【R18】巫女と荒神 ~いまだ神話の続く町~

ゴリエ

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第二章 強きもの、弱きもの

暴辱※

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「や……やめて……お願い、西宮くん……っ」

 桃子の懇願に耳が傾けられるはずもなく、西宮は乱雑に帯を解き、あっという間に桃子の着ていた浴衣をはだけさせると、胸元の下着も荒々しく剥ぎ取った。小さく悲鳴を上げて必死に胸を隠そうとする桃子を、彼は愉快そうに眺めて言った。

「ああ、やっぱり本物は反応があっていいな。これは、思った以上に楽しめそうだ」
「ほん……もの……?」

 桃子は怯えた目で西宮を見上げた。彼は心の底から悦に入った笑みを浮かべていた。

「どうして俺が、一年前のあのとき、突然お前に優しくしてやったかわかるか? お前の髪が欲しかったからだよ。髪を結い直す振りをして、何本か頂戴した。お前の分身――人形ひとがたを作るために」
「ひと、がた……?」
形代かたしろのことだよ、知ってるだろ。大祓おおはらえの神事のときなんかに、本人の代わりに穢れや厄を肩代わりしてくれるもののことだ。対象の体の一部があれば、そいつそっくりの人形ひとがたを作りだすことができる。あまり長くはもたないけどな。これは大昔の陰陽道に伝わる秘術だよ」

 西宮は下卑た視線で、桃子の全身を眺めまわしていた。

「お前、地味な割に意外といい体してるよな。腐っても南条家の娘ってことか。そこそこ楽しませてもらったぜ。でも、しょせん人形は魂のない模造品に過ぎないから、抱くにしても反応が薄くて萎える。その点生身オリジナルはいい。恐怖や嫌悪なんかの負の感情が、こうして直に伝わってくるんだからな。やっぱり、無理やり抱くならこうでないと」

 桃子が信じられない目で西宮を見つめ返すと、彼は桃子の腕を胸元から引きはがし、容赦なしにマットレスに押さえつけていた。

「や、ぁ……っ」
「今さら隠したって意味ねえから。言っただろ、俺はすでに、お前の体なんてとっくに知り尽くしてんだよ」

 西宮が乱暴に桃子の胸を揉みしだく。首筋や胸元を舐めまわしては、噛みつくように白い肌に吸いついてくる。幾分かは本当に噛みつき、歯形を残しもした。桃子に気遣いをみせる様子は一切ない。本人が宣言したとおり、桃子が痛がり怖がるほど、彼は愉悦に顔を歪ませていった。

 ついには下肢の下着まで剥ぎ取られ、足を大きく開かされてしまった。

 西宮は自身の衣服も乱雑に脱ぎ捨てると、すでに固くそそり立った性器を、予告なく性急に桃子の秘所に突き入れようとしていた。その明確な意思を持った腰の動きに、桃子は思わず渾身の力を振り絞って叫んでいた。

「助けて、春彦くん……っ!」

 とっさに出た自分の言葉に、愕然とした。
 西宮は、心底愉快そうに笑い声を上げた。

「そうかそうか、そんなに東宮に抱かれたのが良かったのか。それは残念だったなぁ、かわいそうに」

 桃子は嘲り笑う西宮から目をそらし、言葉もなく静かに涙を流した。

 春彦も、結果的には西宮と同じように桃子を凌辱したというのに、桃子は二人が同じ穴の狢だとはどうしても思えなかった。春彦は、西宮とは比べものにならないほど丁寧に桃子を抱いたのだ。彼も桃子を無理やり抱いたことに変わりなかったが、春彦の行動の根源には、いつも桃子を守るという明確な目的と思いやりがあった。
 彼は自分が悪役になることを受け入れ、あのような行動を取ったのだ。彼の寄る辺のない泣き顔が頭から離れなかったのは、そのせいだった。春彦が本当は、他の誰よりも桃子のことを一番に考え、想いを寄せていたのは明らかだった。

 対して西宮は、春彦とは正反対で、潔いほど我欲に忠実であり、桃子が泣こうがわめこうがお構いなしに、即物的な性欲と嗜虐欲を押しつけているだけだった。
 ろくな前戯もない上に、キスなど体液が流れ込む可能性のある行為を何一つしてこないのも、巫女姫にもたらされる催淫効果のことを知っていて、わざと避けているに違いないのだ。
 彼は体だけにとどまらず、桃子の心までもいたぶって楽しんでいた。

「いくらお前が東宮を望んでも、あいつはもう、一生お前に触れることすら許されないんだぜ。――まあでも、今思えばあいつが最初に憑坐に選ばれてよかったよ。俺は処女ほど嫌いなものはないんでね。床入りの手練手管を何一つ持ち合わせていない女なんて、こっちから願い下げだ。東宮が面倒な下処理を引き受けてくれて何よりだよ。しかも、あいつには種がなかったときているから、傑作だ。実際、そのせいで憑坐の座を剥奪されたのかもしれないしな」

 聞くに耐えない台詞を、西宮は次から次へと吐いていく。桃子はそのあいだも、あらゆる抵抗を試みていたが、乱暴に組み伏せられ、まったく敵わなかった。

「ほら、そろそろ挿れてやるから、力抜けよ」
「や、やめて……っ、いやああああああ」

 西宮が無理に押し入ってくる。当然ながら膣内なかは少しも濡れてはおらず、桃子は裂かれる痛みに涙を流して必死で耐えていた。痛みが強すぎて、もう他のことは何も考えられない。無意識に西宮の背に爪を立てると、彼は少しだけ表情を歪めた。

「きっつ……なんだこれ、全然動けねぇ……おい、もっと力抜けよ」
「っ……お願い、西宮く……抜い……っ」
「は? 抜くわけねえだろ。痛いならお前がさっさと濡らせよ。でないとこっちまで動けねえんだよ」

 桃子だけでなく西宮も、無理に押し込んだ自身の性器に痛みを覚えているらしく、眉根を寄せていた。どちらも気持ちよさを微塵も感じられない性交ほど、不毛なものはないのではないかと思えた。

「くっそ、処女でもないくせに体がっちがちじゃねえか。なあ、マジで力抜けって……」
「そ、……でき、な……っ」

 泣いてかぶりを振る桃子に西宮は舌打ちし、しびれを切らして一気に最奥まで強引に貫いていた。中を裂かれながら奥の内臓を押し上げられる苦痛に、桃子が呻き声を上げると、彼はようやく意地の悪い笑みを取り戻していた。

「仕方ねえな。ならいっそ、中で出血でもすれば、そのうち滑りもよくなるか」

 西宮がとんでもなく物騒なことを口にしてから、容赦なく腰を突き動かして激しいピストンを開始していた。あまりの激痛に桃子が声も出せずにいると、彼は嘲笑いながら言った。

「どうせ東宮とやりまくってたくせに、いまさら清純ぶってんじゃねえよ」
「ち、が……そん、な、……っ」
「違わねえだろ。異界に飛ばされて五日もあいつと二人きりで、他に何をすることがあったっていうんだよ」

 理不尽極まりない言葉を投げかけられ、桃子は痛みだけでなく、悔しさで唇を噛みしめていた。
 どうしてそんなことを言われなければならないのか。西宮はひたすら桃子の不況を故意に買おうとして、桃子が傷つくのを見ては楽しんでいる。まんまと彼の術中にはまっている自分自身にも、桃子は我慢がならなかった。

 西宮が腰を休めることなく、笑いながら口にする。

「お前があんまり泣いて痛がって、俺のことを締めつけてくるからさぁ、俺もつい興奮しちまって、実はもう先走りが結構中で漏れてんだよな。……だからさ、ほら、わかる? お前の膣内なか、いつの間にかしっかり濡れて滑りが良くなってきてる。実はもう、お前も気持ちよくなってたりすんの?」
「っ……、」

 桃子は必死で首を横に振る。しかし――。明らかに先ほどまでとは違う甘い声や、上気した頬、熱っぽさが入り混じるようになった吐息などから、西宮は敏感に桃子の感度の変化を感じ取っていた。彼に小手先の誤魔化しはききそうにない。

「巫女姫の体って、本当に荒神に都合よくできてるんだな。おもしれえ。こんなに雑に抱いても、お前は相手が俺ってだけで気持ちよくなっちまうんだ」
「ち、が……、んんっ」
「みっともねえ声出して、自分から腰揺すりやがって。よっぽど俺に孕ませてもらいたいんだな」
「ち、違っ……嫌、ぁ……っ」

 感情の上では断じて拒絶したくても、桃子の足は、いつの間にか西宮の腰に艶めかしく絡められていた。西宮はその様子に、心底愉快そうに笑っている。

 悔しかった。彼の言うとおり、抗おうにも体は快楽にねじ伏せられて言うことを聞かない。春彦のときと同じだ。心が置いて行かれたまま、体の細胞の一つ一つが、目の前の彼を求めてしまっている。どうせ抗えはしないのだから、快楽に身を委ねてしまえと全身が叫んでいる。

 西宮はふと、気味が悪いくらいの優しげな声で、泣いている桃子の耳元でささやいた。

「そう悲観するなって。俺が一度達したら、お前はより多くの憑坐の体液を受けることになる。そうなればもう正常な思考も働かなくなるだろうし、二回目からは、今と比較にならないほどの快楽が得られるはずだ」
「二回、目……?」

 桃子の顔からさあっと血の気が引いていた。

「これで、終わりじゃ……」
「はあ? たった一回で終わるわけねえだろ。なんだ、東宮は一回でへばってたのか? 情けねえ。そんなんだから、力も女も奪われるんだ。安心しろよ、今日は初夜だからな、加減してあと五回くらいにしといてやる」

 桃子が信じられない目で西宮を見つめ返すと、彼は予想どおりと言わんばかりに笑いながら、一際力強く貫いていた。

「ぁ、……ぐ、……っ」
「そろそろ出すぞ、しっかり受け止めろよ」
「や……っ、お願い、許し、……やあああああああっ」

 西宮が桃子の体をしっかりと抱え込み、熱く脈打つ己の欲望を、これでもかというほど容赦なく最奥で叩きつけた。桃子の中は歓喜に打ち震えるようにうねり、彼女の意思とは無関係に、西宮をいやらしく締め上げながら彼の射精欲を存分に促した。
 最後の最後で予想外の快感を与えられ、西宮は、今まで保っていた余裕を危うく失いそうになっていた。

「――っ、なんだ、これ……めちゃくちゃ、気持ちいい……まだ、出る……っ」

 西宮はなおも小刻みに腰を揺すり続け、ドロドロになった膣内を、さらに己の吐き出した欲で盛大に穢していった。射精はなかなか終わらず、西宮自身も少々困惑するくらいだった。

「南条、お前……なんにも知らなさそうな顔して、実はとんでもない女じゃないのか。こんなに気持ちいいなんて、聞いてねえぞ……」

 西宮がようやく己の昂りを引きずり出すと、栓を失った膣内からはすぐに大量の精液があふれ出て、だらしなくマットレスに染みを作っていた。よく見ると鮮血も混じっており、いかに西宮が手ひどく桃子を抱いたのかを物語っていた。

 桃子は自身も絶頂を迎えたのちに、意識を手放してしまったようだった。目尻や頬には幾筋もの涙のあとが見える。乱れた衣服にいやらしく汚された臀部や大腿部、そのいかにも犯された直後らしい背徳的な光景は、西宮の性的興奮を再び呼び覚ますに十分だった。

「おい、起きろ、南条。誰が休んでいいって言ったよ。この俺が、また可愛がってやるって言ってんだ。起きないなら、眠ったままでもぶちこむぞ」

 西宮が声を荒げても、桃子が起きる気配は微塵もなかった。西宮はため息を吐く。

「これじゃ人形のときとそう違わねえな。――まあ、本物を睡姦してみるってのも悪くないか。犯ってたらそのうち嫌でも起きるだろ」

 そう言って、西宮が屹立した性器を再び桃子の膣口に当てがった、そのとき。

 突然、何の前触れもなく、桃子がゆらりと上体を起こしていた。ふいを突かれたらしい西宮は、驚いて一瞬怯む。

「うわっ――……んだよ、寝たふりかよ。驚かせやがって」

 西宮が舌打ちすると、寝起きのようだった桃子の空虚な瞳が、一、二度だけゆっくりと瞬いた。

「いいや、この娘はまだ眠っている。ゆえに、この場はしばし私が預かることにした。本当はあまり勝手なことをするつもりはなかったが、現状を見かねて、例外的に出てきたというわけだ」

 桃子の唇から語られる言葉でも、不思議なことに、それはまったく別人の声にしか聞こえなかった。西宮はあっけに取られて、桃子の姿をしたものを、ただ凝視した。

 いつも自信なさげにうつむきがちだった表情は、今では少しも怯えたところはなく、目を合わせた者が思わず怯んでしまいそうなほど強い瞳で、まっすぐ西宮を射抜いていた。
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