひしめく人数分だけ騒がしくなっていた。全生徒にも、朝から校庭に集まるよう前もって指示が出されている。
 桃子たちのクラスも、登校してそのままグラウンドで待機させられていた。

 向かって正面、階段を数十段ほどのぼった先には高台がある。普段は朝礼台として使われているが、学園祭などではちょっとしたステージ場としても活用できる場所だ。その高台の奥に、今は立派な祭壇がまつられていた。これからいよいよ選定の儀が始まるのだと、誰もが意識させられるような舞台装置だった。

 早朝から儀式準備の手伝いに来ていた忍とは、桃子は早くから互いに存在を認識し合っていた。しかし、今日に限っては桃子も声をかける気になれず、忍のほうも桃子を避けている節があった。
 今まで誰もが桃子を無視しても、忍だけは友人であり続けてくれたというのに。巫女姫の座を争う者同士、もう慣れ合うつもりはないということなのだろう。たとえ桃子に一切その気がなくても、忍からはそのような気概が感じられた。

(私が選ばれるわけない。巫女姫はきっと、みんなの言うとおり忍ちゃんで決まりだし、憑坐よりましは西宮くんだ。これが覆るなんて、誰にも考えられないことなのに)

 桃子は次に、友人たちに囲まれて屈託なく笑っている西宮を、遠くから眺めた。
 できるだけ目立ちたくない性分の桃子とは対照的に、西宮は、いつだって人の輪の中心にいて、堂々と注目を集めた。本人も派手好きな性格で、そういう星のもとに生まれついた者として、わかりやすく人一倍陽の気を放っている。

 かつては桃子も、彼に淡い恋心を抱きもした。しかし、時を重ね、自分や相手の置かれた立場・状況がわかってくると、もう何も考えずに憧れ続けることはできなかった。
 何より、西宮が桃子を避け始めたのは、そんな桃子の恋心を察して、嫌気がさしたからに違いないのだ。これ以上、彼に迷惑な想いを寄せるわけにはいかない。

 一人陰鬱でいると、背後から桃子を呼び止める声がした。

「おはようございます、桃子さん」
「――春彦くん」

 桃子を見つけて、山田春彦はすこぶる嬉しそうだった。

 彼の身なりは、昨日よりもずいぶんとましになっていた。寝ぐせは相変わらずだが愛嬌で済む程度には整えられていたし、眼鏡のゆがみも修繕されている。制服も転校生らしく、汚れのない真新しいものを着ていた。(昨日泥が付いていたのは、登校時派手に転んでしまったためらしい)
 顔色も良く、表情も明るい。

 いくらか様変わりした春彦を見て、桃子は目を見張ると同時に、複雑な気分にもなっていた。
 昨夜、自宅に帰ってからもう一度考え直したことだが、やはり春彦と仲良くするのは、どう考えても彼のためにならない。ただでさえ、よそ者と爪はじきにされているのに、この上自分のような者と親しくしては、彼の立場はますます悪くなる。春彦は転校したてでまだ友人もおらず、少し親切にしてくれた桃子に、とりあえず懐いているだけなのだ。
 彼のためを思うなら、もう一度桃子がきちんと説明して、仲良くできない事情をわかってもらわなくてはならない。

 ――そう、思っていたのに。
 春彦の顔を見て、無邪気な笑みを間近にしてしまうと、もうだめだった。
 実のところ、桃子も本当は、押しつぶされるギリギリのところまで孤独に耐えていた。一度でも人と接する温かさや楽しさを思い出してしまうと、それを自ら手放すのは容易なことではなかった。
 決心がつかないまま、結局は昨日と同じ調子で春彦と接してしまう。

 何も知らない春彦が、桃子に話しかける。

「教室に誰もいなくて驚きました。もう授業が始まる時間なのに」
「今日の授業はないの。午前中の時間全部が選定の儀にあてられる。そのあとは町全体で直会なおらいをするから、部活動も休みなの」
「直会?」

 春彦が首をかしげた。

「……えっと。直会っていうのは、祭祀さいしが終わったあとに神饌しんせん――神様にお供えした飲食物を、参列者のみんなで戴くことよ。神人共食しんじんきょうしょくといって、神に感謝しながら、神の力を授かろうというものなの。今回は普通の直会と違って町全体で催されるものだから、お祭りみたいな形に近いと思う。荒神あらがみ様に選ばれた、憑坐よりましと巫女姫の二人をお祝いするのよ」
「荒神様?」
「ああ、ごめんなさい……いろいろと説明不足よね。荒神様というのは、昨日話した須佐之男命すさのおのみことのこと。大蛇おろちでもある須佐之男命を、この町では総じて荒神様と呼んでいる。神の御名みなを軽々しく口に上らせることは、本来とても恐れ多いことだから。憑坐も巫女姫も体こそ人間のものだけど、特に憑坐は、その体を現身うつしみとして荒神様にお貸し申し上げることになるから、実質的に現人神あらひとがみとして扱われる。とても尊いお立場なの」

 春彦は素直に耳を傾けてはいるものの、その話に特別関心を寄せるわけでもないようだった。

「なるほど。でも、その偉い人たちのことなんて、僕らにはさほど関係ありませんよね? ――ねえ、桃子さん。儀式が終わったら、その直会というお祭り、僕と一緒に回ってくださいませんか。僕、もっとあなたと一緒にいたいんです」

 桃子は一瞬目を瞬かせて、それからみるみるうちに顔を赤らめていった。

「い、いえ……そもそも、それは無理な話なの。直会のあいだ、私は自由にできるわけじゃないのよ。南条家の者として、お母様や叔父様について、いつもお世話になっている氏子さんや崇敬者さんたち、議員の先生方とか他神社の神職さんたちとか、いろんな方々のところに挨拶回りをしなくてはならないから」
「そう、ですか」
「ごめんなさい、せっかく誘ってくれたのに」
「いえ。こちらこそ、桃子さんのご都合も考えず、ぶしつけなお願いをしてしまいました」

 春彦が見るからに残念な様子で肩を落としていたので、桃子も幾分か申し訳ない気持ちになっていた。だから、つい本音を漏らしてしまった。

「そうできれば、私もどれだけよかったか。……本当は、神社の娘としての挨拶回りなんて、嫌で億劫で仕方がないの」

 それを聞いた春彦は、桃子が驚くほどに、目の色を変えてむきになっていた。

「そんな。そんなに行きたくないものなら、行かなければいいのに。――桃子さんのお母様は? 今日、この場に来られていますよね。一度僕と話をさせてください、きっと説得してみせます」
「だ、だめよ、急に何言ってるの」
「だって、あなたはあまりにも、ご自身の意思とは無関係なところで振り回されすぎている。この学園でひどい仕打ちを受けていることだって、お母様はそもそもご存知なんですか? もし存じ上げないようならすぐにでも知っていただくべきですし、知っていて放置しているとすれば、そんなおうちに桃子さんを置いておくわけにはいきません」
「ま、待って。話が飛躍しすぎ――」

 と、慌てて制したものの。今の春彦の言葉で、桃子はふいに泣きそうになっていた。
 今までこんなふうに、桃子を真剣に心配してくれたり、桃子の代わりに怒ってくれたりする者など、周りには誰もいなかった。それが当たり前で、降りかかってきた災難は、すべて自分一人でなんとかするしかないと思っていた。

 目からこぼれかけた涙はすぐにぬぐったが、内心の動揺は、春彦には簡単に見透かされていた。

「僕は、決して軽はずみな気持ちで言っているわけではありません。昨日、桃子さんが僕を助けてくれたみたいに、今度は僕があなたの力になりたいんです」
「ありがとう……でもいいの。今いろいろ上手くいっていないのは、結局、全部自分が招いたことなんだもの。嫌なことから逃げ続けてきた私のせい。私は忍ちゃんのように、厳しい巫女修行に耐えることができなかった。何をしても、忍ちゃんや西宮くんのような特別な神力しんりきは、私に宿らなかった。春彦くんにかばってもらう価値なんて、私には……」
「逃げて何が悪いんですか。耐えられないほど辛いことなら、むしろ逃げるべきなんです」

 春彦が桃子の両肩を掴む。

「人間以外の生きものは、みんな逃げることが一番の生存戦略だと知っています。人間だけがいろんな理屈をこねて、逃げるのはよくないことだと言い張るんです。逃げずにとどまった結果、体や心を壊したり、命まで落としてしまっても、逃げるなと言ったほうは責任なんか取ってはくれないのに」

 春彦は、どこか異様なまでに悲愴な表情をしていた。

「桃子さんのような優しい方が、他人にいいように利用されたり、傷つけられたりするのは絶対に許せません。これからは、僕があなたを守ります。そうさせてください。あなたのそばにいたいんです」

 桃子は言葉を失った。自分が誰かにこんなことを言ってもらえる日が来るなんて、思ってもみなかった。

(……あれ? でもそういえば、昔誰かにも、こんなふうに言われたことがあったような……)

 ふいに、忘れていた遠い過去の記憶がよみがえり、桃子は不思議な気持ちになっていた。
 幼いころ、同じように「桃子を守る」と言ってくれた男の子がいたような気がする。が、それが誰だったのかはわからない。こんな不甲斐ない自分に、そんなことを言ってくれる人が何人もいるとは思えないのだが。

 気恥ずかしさが先に立ってしまい、せっかく熱心な言葉をかけてくれた春彦に、桃子は少しも同じ熱量の言葉を返せなかった。

「な、なんだか春彦くん、昨日とずいぶん感じが変わったよね」
「そうでしょうか」
「うん。昨日はなんていうか、あまり元気がなさそうだったから。でも、今日は昨日よりもずっと頼もしく見えるよ」
「それはきっと、桃子さんに出会えたからですよ。今日もあなたにお会いできるのが楽しみで、始業時間が待ち遠しかったんです」

 桃子はまたも面食らわされたが、春彦の言動にいちいち動揺するのはやめることにした。話しているとなんとなく感じるのだが、この山田春彦という転校生は、子どものように、ただただ素直で純真なだけなのだ。
 この笑顔が嘘ではないということだけははっきりわかるのだから、もうそれで充分だと思った。

「そろそろ時間よ。もうすぐ前儀ぜんぎが始まる」
「前儀?」
「選定の儀の前に、邪気や不浄をはらうための儀式よ。雅楽奏上ががくそうじょうから始まって、お弓神事ゆみしんじとそれから神楽舞かぐらまいを荒神様に奉納ほうのうするの。雅楽奏上は東宮あずまみや家が、お弓神事は西宮家が、そして神楽舞は、南条家と北条家が行うものと昔から決まっている」
「では、桃子さんも後で舞を?」
「いえ、私は……」

 桃子はやや表情をくもらせてから、取り繕うように微笑んだ。

「私は頭数には含まれていないの。神楽舞は忍ちゃんと、私の一つ下の従妹――千歳ちとせちゃんが舞うことになってる」
「従妹? ですが、本家のご息女は桃子さんのはずでは」
「そう、なんだけど……。私では荷が勝ちすぎるもの。本家も分家も関係なく、より能力の高い人が務めるべきお役目でしょうし。私が不出来でも千歳ちゃんがいるから、南条はこれからも安泰のはずよ」

 このとき春彦が何か言おうとしていたが、桃子はわざと気づかない振りをした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

処理中です...