47 / 222
第二章 相思相愛編
ルーファスside
しおりを挟む
残酷な描写表現あり。
苦手な方はご注意ください。
ルーファスは本を読みながら、自室で過ごしていた。
読んでいる本の内容は巫女狩りの歴史について詳しく記載されたものだ。
読み始めてすぐにルーファスはその内容に眉を顰めた。
そこには、巫女の一族の子孫である一人の少女が巫女狩りに遭い、命を落とした実例が書かれていた。
桃色の瞳を持ったその少女は巫女狩りに遭い、攫われた。
少女は巫女の迷信を信じた男達の手によって、屋敷に囚われ、世俗と隔離され、暗い地下室に閉じ込められた。
まだ初潮も迎えていなかった幼い少女は純潔を散らされた。そして、少女は何人もの男達の相手をさせられ、無理矢理犯され続けた。逃げられないように両手両足を切り落とされ、歩くことすらもできなくなった。少女の切られた手足は男達が食らった。
巫女の血を啜れば寿命が伸び、肉を食べれば不老不死になれるという迷信が信じられていたからだ。
少女は自害しないように歯を全て抜き取られ、舌を噛んで自殺する事すらできなくなった。
両手両足を失い、逃げることもできず、自ら命を絶つこともできずに少女は地下牢で飼われ続けた。
劣悪な環境の中、碌に水や食事も与えられず、強姦と暴行を受け続け、少女は牢の中で息絶えた。
少女が亡くなった時、髪の毛は艶がなく、ぼさぼさで後頭部の髪は抜け落ちていた。身体はミイラのように痩せ細り、犯され続けたせいで少女の肛門と膀胱は激しく損傷していた。
少女の遺体は埋葬されることもなく、男達の手によって解体され、売り捌かれた。
他にも多くの実例がそこには書かれていた。
性病に犯された男が巫女の末裔である女を犯したことで、病が治ったという実例。
女は処女だったがその暴行により、命を落とした。それがきっかけで巫女と性交すると病気が治るという迷信が広まった。
巫女の末裔が住んでいる村が滅ぼされた実例もあった。
当時、戦争に明け暮れていた軍事大国の王は巫女の力を使い、戦争に勝とうとしたのだが争いを好まない村の長はその申し出を断ったのだ。
断られた王はもしや、敵国に彼らが加担するのではないかと危惧し、巫女の末裔を滅ぼしたのだ。
そして、女は生け捕りにし、その力を利用しようと企んだ。
だが、捕虜の女達を犯しても力は得られなかったので王は捕虜を全員殺してしまうのだった。
それ以外にも巫女の一族には数多くの悲劇が襲った。
巫女を研究する狂信的科学者達は非道な人体実験をした。
彼らに捕まった巫女の末裔は死んだ方がマシだと思う程の拷問を受けた。
たくさんの薬を投与され、その過程で命を落とした者も多くいた。
身体を切り刻まれ、生きたまま解剖された女もいた。
魔力至上主義者達はより高い魔力を得る為に巫女の血を引く女を求めた。巫女と性交すると、高い魔力を手にすることができるという迷信が信じられていたからだ。
だが、彼らに巫女を尊重する意思は一切なかった。巫女は彼らにとって道具でしかなかった。
人としての尊厳もなく、ただ魔力の高い子供を産む道具として扱われ、性奴隷として生かされ続けた彼女達は絶望し、心が壊れ、自ら命を絶っていった。
自殺をしないために特殊な魔法をかけられ、無理矢理生かされ続けた女もいた。
巫女の末裔はこうした経緯もあってか次第に一族は散り散りになっていった。
そして、ここに記載されているだけでも五つの村が滅ぼされている。そのほとんどが権力者や巫女狩りによって滅ぼされたものだった。最後に滅ぼされた村の凄惨な末路にルーファスは息を呑んだ。
今まで滅ぼされた村は女は捕虜にされるというケースが多かったがこの村だけは違った。
巫女狩りが村を襲い、村人の男達を皆殺しにしたが、女の姿はどこにもなかった。
そして、戦利品を強奪するために神殿のような建物に入ると、そこは血の海だった。
神殿の中は女の死体で埋め尽くされていた。
首を吊って死んだ者、喉を掻き切って死んだ者、毒を飲んで死んだ者、死因はそれぞれ違うがどれも自ら命を絶ったと一目で分かる有様だった。
中には幼い子供を殺し、自らも命を絶った母親の姿もあった。
恐らく、敵の手に落ちてしまえば、自分達がどんな目に遭わされるのか理解していたのだろう。
その為、敵に辱めを受けるよりは死を選んだ。そういう事なのだろう。
ルーファスは思わず本を閉じた。
「何だ。これは…。」
読んでいるだけで吐き気がした。
巫女にはさまざまな迷信がある。
巫女と交われば病気が治る。
強い力を手に入れられる。
巫女に子を産ませれば強い魔力の子供が生まれる。
巫女を花嫁にすれば一族が繁栄する。
巫女の血と肉を使った薬はどんな怪我や病をも癒す力がある。
他にも、巫女の身体の一部を持っていれば富と権力を手に入れられるだの、幸福になれるという言い伝えまである。馬鹿馬鹿しい。そんな迷信を信じるだなんていかれている。
だが、不幸な事にその迷信のせいで巫女の身体は高値で取引がされた。
生きた身体も死体どちらでも高く売れた。一つ一つの身体の部位だけでも高く売れるが、死体そのものを売れば一生遊んで暮らせるほどの大金が手に入る。
その為、巫女の子孫は狙われ続け、巫女の子孫はどんどんその数を減らしていった。
おぞましいのは、これだけじゃない。巫女の身体を切り刻む時、彼らはその苦痛をできるだけ長引かせるようにしたのだという。
死の恐怖と苦痛に泣き叫び、殺して!と懇願する女の叫びは聞かれることなく、女達は苦しみながら、息絶えたらしい。何故、そんな惨い真似をしたのか?それもある一つの迷信が関係している。
巫女の身体の一部を切り落とす時、泣き叫ぶ声が大きい程、切断部位に宿る力が強くなると言い伝えがあるからだ。…そんな馬鹿げた迷信のせいで巫女の子孫達は無惨に殺された。
やがて、巫女の子孫は人目を避け、ひっそりと静かに暮らすようになる。
それでも、巫女狩りが後を絶たず、巫女狩りに見つかって、殺された子孫達はたくさんいたようだ。
ローザは自分が巫女であることを一つのステータスのように誇らしげにしていた。
貴族令嬢達はローザを妬み、僻み、羨んでいた。だが、巫女に選ばれることはそんなにもいいものだろうか?
ルーファスにはそう思えなかった。巫女の証である神聖力を持っていなくても、巫女の血を引いているというだけでこのようないかれた連中に狙われ、最悪の場合、無惨に殺されるのだ。
そういった危険が巫女には常に付き纏っている。
巫女の血筋というだけでも狙われるのだ。つまり、本物の巫女はそれ以上の危険があるということだ。
巫女は一族の中でもたった一人しか選ばれない。巫女が死ねばまた別の女性が巫女に選ばれる。
巫女の力はそうやって受け継がれてきた。
だが、別に巫女に選ばれていない者でも素質を持つ者がいた。
巫女と同じ神聖力を持つ者は一族の中にも少なからず存在していたのだ。
勿論、本物の巫女の力とは比べ物にはならない微弱な力ではあったが、それでも神聖力の使い手であることに変わりはない。実際、彼女達は巫女の補佐役のような役割を担っていた。
古代ルーミティナ国が滅び、巫女の一族が迫害されるようになってから、一族は離散してしまったのでその役目も自然に消滅してしまったようだが。
権力者や巫女狩りが真に求めているのは本物の巫女だ。
が、彼らにとって、巫女でなくても、神聖力の使い手は十分に価値があるものだった。
神聖力を受け継ぐことができるのは神に愛された娘、ペネロペとその血を引く子孫だけ。
巫女の一族でしか神聖力は使えない。それは魔力よりも余程、価値があるものだった。
巫女の血を引いているのならば、神聖力を持っている可能性がある。
だから、巫女の子孫は狙われたのだ。
ローザが今まで無事だったのはずっと王宮と権力者たちに守られていたからだ。
そして、今も炎の勇者とパレフィエ国という強大な力によって守られている。
だが…、もし、誰も守る者がいなかったら?巫女は神聖力の使い手ではあるが、最強ではない。
結界の力、浄化の力、癒しの力、豊穣の力、祈りの力…。
巫女の神聖力が奇跡と呼ばれるものであることは確かだ。だが、それは強いというわけではない。
自分の身を自分で守ることはできないのだ。
それに、神聖力は魔力と相性が悪い為、魔法が上手く使えないということだ。下手すれば魔法が全く使えないということもある。
魔法が使えないとなると、圧倒的に不利でしかない。
「…?」
ルーファスは何だか騒がしい声が聞こえ、顔を上げた。
その時、ルカが扉をノックして、部屋に入ってきた。
「殿下。あのー、今、リスティーナ様の侍女の方が凄い剣幕で殿下に伝えたいことがあるって来てるんですけど…、どうしましょう?」
「侍女?」
ルーファスの脳裏に鳶色の髪をした侍女の姿が浮かんだ。
「スザンヌという名の侍女か?」
「えっ、よく分かりましたね。そうです。スザンヌさんです。リスティーナ様の好物を教えてくれたのがスザンヌさんで…、」
その時、バタバタと物凄い足音が聞こえた。お待ちください!と引き止める声が聞こえる。
バン!と扉が勢いよく開けられた。案の定、そこに現れたのはスザンヌだった。鳶色の髪は乱れ、息も絶え絶えだ。スザンヌは切羽詰まった表情でルーファスに詰め寄った。
「ルーファス殿下!お助け下さい!姫様が…、姫様が…!」
「!」
リスティーナの名にルーファスは強く反応した。
「何があった?」
「ひ、姫様の元に王妃様が来られて…!」
スザンヌから母の名が出た途端、ルーファスはサッと顔色を変えた。
「リスティーナは今、後宮にいるのか?」
「は、はい!」
スザンヌが頷くと同時にルーファスは部屋を飛び出した。
苦手な方はご注意ください。
ルーファスは本を読みながら、自室で過ごしていた。
読んでいる本の内容は巫女狩りの歴史について詳しく記載されたものだ。
読み始めてすぐにルーファスはその内容に眉を顰めた。
そこには、巫女の一族の子孫である一人の少女が巫女狩りに遭い、命を落とした実例が書かれていた。
桃色の瞳を持ったその少女は巫女狩りに遭い、攫われた。
少女は巫女の迷信を信じた男達の手によって、屋敷に囚われ、世俗と隔離され、暗い地下室に閉じ込められた。
まだ初潮も迎えていなかった幼い少女は純潔を散らされた。そして、少女は何人もの男達の相手をさせられ、無理矢理犯され続けた。逃げられないように両手両足を切り落とされ、歩くことすらもできなくなった。少女の切られた手足は男達が食らった。
巫女の血を啜れば寿命が伸び、肉を食べれば不老不死になれるという迷信が信じられていたからだ。
少女は自害しないように歯を全て抜き取られ、舌を噛んで自殺する事すらできなくなった。
両手両足を失い、逃げることもできず、自ら命を絶つこともできずに少女は地下牢で飼われ続けた。
劣悪な環境の中、碌に水や食事も与えられず、強姦と暴行を受け続け、少女は牢の中で息絶えた。
少女が亡くなった時、髪の毛は艶がなく、ぼさぼさで後頭部の髪は抜け落ちていた。身体はミイラのように痩せ細り、犯され続けたせいで少女の肛門と膀胱は激しく損傷していた。
少女の遺体は埋葬されることもなく、男達の手によって解体され、売り捌かれた。
他にも多くの実例がそこには書かれていた。
性病に犯された男が巫女の末裔である女を犯したことで、病が治ったという実例。
女は処女だったがその暴行により、命を落とした。それがきっかけで巫女と性交すると病気が治るという迷信が広まった。
巫女の末裔が住んでいる村が滅ぼされた実例もあった。
当時、戦争に明け暮れていた軍事大国の王は巫女の力を使い、戦争に勝とうとしたのだが争いを好まない村の長はその申し出を断ったのだ。
断られた王はもしや、敵国に彼らが加担するのではないかと危惧し、巫女の末裔を滅ぼしたのだ。
そして、女は生け捕りにし、その力を利用しようと企んだ。
だが、捕虜の女達を犯しても力は得られなかったので王は捕虜を全員殺してしまうのだった。
それ以外にも巫女の一族には数多くの悲劇が襲った。
巫女を研究する狂信的科学者達は非道な人体実験をした。
彼らに捕まった巫女の末裔は死んだ方がマシだと思う程の拷問を受けた。
たくさんの薬を投与され、その過程で命を落とした者も多くいた。
身体を切り刻まれ、生きたまま解剖された女もいた。
魔力至上主義者達はより高い魔力を得る為に巫女の血を引く女を求めた。巫女と性交すると、高い魔力を手にすることができるという迷信が信じられていたからだ。
だが、彼らに巫女を尊重する意思は一切なかった。巫女は彼らにとって道具でしかなかった。
人としての尊厳もなく、ただ魔力の高い子供を産む道具として扱われ、性奴隷として生かされ続けた彼女達は絶望し、心が壊れ、自ら命を絶っていった。
自殺をしないために特殊な魔法をかけられ、無理矢理生かされ続けた女もいた。
巫女の末裔はこうした経緯もあってか次第に一族は散り散りになっていった。
そして、ここに記載されているだけでも五つの村が滅ぼされている。そのほとんどが権力者や巫女狩りによって滅ぼされたものだった。最後に滅ぼされた村の凄惨な末路にルーファスは息を呑んだ。
今まで滅ぼされた村は女は捕虜にされるというケースが多かったがこの村だけは違った。
巫女狩りが村を襲い、村人の男達を皆殺しにしたが、女の姿はどこにもなかった。
そして、戦利品を強奪するために神殿のような建物に入ると、そこは血の海だった。
神殿の中は女の死体で埋め尽くされていた。
首を吊って死んだ者、喉を掻き切って死んだ者、毒を飲んで死んだ者、死因はそれぞれ違うがどれも自ら命を絶ったと一目で分かる有様だった。
中には幼い子供を殺し、自らも命を絶った母親の姿もあった。
恐らく、敵の手に落ちてしまえば、自分達がどんな目に遭わされるのか理解していたのだろう。
その為、敵に辱めを受けるよりは死を選んだ。そういう事なのだろう。
ルーファスは思わず本を閉じた。
「何だ。これは…。」
読んでいるだけで吐き気がした。
巫女にはさまざまな迷信がある。
巫女と交われば病気が治る。
強い力を手に入れられる。
巫女に子を産ませれば強い魔力の子供が生まれる。
巫女を花嫁にすれば一族が繁栄する。
巫女の血と肉を使った薬はどんな怪我や病をも癒す力がある。
他にも、巫女の身体の一部を持っていれば富と権力を手に入れられるだの、幸福になれるという言い伝えまである。馬鹿馬鹿しい。そんな迷信を信じるだなんていかれている。
だが、不幸な事にその迷信のせいで巫女の身体は高値で取引がされた。
生きた身体も死体どちらでも高く売れた。一つ一つの身体の部位だけでも高く売れるが、死体そのものを売れば一生遊んで暮らせるほどの大金が手に入る。
その為、巫女の子孫は狙われ続け、巫女の子孫はどんどんその数を減らしていった。
おぞましいのは、これだけじゃない。巫女の身体を切り刻む時、彼らはその苦痛をできるだけ長引かせるようにしたのだという。
死の恐怖と苦痛に泣き叫び、殺して!と懇願する女の叫びは聞かれることなく、女達は苦しみながら、息絶えたらしい。何故、そんな惨い真似をしたのか?それもある一つの迷信が関係している。
巫女の身体の一部を切り落とす時、泣き叫ぶ声が大きい程、切断部位に宿る力が強くなると言い伝えがあるからだ。…そんな馬鹿げた迷信のせいで巫女の子孫達は無惨に殺された。
やがて、巫女の子孫は人目を避け、ひっそりと静かに暮らすようになる。
それでも、巫女狩りが後を絶たず、巫女狩りに見つかって、殺された子孫達はたくさんいたようだ。
ローザは自分が巫女であることを一つのステータスのように誇らしげにしていた。
貴族令嬢達はローザを妬み、僻み、羨んでいた。だが、巫女に選ばれることはそんなにもいいものだろうか?
ルーファスにはそう思えなかった。巫女の証である神聖力を持っていなくても、巫女の血を引いているというだけでこのようないかれた連中に狙われ、最悪の場合、無惨に殺されるのだ。
そういった危険が巫女には常に付き纏っている。
巫女の血筋というだけでも狙われるのだ。つまり、本物の巫女はそれ以上の危険があるということだ。
巫女は一族の中でもたった一人しか選ばれない。巫女が死ねばまた別の女性が巫女に選ばれる。
巫女の力はそうやって受け継がれてきた。
だが、別に巫女に選ばれていない者でも素質を持つ者がいた。
巫女と同じ神聖力を持つ者は一族の中にも少なからず存在していたのだ。
勿論、本物の巫女の力とは比べ物にはならない微弱な力ではあったが、それでも神聖力の使い手であることに変わりはない。実際、彼女達は巫女の補佐役のような役割を担っていた。
古代ルーミティナ国が滅び、巫女の一族が迫害されるようになってから、一族は離散してしまったのでその役目も自然に消滅してしまったようだが。
権力者や巫女狩りが真に求めているのは本物の巫女だ。
が、彼らにとって、巫女でなくても、神聖力の使い手は十分に価値があるものだった。
神聖力を受け継ぐことができるのは神に愛された娘、ペネロペとその血を引く子孫だけ。
巫女の一族でしか神聖力は使えない。それは魔力よりも余程、価値があるものだった。
巫女の血を引いているのならば、神聖力を持っている可能性がある。
だから、巫女の子孫は狙われたのだ。
ローザが今まで無事だったのはずっと王宮と権力者たちに守られていたからだ。
そして、今も炎の勇者とパレフィエ国という強大な力によって守られている。
だが…、もし、誰も守る者がいなかったら?巫女は神聖力の使い手ではあるが、最強ではない。
結界の力、浄化の力、癒しの力、豊穣の力、祈りの力…。
巫女の神聖力が奇跡と呼ばれるものであることは確かだ。だが、それは強いというわけではない。
自分の身を自分で守ることはできないのだ。
それに、神聖力は魔力と相性が悪い為、魔法が上手く使えないということだ。下手すれば魔法が全く使えないということもある。
魔法が使えないとなると、圧倒的に不利でしかない。
「…?」
ルーファスは何だか騒がしい声が聞こえ、顔を上げた。
その時、ルカが扉をノックして、部屋に入ってきた。
「殿下。あのー、今、リスティーナ様の侍女の方が凄い剣幕で殿下に伝えたいことがあるって来てるんですけど…、どうしましょう?」
「侍女?」
ルーファスの脳裏に鳶色の髪をした侍女の姿が浮かんだ。
「スザンヌという名の侍女か?」
「えっ、よく分かりましたね。そうです。スザンヌさんです。リスティーナ様の好物を教えてくれたのがスザンヌさんで…、」
その時、バタバタと物凄い足音が聞こえた。お待ちください!と引き止める声が聞こえる。
バン!と扉が勢いよく開けられた。案の定、そこに現れたのはスザンヌだった。鳶色の髪は乱れ、息も絶え絶えだ。スザンヌは切羽詰まった表情でルーファスに詰め寄った。
「ルーファス殿下!お助け下さい!姫様が…、姫様が…!」
「!」
リスティーナの名にルーファスは強く反応した。
「何があった?」
「ひ、姫様の元に王妃様が来られて…!」
スザンヌから母の名が出た途端、ルーファスはサッと顔色を変えた。
「リスティーナは今、後宮にいるのか?」
「は、はい!」
スザンヌが頷くと同時にルーファスは部屋を飛び出した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
辺境伯と幼妻の秘め事
睡眠不足
恋愛
父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。
途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。
*元の話を読まなくても全く問題ありません。
*15歳で成人となる世界です。
*異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。
*なかなか本番にいきません
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
虐げられた出戻り姫は、こじらせ騎士の執愛に甘く捕らわれる
無憂
恋愛
旧題:水面に映る月影は――出戻り姫と銀の騎士
和平のために、隣国の大公に嫁いでいた末姫が、未亡人になって帰国した。わずか十二歳の妹を四十も年上の大公に嫁がせ、国のために犠牲を強いたことに自責の念を抱く王太子は、今度こそ幸福な結婚をと、信頼する側近の騎士に降嫁させようと考える。だが、騎士にはすでに生涯を誓った相手がいた。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる