5 / 66
第一章 契約の側室編
離宮
しおりを挟む
それからというもの、リリアーヌは男爵夫人から厳しい礼儀作法の教育を受けさせられた。
「皇太子殿下の側室になるのだから」と、容赦ない指導が毎日続き、少しでも所作や言葉遣いを誤れば、容赦ない折檻が待っていた。
それでもリリアーヌは、泣きながらも必死に覚えた。
そして、一か月後。
リリアーヌは正式に側室として王宮に迎え入れられることになった。
「あなたがリリアーヌ様ですね。どうぞ、こちらへ。」
侍女に出迎えられ、リリアーヌは離宮を案内される。
案内されたその住まいを見て、思わず目を丸くした。
そこは、宮殿の中でも最も小さく、古びた離宮だった。
寵愛を失った妃や、政治的に不要となった側室たちが押し込められる“静養の館”――つまり、都合のいい追いやり先だった。
だが、リリアーヌはそんな事情を知らない。
広々とした敷地、高い天井、長い回廊。どれも彼女にとっては夢のような光景だった。
「……すごい、大きい……っ!」
感嘆の声が思わず漏れる。
豪華さには欠けるものの、石造りの荘厳な建物に、リリアーヌの胸は高鳴った。
館の裏手にある庭に出ると、そこはすっかり放置され、雑草が伸び放題。花も咲いておらず、殺風景そのものだった。
けれど――
(わぁ……! 庭があるんだ……!)
目を輝かせ、リリアーヌは広い庭を見た。
美しさや整えられた景観などなくても、“庭がある”ということだけで、彼女には十分だった。
誰も手を入れていない小さな世界が、彼女には宝物のように思えた。
「ここがリリアーヌ様のお部屋です。」
通された部屋は殺風景ではあるが、家具も調度品も置かれた立派な部屋だった。
リリアーヌは感動していた。
床には絨毯もある。歩いても軋まないし、床に穴も開いていない。窓も壊れておらず、隙間風もない。カーテンまである。これなら、冬の寒さもしのげそうだ。
「殿下の側室だからといって、贅沢な生活はくれぐれも慎んでください。側室は側室にふさわしい振る舞いを…、」
「とっても素敵な部屋ですね!こんな立派な部屋、本当に私が使ってもいいのでしょうか?」
「……え?」
リリアーヌの反応に侍女は戸惑った。
リリアーヌは嬉しそうに部屋を見回す。壁に穴も開いていない。これなら、寒さに震えて眠れないという心配はない。
男爵家で与えられていたリリアーヌの使用人部屋は壁に穴が開いて、寝るのが大変だった。雨や風の強い夜や雪の日なんて、寒くて寒くて眠れなかった。でも、この部屋は雨風凌げるどころか壁も分厚くて、壊れる心配もない。これなら、快眠できそう…。
リリアーヌはそっと壁に触れる。なんて手触りがいいのだろう。私の部屋の壁とは大違い。ザラザラしてないし、所々に釘が飛び出てない。壁には絵画まで飾られている。
今までの部屋と比べたら、ここはまるで天国のようだった。
「わあ…!この絵、ルパン画家の『影と光』ではないですか!私、実物で見るのは初めてです…!」
「…は、はあ…。」
「あっ、本まである…!」
読書が好きなリリアーヌは本棚に駆け寄った。
(わあ…!凄い!外国語の本や専門書がいっぱい…!歴史書もある…!)
「ここにある本は読んでもいいのですか?」
「え、ええ。勿論でございます…。」
リリアーヌは本棚に視線を戻し、どの本から読もうかと心を躍らせた。
「こちらには、リリアーヌ様のドレスをご用意しています。」
「え、私に?」
まさか、ドレスまで用意してくれるとは思っていなかったのでリリアーヌは驚いた。
侍女がクローゼットを開けてくれる。中にはドレスが四着と夜着が一着も入っていた。
紺色、茶色、灰色、黒…。全体的に落ち着いていて、控えめな色だ。デザインもシンプルで装飾は少なく、肌の露出度も低いドレスだ。胸元や背中も開いてなくて、肌の露出度が少ない。
「素敵なドレスですね。本当に私が着てもよろしいのですか?」
「……も、勿論でございます。妃殿下がリリアーヌ様のために用意された物ですから…。」
「ありがとうございます…!」
(ヴェロニカ様がここまで私のことを気遣って下さるなんて…。なんて、優しい方…!側室である私のためにこんなに良くしてくださるなんて…。)
リリアーヌは素直にそう思った。
今までツギハギだらけの粗末な服やお仕着せしか着たことなかった彼女にとって、ドレスを着れるなんて夢のような気持ちだった。生地も肌触りがよくて、高級なドレスだと分かる。こんなに美しい服を頂けるなんて…。
「今夜、殿下がお越しになります。それまで、ゆっくりとおくつろぎください。」
侍女はそう言って、部屋から退出した。
リリアーヌは早速、本棚から『教会の慣習とその起源』を取り出し、読み始めた。
「リリアーヌ様。お食事をお持ちしました。」
「ありがとうございます。」
もうそんな時間なのね。リリアーヌはパタン、と本を閉じて、食事が置かれたテーブルに座った。
出された食事はサラダと黒パンにシチューだった。美味しそう…!リリアーヌはゴクッと唾を呑み込んだ。
「本日のお食事はそれだけです。お気に召さなければ、下げますが……。」
「そんな、とんでもない。ありがたくいただきますね。」
「は、はい?」
侍女たちは困惑した表情を浮かべた。
リリアーヌは食前の祈りを捧げると、手を合わせていただきますと言い、フォークを手に取った。
「あの……、リリアーヌ様。それを……、食べるのですか?」
「はい、もちろん。これは私のためにシェフがわざわざ作ってくださったものでしょう?」
そう言って、リリアーヌはサラダを食べた。
美味しい…!少し傷んでるけど、これなら、全然食べられる…!野菜の皮や根っこでないだけ全然マシだ。
次は黒パンを手に取った。
カビが生えてないパンなんて久しぶり…!ちょっと固いけど、シチューに浸せば問題ない。シチューは薄味だが、すごく美味しい。何より、スープに虫やゴミが入ってない…!
泣きそうになるくらいに美味しい夕食だった。
ああ。こんなに夕食をたくさん食べれたのは初めて…!生きてて、良かった。男爵家では一日中働いても、カビの生えた黒パンを一欠片貰えるかもらえないかだった。
こんなにちゃんとしたご飯が食べられるなんて…。もう、これだけでも十分に幸せだ…。
リリアーヌは完食して、ごちそうさまと手を合わせた。
「とても美味しかったです。シェフに是非、お礼を伝えてもらってもいいですか?」
侍女達はリリアーヌが完食した皿を見て、唖然としていた。
「あの…?」
どうしたんだろう?どこか具合でも悪いのかな?
リリアーヌが不思議そうに声を掛けると、侍女達はハッとして、
「は、はい。伝えておきます…。」
そう言って、皿を下げて退出した。
良かった。ここなら、何とかやっていけそう。カリーナから、宮廷に行ったら、虐め倒されると脅されたが、全然そんな心配はなかった。
実際は、ヴェロニカの命令で粗末なドレスと食事を与えられ、部屋もわざと飾り気のない殺風景なものを宛がわれているのだがリリアーヌは微塵もそんな嫌がらせに気づかなかった。
リリアーヌは男爵家で虐げられて育ったせいか、男爵家の過酷な生活と比べると、ここが天国のように思えるのだった。
「リリアーヌ様。湯浴みの用意ができました。」
「ありがとうございます。あの、一人で入れますので。」
リリアーヌは湯浴みを手伝おうとした侍女に、入浴は一人でできると告げた。侍女たちは特に不審がることもなく、あっさりと承知して、その場を下がった。
リリアーヌはホッとして、夜着と小さな包みを持って、浴室に入った。
リリアーヌは髪を濡らして洗い始めた。
すると、いつものように黒い染料が水に溶け出していく。みるみるうちに黒が落ちて、本来のストロベリーブロンドの髪色が現れた。
リリアーヌは自分の髪を見下ろすと、急いで小さな包みを開いた。
中から取り出したのは、いつも使っている墨だった。
(誰にも見られる前に、早く終わらせないと……。この髪を見られなくてよかった。こんな色、誰にも見られたくない。)
リリアーヌの髪は本来ストロベリーブロンドだが、いつもは黒に染めていた。
慣れた手つきで墨を髪に塗り込んでいく。ストロベリーブロンドの髪が再び黒に染まっていく様子を見ながら、彼女の胸に過去の記憶が蘇った。
『本当に下品な色ね。』
『あの忌々しい女と同じ髪ね!見ているだけでイライラする…!』
『まるで娼婦みたい。いかにも頭が悪そうに見えるし、見るたびに吐き気がするわ。』
グッと唇を噛みしめながら、リリアーヌは髪を染めていく。
男爵夫人とカリーナに不愉快だから、黒に染めろと命令されてから、リリアーヌは髪を黒に染めるようになった。
私の髪は醜く、気持ち悪いのだと幼い頃に痛感させられた。それからは、誰にもこの髪色を見せなくなった。
しかし、お金のないリリアーヌは安物の染め粉しか手に入れられない。安物の染め粉は髪が濡れるとすぐに落ちてしまう。だから、入浴のたびに髪を染め直さなければならなかった。最も、男爵邸ではお湯なんて使わせてもらえなかったし、ましてや浴室なんて掃除以外で入ったことなかった。
いつも井戸で汲んだ水で身体を拭いたりするしかできなかった。でも、教会ではシスターたちがリリアーヌにお風呂を使わせてくれたから、なんとか清潔にすることができた。リリアーヌにとってまともな入浴はそれくらいだ。
リリアーヌは鏡に映る自分を見て、溜息を吐いた。
パサついた黒髪に血色の悪い、瘦せっぽちで暗い女がそこに映ってた。
ヴェロニカ様のように美しくもなく、カリーナのような愛らしさもない。
どうして、私はこんなにも魅力がないのだろうか。リリアーヌは自分の顔が嫌いだった。
「皇太子殿下の側室になるのだから」と、容赦ない指導が毎日続き、少しでも所作や言葉遣いを誤れば、容赦ない折檻が待っていた。
それでもリリアーヌは、泣きながらも必死に覚えた。
そして、一か月後。
リリアーヌは正式に側室として王宮に迎え入れられることになった。
「あなたがリリアーヌ様ですね。どうぞ、こちらへ。」
侍女に出迎えられ、リリアーヌは離宮を案内される。
案内されたその住まいを見て、思わず目を丸くした。
そこは、宮殿の中でも最も小さく、古びた離宮だった。
寵愛を失った妃や、政治的に不要となった側室たちが押し込められる“静養の館”――つまり、都合のいい追いやり先だった。
だが、リリアーヌはそんな事情を知らない。
広々とした敷地、高い天井、長い回廊。どれも彼女にとっては夢のような光景だった。
「……すごい、大きい……っ!」
感嘆の声が思わず漏れる。
豪華さには欠けるものの、石造りの荘厳な建物に、リリアーヌの胸は高鳴った。
館の裏手にある庭に出ると、そこはすっかり放置され、雑草が伸び放題。花も咲いておらず、殺風景そのものだった。
けれど――
(わぁ……! 庭があるんだ……!)
目を輝かせ、リリアーヌは広い庭を見た。
美しさや整えられた景観などなくても、“庭がある”ということだけで、彼女には十分だった。
誰も手を入れていない小さな世界が、彼女には宝物のように思えた。
「ここがリリアーヌ様のお部屋です。」
通された部屋は殺風景ではあるが、家具も調度品も置かれた立派な部屋だった。
リリアーヌは感動していた。
床には絨毯もある。歩いても軋まないし、床に穴も開いていない。窓も壊れておらず、隙間風もない。カーテンまである。これなら、冬の寒さもしのげそうだ。
「殿下の側室だからといって、贅沢な生活はくれぐれも慎んでください。側室は側室にふさわしい振る舞いを…、」
「とっても素敵な部屋ですね!こんな立派な部屋、本当に私が使ってもいいのでしょうか?」
「……え?」
リリアーヌの反応に侍女は戸惑った。
リリアーヌは嬉しそうに部屋を見回す。壁に穴も開いていない。これなら、寒さに震えて眠れないという心配はない。
男爵家で与えられていたリリアーヌの使用人部屋は壁に穴が開いて、寝るのが大変だった。雨や風の強い夜や雪の日なんて、寒くて寒くて眠れなかった。でも、この部屋は雨風凌げるどころか壁も分厚くて、壊れる心配もない。これなら、快眠できそう…。
リリアーヌはそっと壁に触れる。なんて手触りがいいのだろう。私の部屋の壁とは大違い。ザラザラしてないし、所々に釘が飛び出てない。壁には絵画まで飾られている。
今までの部屋と比べたら、ここはまるで天国のようだった。
「わあ…!この絵、ルパン画家の『影と光』ではないですか!私、実物で見るのは初めてです…!」
「…は、はあ…。」
「あっ、本まである…!」
読書が好きなリリアーヌは本棚に駆け寄った。
(わあ…!凄い!外国語の本や専門書がいっぱい…!歴史書もある…!)
「ここにある本は読んでもいいのですか?」
「え、ええ。勿論でございます…。」
リリアーヌは本棚に視線を戻し、どの本から読もうかと心を躍らせた。
「こちらには、リリアーヌ様のドレスをご用意しています。」
「え、私に?」
まさか、ドレスまで用意してくれるとは思っていなかったのでリリアーヌは驚いた。
侍女がクローゼットを開けてくれる。中にはドレスが四着と夜着が一着も入っていた。
紺色、茶色、灰色、黒…。全体的に落ち着いていて、控えめな色だ。デザインもシンプルで装飾は少なく、肌の露出度も低いドレスだ。胸元や背中も開いてなくて、肌の露出度が少ない。
「素敵なドレスですね。本当に私が着てもよろしいのですか?」
「……も、勿論でございます。妃殿下がリリアーヌ様のために用意された物ですから…。」
「ありがとうございます…!」
(ヴェロニカ様がここまで私のことを気遣って下さるなんて…。なんて、優しい方…!側室である私のためにこんなに良くしてくださるなんて…。)
リリアーヌは素直にそう思った。
今までツギハギだらけの粗末な服やお仕着せしか着たことなかった彼女にとって、ドレスを着れるなんて夢のような気持ちだった。生地も肌触りがよくて、高級なドレスだと分かる。こんなに美しい服を頂けるなんて…。
「今夜、殿下がお越しになります。それまで、ゆっくりとおくつろぎください。」
侍女はそう言って、部屋から退出した。
リリアーヌは早速、本棚から『教会の慣習とその起源』を取り出し、読み始めた。
「リリアーヌ様。お食事をお持ちしました。」
「ありがとうございます。」
もうそんな時間なのね。リリアーヌはパタン、と本を閉じて、食事が置かれたテーブルに座った。
出された食事はサラダと黒パンにシチューだった。美味しそう…!リリアーヌはゴクッと唾を呑み込んだ。
「本日のお食事はそれだけです。お気に召さなければ、下げますが……。」
「そんな、とんでもない。ありがたくいただきますね。」
「は、はい?」
侍女たちは困惑した表情を浮かべた。
リリアーヌは食前の祈りを捧げると、手を合わせていただきますと言い、フォークを手に取った。
「あの……、リリアーヌ様。それを……、食べるのですか?」
「はい、もちろん。これは私のためにシェフがわざわざ作ってくださったものでしょう?」
そう言って、リリアーヌはサラダを食べた。
美味しい…!少し傷んでるけど、これなら、全然食べられる…!野菜の皮や根っこでないだけ全然マシだ。
次は黒パンを手に取った。
カビが生えてないパンなんて久しぶり…!ちょっと固いけど、シチューに浸せば問題ない。シチューは薄味だが、すごく美味しい。何より、スープに虫やゴミが入ってない…!
泣きそうになるくらいに美味しい夕食だった。
ああ。こんなに夕食をたくさん食べれたのは初めて…!生きてて、良かった。男爵家では一日中働いても、カビの生えた黒パンを一欠片貰えるかもらえないかだった。
こんなにちゃんとしたご飯が食べられるなんて…。もう、これだけでも十分に幸せだ…。
リリアーヌは完食して、ごちそうさまと手を合わせた。
「とても美味しかったです。シェフに是非、お礼を伝えてもらってもいいですか?」
侍女達はリリアーヌが完食した皿を見て、唖然としていた。
「あの…?」
どうしたんだろう?どこか具合でも悪いのかな?
リリアーヌが不思議そうに声を掛けると、侍女達はハッとして、
「は、はい。伝えておきます…。」
そう言って、皿を下げて退出した。
良かった。ここなら、何とかやっていけそう。カリーナから、宮廷に行ったら、虐め倒されると脅されたが、全然そんな心配はなかった。
実際は、ヴェロニカの命令で粗末なドレスと食事を与えられ、部屋もわざと飾り気のない殺風景なものを宛がわれているのだがリリアーヌは微塵もそんな嫌がらせに気づかなかった。
リリアーヌは男爵家で虐げられて育ったせいか、男爵家の過酷な生活と比べると、ここが天国のように思えるのだった。
「リリアーヌ様。湯浴みの用意ができました。」
「ありがとうございます。あの、一人で入れますので。」
リリアーヌは湯浴みを手伝おうとした侍女に、入浴は一人でできると告げた。侍女たちは特に不審がることもなく、あっさりと承知して、その場を下がった。
リリアーヌはホッとして、夜着と小さな包みを持って、浴室に入った。
リリアーヌは髪を濡らして洗い始めた。
すると、いつものように黒い染料が水に溶け出していく。みるみるうちに黒が落ちて、本来のストロベリーブロンドの髪色が現れた。
リリアーヌは自分の髪を見下ろすと、急いで小さな包みを開いた。
中から取り出したのは、いつも使っている墨だった。
(誰にも見られる前に、早く終わらせないと……。この髪を見られなくてよかった。こんな色、誰にも見られたくない。)
リリアーヌの髪は本来ストロベリーブロンドだが、いつもは黒に染めていた。
慣れた手つきで墨を髪に塗り込んでいく。ストロベリーブロンドの髪が再び黒に染まっていく様子を見ながら、彼女の胸に過去の記憶が蘇った。
『本当に下品な色ね。』
『あの忌々しい女と同じ髪ね!見ているだけでイライラする…!』
『まるで娼婦みたい。いかにも頭が悪そうに見えるし、見るたびに吐き気がするわ。』
グッと唇を噛みしめながら、リリアーヌは髪を染めていく。
男爵夫人とカリーナに不愉快だから、黒に染めろと命令されてから、リリアーヌは髪を黒に染めるようになった。
私の髪は醜く、気持ち悪いのだと幼い頃に痛感させられた。それからは、誰にもこの髪色を見せなくなった。
しかし、お金のないリリアーヌは安物の染め粉しか手に入れられない。安物の染め粉は髪が濡れるとすぐに落ちてしまう。だから、入浴のたびに髪を染め直さなければならなかった。最も、男爵邸ではお湯なんて使わせてもらえなかったし、ましてや浴室なんて掃除以外で入ったことなかった。
いつも井戸で汲んだ水で身体を拭いたりするしかできなかった。でも、教会ではシスターたちがリリアーヌにお風呂を使わせてくれたから、なんとか清潔にすることができた。リリアーヌにとってまともな入浴はそれくらいだ。
リリアーヌは鏡に映る自分を見て、溜息を吐いた。
パサついた黒髪に血色の悪い、瘦せっぽちで暗い女がそこに映ってた。
ヴェロニカ様のように美しくもなく、カリーナのような愛らしさもない。
どうして、私はこんなにも魅力がないのだろうか。リリアーヌは自分の顔が嫌いだった。
5
あなたにおすすめの小説
幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果
景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。
ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。
「俺……ステラと離れたくない」
そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。
「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」
そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。
それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。
勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。
戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──?
誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
契約結婚のススメ
文月 蓮
恋愛
研究一筋に生きてきた魔導士のレティシアは、研究を続けるために父に命じられた結婚をしかたなく承諾する。相手は社交界の独身女性憧れの的であるヴィラール侯爵アロイス。だが、アロイスもまた結婚を望んでいなかったことを知り、契約結婚を提案する。互いの思惑が一致して始まった愛のない結婚だったが、王の婚約者の護衛任務を受けることになったレティシアとアロイスの距離は徐々に縮まってきて……。シリアスと見せかけて、コメディです。「ムーンライトノベルズ」にも投稿しています。
敵将を捕虜にしたら夫になって、気づけば家族までできていました
蜂蜜あやね
恋愛
戦場で幾度も刃を交えてきた二人――
“赤い鷲”の女将軍イサナと、
“青狼”と恐れられたザンザの将軍ソウガ。
最後の戦いで、ソウガはイサナの軍に捕らえられる。
死を覚悟したその瞬間――
イサナは思わず、矢面に立っていた。
「その者は殺させない。命は……私が引き受けます」
理由などなかった。
ただ、目の前の男を失いたくなかった。
その報告を受けた皇帝エンジュは、
静かに、しかし飄々とした口調で告げる。
「庇いたいというのなら――夫として下げ渡そう」
「ただし、子を成すこと。それが条件だ」
敵国の将を“夫”として迎えるという前代未聞の処置。
拒否権はない。
こうしてソウガは、捕虜でありながら
《イサナの夫》としてアマツキ邸に下げ渡される。
武でも策でも互角に戦ってきた男が、
今は同じ屋根の下にいる。
捕虜として――そして夫として。
反発から始まった奇妙な同居生活。
だが、戦場では知り得なかった互いの素顔と静かな温度が、
じわじわと二人の距離を変えていく
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
発情王女の夫選び
山田ランチ
恋愛
〈あらすじ〉
王家熱を発症した者が女王になれる国、テーレフルミ王国の第一王女サンドラは、よりにもよってたまたま通りすがった騎士団長ジュール・ベルナールの前で王家熱を発症してしまう。王家熱を発症するとより多くの子孫を残そうと発情してしまうという厄介な体質になってしまったサンドラは、抗えない衝動によってジュールを襲い後悔する。その日は丁度、功績を上げた褒美としてジュールが騎士団長になり、侯爵という高位の爵位を賜った日でもあった。
女王になれば複数の愛妾を持つ定めのサンドラは、ジュールに惹かれていく気持ちになんとか蓋をしようとする。そんな中、二人を引き裂くようにサンドラの夫候補としてグランテーレ王国から第三王子のアレシュがやってくる。そしてサンドラはアレシュの前で発情してしまい……。
〈登場人物〉
テーレフルミ王国
サンドラ・フルミ 第一王女 17歳
ジュール・ベルナール ベルナール侯爵、騎士団長、26歳。
シルヴィオ・フルミ 第一王子 22歳
シルビア・フルミ 第二王女 8歳
レア・フルミ 女王、53歳
シュバリエ 女王の愛妾 55歳
シレンヌ・ベル 宰相、ベル伯爵、53歳
アレッサ・シャスール シャスール子爵家の長男、騎士団副隊長、28歳。
シェイラ・シャスール シャスール子爵家の長女で、アレッサの双子の妹。ジュールの元婚約者。
グランテーレ王国
アレシュ 第三王子 18歳
【完結】体目的でもいいですか?
ユユ
恋愛
王太子殿下の婚約者候補だったルーナは
冤罪をかけられて断罪された。
顔に火傷を負った狂乱の戦士に
嫁がされることになった。
ルーナは内向的な令嬢だった。
冤罪という声も届かず罪人のように嫁ぎ先へ。
だが、護送中に巨大な熊に襲われ 馬車が暴走。
ルーナは瀕死の重症を負った。
というか一度死んだ。
神の悪戯か、日本で死んだ私がルーナとなって蘇った。
* 作り話です
* 完結保証付きです
* R18
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる