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第二章 相思相愛編
ミレーヌside
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~♪~♪
綺麗な歌声が聞こえる。薄暗い部屋の中、黒いドレスを着た少女が口ずさんでいた。
歌詞は異国の言葉だろう。何を歌っているのか分からない。
音楽も聞いたことがない独特の静かなメロディーだ。同時に不気味な旋律にも聴こえる。
少女の黒髪は漆黒の闇に溶けてしまいそうな位、同色化している。
「傷は残らない、か…。残念。」
少女は水盤鏡の中に入った水を眺め、そこに映った光景を目にしてつまらなさそうに呟いた。
パシャン、と水を手で弾くと、波紋ができる。
波紋が消えたと思ったら、そこには何も映っておらず、ただの水が入っているだけだった。
少女はチラッと床を見下ろした。そこには、手の平サイズの人形が横たわっていた。
その人形の周りには硝子の破片が散らばっている。
豪華な金髪の巻き毛をした人形の顔はどことなく、ダニエラに似ている。
人形の身体には切り傷が幾つもできていた。その人形をチラッと見下ろしながら、少女は誰もいない空間で独り言を零した。
「まあ、暫くはこれで大人しくしてなるだろうし。これ位でいっか。」
少女は口角を吊り上げて、笑った。
「久しぶりに魔力を使ったから、お腹空いたなあ。」
黒髪の少女はルンルンと鼻歌を歌いながら、軽やかな足取りでクルクルと踊るように回った。
そして、おもむろにゴソゴソと懐を探ると小さな袋を取り出した。中には結晶化した塊が出てきた。
「素材も手に入ったし…。イグアス王子には感謝しないとね。さすが、次期皇帝候補。やっぱり、権力者は頼りになるなあ。」
少女は結晶化した塊にスリスリと頬ずりをする。
「フフッ…、嬉しいなあ。この間のは失敗したけど、今度のはきっと、上手くいく筈…。」
前回のは素材が悪かったから、失敗してしまった。
でも、今回は違う。素材は全て純度の高い物を揃えた。次こそ、必ず成功してみせる。
少女は心躍らせた。もうすぐだ。もうすぐ、私の願いが叶う。
窓に射しこんだ月明りの光が黒髪の少女…、ミレーヌ王女の顔を照らした。
ミレーヌの手の中にある塊は月の光でキラキラ、とダイヤモンドのような光を放った。
「そういえば…、あの女…、リスティーナって言ったっけ…。」
ミレーヌはぼんやりとリスティーナの姿を思い出した。変な女だった。
弱いくせに出しゃばって、自分よりも他人を気にかける。
恩着せがましい言い方もしないし、上から目線で物を語ったりもしない。その目には打算も下心もない。純粋にこちらを心配する色しかなかった。
ミレーヌはそんなリスティーナを見て、苛々した。
あいつ、嫌い。ミレーヌは心底、そう思った。嫌いだ。あんな女。
『ミレーヌ。』
ミレーヌの脳裏にある女性の姿が浮かんだ。
ミレーヌと同じ艶やかな黒髪を揺らし、こちらに手を伸ばす美しい女性の姿が…。
ミレーヌはギュッと強く手を握り締めた。
「…どうでもいい。あんな女なんて。どうせ、もう関わらないだろうし。」
ミレーヌはそう呟き、すぐにリスティーナの事を忘れた。
綺麗な歌声が聞こえる。薄暗い部屋の中、黒いドレスを着た少女が口ずさんでいた。
歌詞は異国の言葉だろう。何を歌っているのか分からない。
音楽も聞いたことがない独特の静かなメロディーだ。同時に不気味な旋律にも聴こえる。
少女の黒髪は漆黒の闇に溶けてしまいそうな位、同色化している。
「傷は残らない、か…。残念。」
少女は水盤鏡の中に入った水を眺め、そこに映った光景を目にしてつまらなさそうに呟いた。
パシャン、と水を手で弾くと、波紋ができる。
波紋が消えたと思ったら、そこには何も映っておらず、ただの水が入っているだけだった。
少女はチラッと床を見下ろした。そこには、手の平サイズの人形が横たわっていた。
その人形の周りには硝子の破片が散らばっている。
豪華な金髪の巻き毛をした人形の顔はどことなく、ダニエラに似ている。
人形の身体には切り傷が幾つもできていた。その人形をチラッと見下ろしながら、少女は誰もいない空間で独り言を零した。
「まあ、暫くはこれで大人しくしてなるだろうし。これ位でいっか。」
少女は口角を吊り上げて、笑った。
「久しぶりに魔力を使ったから、お腹空いたなあ。」
黒髪の少女はルンルンと鼻歌を歌いながら、軽やかな足取りでクルクルと踊るように回った。
そして、おもむろにゴソゴソと懐を探ると小さな袋を取り出した。中には結晶化した塊が出てきた。
「素材も手に入ったし…。イグアス王子には感謝しないとね。さすが、次期皇帝候補。やっぱり、権力者は頼りになるなあ。」
少女は結晶化した塊にスリスリと頬ずりをする。
「フフッ…、嬉しいなあ。この間のは失敗したけど、今度のはきっと、上手くいく筈…。」
前回のは素材が悪かったから、失敗してしまった。
でも、今回は違う。素材は全て純度の高い物を揃えた。次こそ、必ず成功してみせる。
少女は心躍らせた。もうすぐだ。もうすぐ、私の願いが叶う。
窓に射しこんだ月明りの光が黒髪の少女…、ミレーヌ王女の顔を照らした。
ミレーヌの手の中にある塊は月の光でキラキラ、とダイヤモンドのような光を放った。
「そういえば…、あの女…、リスティーナって言ったっけ…。」
ミレーヌはぼんやりとリスティーナの姿を思い出した。変な女だった。
弱いくせに出しゃばって、自分よりも他人を気にかける。
恩着せがましい言い方もしないし、上から目線で物を語ったりもしない。その目には打算も下心もない。純粋にこちらを心配する色しかなかった。
ミレーヌはそんなリスティーナを見て、苛々した。
あいつ、嫌い。ミレーヌは心底、そう思った。嫌いだ。あんな女。
『ミレーヌ。』
ミレーヌの脳裏にある女性の姿が浮かんだ。
ミレーヌと同じ艶やかな黒髪を揺らし、こちらに手を伸ばす美しい女性の姿が…。
ミレーヌはギュッと強く手を握り締めた。
「…どうでもいい。あんな女なんて。どうせ、もう関わらないだろうし。」
ミレーヌはそう呟き、すぐにリスティーナの事を忘れた。
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