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第一章 出会い編
第三王子の不穏な企み
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「くそ!出来損ないの分際で!よくも、この僕にあんな真似を…!」
金髪碧眼の男は苛立たし気に吐き捨てるが、その直後にゴホッ!ゴホッ!と激しく咳き込んだ。
美しい容姿をした男の顔は今、怒りに歪められている。
この国の第三王子…、イグアスは苛立っていた。
イグアスはルーファスに池に突き落とされたせいで次の日から熱を出して寝込んでいた。
春になったばかりとはいえ、夜はまだまだ冷え込む季節に冷たい池に落ちてしまったイグアスはそのまま風邪を引いてしまったのである。
イグアスが苛ついてるのはそれだけではない。目をつけていた獲物を取り逃がしたことにも苛立っていた。全て、あの目障りなルーファスのせいで…!
「僕の邪魔をしやがって…!」
イグアスはルーファスが嫌いだ。
生まれた順番はルーファスが先だがそれ以外は何もかもイグアスの方が優れている。
だから、あいつは弟である僕よりも格下の存在。
昔は、周囲の人間はルーファスを褒め称えていた。だが、呪いにかかってからは、誰もあいつを称賛しなくなった。幼い頃はルーファスが賞賛されることが気に入らず、苛々していたものだがあいつが呪いにかかったと聞いた時は歓喜した。
これでやっと一番になれると確信した。
王太子になるのはこの僕だ!イグアスはそう確信していた。
母も口癖のようにイグアスこそが時期王太子だと言っていたし、正妃の子である僕こそが王位を継ぐのにふさわしい。
ダグラスもアンリもしょせんは側室の子だし、ルーファスはそもそも、論外だ。
イグアスは自分に絶対的な自信を持っていた。
だからこそ、ルーファスの存在が許せなかった。
何もかも自分より劣っている癖に兄として生まれたという事実が気に食わない。
イグアスは何でも一番でないと気が済まなかった。
それだけじゃない。あいつが呪われたせいでイグアスの評判にも傷がつくのだ。完璧であるこの僕に。
あいつのせいでダグラスやその母親である側室にもよく嫌味を言われる。
忌々しい。ルーファスに言うのは、呪われるのが怖いから面と向かって言えないだけの臆病者の癖に!
ああ!苛々する!
ルーファスめ!呪いの力か何か知らないがあいつが妙な力を持っているせいで、こちらが手を出せないのをいいことに調子に乗って…!
イグアスは今までもルーファスに何度も痛い目に遭わされてきた。
思い出すだけで怒りが沸き上がる。
あいつを殴ろうとしたら、何故かイグアスが壁に激突する羽目になるは、熱い茶をわざとかけようとしたら、何故か手元が狂い、イグアスがお茶を被って大火傷を負ったりと散々な目に遭った。
全て、自業自得なのだがイグアスはそれに気付かない。
何度も同じ目に遭っているにも関わらず、イグアスはいつもルーファスに突っかかっては返り討ちにされている。
さすがのイグアスもルーファスに手を出せば呪いの反動か何かでそれが自分に返ってくるのだと気付いてはいるのだが、それは理性がある時だけ。
イグアスはカッとなると周りが見えなくなる性格の為、すぐにその事実を忘れてしまう。
結果、ルーファスに掴みかかっては自分が返り討ちに遭うということを何度も繰り返していた。
ルーファスが学習能力のない奴だと言った理由はそれにあった。
「くそ!見ていろ…!僕に歯向かうとどうなるか思い知らせてやる…。」
ルーファスの正妃、ダニエラは既にイグアスの女だ。前の女は失敗したが今度こそ…!
そういえば、ルーファスの側室にはあの女もいたな。
イグアスはにやり、と笑った。
なかなか、美しい女だった。ダニエラのような華やかさはないがああいった儚げな女も悪くない。
何より、あの従順で大人しそうな性格も好ましい。ダニエラや他の女達も悪くはないがあれは我儘だし、一々、嫉妬をするのが面倒だ。その点、あの女は身の程を弁えているから文句も言わなさそうだ。
ルーファスがあの女をどう思っているかは知らないが、あの口振りだと本当にどうでもよさそうな言い方だった。なら、僕が貰っても問題はないだろう。あいつは妻を寝取られても顔色一つ変えなかったからな。イグアスはリスティーナの姿を思い出す。
滑らかな白い肌に甘い匂い…。泣き顔と震える声に嗜虐心が煽られた。
「ああ…。早くこの手に抱きたいものだ…。」
イグアスはククッと低く笑った。
「イグアス殿下、王妃様がお見舞いに来られました。」
「母上が?…そうか。通せ。」
従者の言葉にイグアスはニヤッと笑った。
金髪碧眼の男は苛立たし気に吐き捨てるが、その直後にゴホッ!ゴホッ!と激しく咳き込んだ。
美しい容姿をした男の顔は今、怒りに歪められている。
この国の第三王子…、イグアスは苛立っていた。
イグアスはルーファスに池に突き落とされたせいで次の日から熱を出して寝込んでいた。
春になったばかりとはいえ、夜はまだまだ冷え込む季節に冷たい池に落ちてしまったイグアスはそのまま風邪を引いてしまったのである。
イグアスが苛ついてるのはそれだけではない。目をつけていた獲物を取り逃がしたことにも苛立っていた。全て、あの目障りなルーファスのせいで…!
「僕の邪魔をしやがって…!」
イグアスはルーファスが嫌いだ。
生まれた順番はルーファスが先だがそれ以外は何もかもイグアスの方が優れている。
だから、あいつは弟である僕よりも格下の存在。
昔は、周囲の人間はルーファスを褒め称えていた。だが、呪いにかかってからは、誰もあいつを称賛しなくなった。幼い頃はルーファスが賞賛されることが気に入らず、苛々していたものだがあいつが呪いにかかったと聞いた時は歓喜した。
これでやっと一番になれると確信した。
王太子になるのはこの僕だ!イグアスはそう確信していた。
母も口癖のようにイグアスこそが時期王太子だと言っていたし、正妃の子である僕こそが王位を継ぐのにふさわしい。
ダグラスもアンリもしょせんは側室の子だし、ルーファスはそもそも、論外だ。
イグアスは自分に絶対的な自信を持っていた。
だからこそ、ルーファスの存在が許せなかった。
何もかも自分より劣っている癖に兄として生まれたという事実が気に食わない。
イグアスは何でも一番でないと気が済まなかった。
それだけじゃない。あいつが呪われたせいでイグアスの評判にも傷がつくのだ。完璧であるこの僕に。
あいつのせいでダグラスやその母親である側室にもよく嫌味を言われる。
忌々しい。ルーファスに言うのは、呪われるのが怖いから面と向かって言えないだけの臆病者の癖に!
ああ!苛々する!
ルーファスめ!呪いの力か何か知らないがあいつが妙な力を持っているせいで、こちらが手を出せないのをいいことに調子に乗って…!
イグアスは今までもルーファスに何度も痛い目に遭わされてきた。
思い出すだけで怒りが沸き上がる。
あいつを殴ろうとしたら、何故かイグアスが壁に激突する羽目になるは、熱い茶をわざとかけようとしたら、何故か手元が狂い、イグアスがお茶を被って大火傷を負ったりと散々な目に遭った。
全て、自業自得なのだがイグアスはそれに気付かない。
何度も同じ目に遭っているにも関わらず、イグアスはいつもルーファスに突っかかっては返り討ちにされている。
さすがのイグアスもルーファスに手を出せば呪いの反動か何かでそれが自分に返ってくるのだと気付いてはいるのだが、それは理性がある時だけ。
イグアスはカッとなると周りが見えなくなる性格の為、すぐにその事実を忘れてしまう。
結果、ルーファスに掴みかかっては自分が返り討ちに遭うということを何度も繰り返していた。
ルーファスが学習能力のない奴だと言った理由はそれにあった。
「くそ!見ていろ…!僕に歯向かうとどうなるか思い知らせてやる…。」
ルーファスの正妃、ダニエラは既にイグアスの女だ。前の女は失敗したが今度こそ…!
そういえば、ルーファスの側室にはあの女もいたな。
イグアスはにやり、と笑った。
なかなか、美しい女だった。ダニエラのような華やかさはないがああいった儚げな女も悪くない。
何より、あの従順で大人しそうな性格も好ましい。ダニエラや他の女達も悪くはないがあれは我儘だし、一々、嫉妬をするのが面倒だ。その点、あの女は身の程を弁えているから文句も言わなさそうだ。
ルーファスがあの女をどう思っているかは知らないが、あの口振りだと本当にどうでもよさそうな言い方だった。なら、僕が貰っても問題はないだろう。あいつは妻を寝取られても顔色一つ変えなかったからな。イグアスはリスティーナの姿を思い出す。
滑らかな白い肌に甘い匂い…。泣き顔と震える声に嗜虐心が煽られた。
「ああ…。早くこの手に抱きたいものだ…。」
イグアスはククッと低く笑った。
「イグアス殿下、王妃様がお見舞いに来られました。」
「母上が?…そうか。通せ。」
従者の言葉にイグアスはニヤッと笑った。
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