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第二章 相思相愛編
黄金の花
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「り、リスティーナ様!?な、何でここに…!?も、もしかして、今の話聞いて…?」
「リスティーナ様…。」
ルカはリスティーナの姿にギョッとした顔をし、ロジャーは呆然と呟いた。
「い、今の話、本当ですか?ルーファス様が助からないって…。」
「ち、違うんですよ!リスティーナ様!い、今のはその…、た、例えばの話でして…!」
ルカが必死に否定するが、ロジャーは覚悟を決めたように唇を引き結ぶと、
「リスティーナ様。よろしければ、殿下の傍に行ってあげてください。きっと、殿下もそれを望んでおられる筈ですから。」
ロジャーは暗い表情でリスティーナを部屋に招いた。リスティーナはロジャーに促されるまま、奥の寝室へと入っていく。
「ッ!ゴホッ!ガハッ…!」
「殿下!」
リスティーナが部屋に入ると、血の匂いがした。咳き込むルーファスの口元に血がべったりと付着している。それどころか、シーツにも血が無数に飛び散っている。看病しているリリアナが必死にルーファスの口元に付着していた血を拭っている。
「グッ…!」
ルーファスは胸を鷲掴みにするかのように手を当てて、苦悶の表情を浮かべ、呻き声を上げている。歯を食い縛り、必死に痛みに耐えている。リスティーナは震えが止まらなかった。視界が滲んだ。
「る、ルーファス様…?」
恐る恐るルーファスに近付く。ヒュー、ヒュー、と喉元から喘鳴のような音が聴こえる。息をするのも苦しそうなルーファスにリスティーナは涙が止まらなかった。
「あ、ああ…!」
リスティーナは震えが止まらなかった。
どうしよう…!私のせいだ…!私を助けたばかりにルーファス様がこんな目に…!
「ご、ごめんなさい…!ごめんなさい!わ、私のせいで…!」
リスティーナは立っていられなくなり、床に膝をついて、シーツの端をギュッと握りしめ、ごめんなさいと何度も謝った。謝罪したところで彼が助かる筈もないのに…。
「…その、声…、リス、ティーナ、か…?無事、だったのか…。」
「ルーファス様!」
リスティーナは弾かれたように顔を上げ、ルーファスを見つめた。弱々しく伸ばされ、宙を彷徨う彼の手をリスティーナは両手で握り締めた。
「そこ、にいるのか…?…目が霞んで…、よく見えない…。」
「ルーファス様!私はここにいます!今、あなたの目の前に…!」
リスティーナはギュッと血で汚れた彼の手を握り締めた。リスティーナはルーファスの手に頬を擦りつけた。冷たい…。まるで死人のように冷たくなっている。リスティーナは怖くなった。嫌…!彼を失いたくない!
「ごめんなさい!ルーファス様…!わ、私…!私のせいでルーファス様が…!」
ルーファスの焦点の定まらない瞳がリスティーナを認識しようと彷徨う。
「そんな事、気にするな…。」
苦しそうに息をしながらもルーファスは声を発する。血色が悪い顔はまるで死人のように真っ白だ。ルーファスは弱々しくも、リスティーナのそっと握り返してくれる。
「君が無事なら…、それでいい。」
「ッ…!」
リスティーナはルーファスの言葉に何も答えることができなかった。涙が止まらない。どうして…、どうしてそこまでしてまで私を…!
「私の事なんて…、見捨ててしまえば良かったのに…!どうして、私なんかの為に…!」
思わず本音を口に出してしまった。嗚咽交じりに泣くリスティーナにルーファスは、
「…君は…、俺の全てだったから。君を失う位なら…、死んだ方が、マシだ…。」
「ルーファス様…!」
こんな状態になってまでも彼はリスティーナを責めない。
ロジャーもルカも…、誰一人としてリスティーナを責めたり、批判したりしない。それが余計に苦しかった。リスティーナは胸が押し潰されそうな痛みと苦しみを感じた。
「お願い…!死なないで下さい!あなたが死んだら、私は…!」
ルーファス様がいなくなるだなんて想像したくない。考えただけでぞっとする。ルーファス様がいたから、リスティーナはこの世界は美しいと思えるようになった。母を亡くしてから、空っぽだったリスティーナに光を与えてくれた。母を亡くして以来、心から笑えたことはなかったのに、ルーファス様の前では自然と笑う事ができた。
「…すまない。…今回ばかりは…、俺も、もう…、耐えられそうに、ない…。」
ルーファスの言葉にリスティーナは絶望した。
嫌…!嫌だ!彼を失いたくない!リスティーナは強くそう願った。
「嫌!嫌です!ルーファス様!約束してくれたじゃありませんか!生きるって…!」
「……。」
ルーファスはゼエ…、と息をしながら、ぼんやりとした目でリスティーナを見つめる。
憔悴し、今にも死にそうなルーファスを見ていられなくて、リスティーナはワッと泣きながら、俯いた。
思わず心の中で女神様に祈った。女神様…!どうか、ルーファス様を助けて下さい!
全てを可能にする力を持つ女神様ならそれができる筈…!どうか、私からルーファス様を取り上げないで!リスティーナは泣きながら、そう祈った。でも、本当は分かっていた。祈っても願いは聞かれない。
母が死にませんようにと願った祈りも聞き届けられなかったのだから。泣いても、祈っても、状況は変わらない。私は…!私は…!
「私は…、諦めません!待っててください!ルーファス様!」
リスティーナはグイッと涙を拭うと、決意の籠った目でルーファスを見つめる。そして、リスティーナは服の下に隠すようにして身に着けていた太陽のペンダントを外し、ルーファスにそれを渡した。
「これ、は…、」
「このペンダント、お守りの効果もあるんです。持っていて下さい。ルーファス様が回復したら、返して下さいね。」
リスティーナは泣き笑いのような表情を浮かべ、彼の手から手を離した。そのまま立ち上がると、身を翻した。
「リスティーナ様…?」
「用事を思い出したので今日はこれで失礼します。本当はルーファス様の看病をしたい所なんですが…、急ぎの用事なのでこれで。」
意味深な発言をするリスティーナにロジャー達は怪訝な表情を浮かべる。リスティーナはタッとその場を退出した。入り口で待機していたジーナを連れて、足早に後宮に戻った。
リスティーナは帰って早々に図書室へと足を運んだ。
植物図鑑を手に取り、リスティーナは目次に目を通す。
「黄金の花…。あった。」
ページを開き、黄金の花の特徴に目を通す。生息場所は…、確かローゼンハイムの北の森…。
リスティーナは以前、エルザが珍しい植物図鑑を貰ったと言って、リスティーナに見せてくれたことがあった。
その時に黄金の花という植物が載っていたのを思い出した。
黄金の花はどんな病気や怪我も治すといわれている魔法の花…。
その花は高山にしか咲かず、黄金色に光っていることから、そう呼ばれるようになった。
これだ。リスティーナは一筋の希望が見えた気がした。黄金の花は病気や怪我だけでなく解毒作用の効果もある。この魔法の花なら、ルーファス様は助かるかもしれない!リスティーナは本を閉じ、急いで部屋に戻った。
「え…!?姫様が殿下の所に?どうして、姫様を後宮から出したりしたの!」
「だって、リスティーナ様がどうしても殿下に会いたいって言っていたし…、何だかとても必死だったから…。あんなに泣きそうな顔をしたリスティーナ様を見たら、そのまま見て見ぬ振りはできなかったのよ。何より、私はリスティーナ様に恩があるのよ。そんな方の頼みを断られるわけないじゃない!」
ジーナの言葉にスザンヌはう…、と言葉に詰まった。確かに、ジーナの立場ならスザンヌも同じことをしたかもしれない。
「じゃあ、姫様は殿下が倒れたことを知ってしまったのね…。」
リスティーナ様が回復するまでは伏せておこうと思っていたのに…。スザンヌはリスティーナが今、どうしているのか気になった。きっと、落ち込んでいるだろう。泣いているかもしれない。
「それで、姫様は?」
「それが暫く、一人にして欲しいって言われて…。食事も召し上がらなくて…。」
「そう…。」
スザンヌは意を決して、リスティーナの部屋に行くことにした。扉を叩いて、声を掛ける。
「姫様。スザンヌでございます。入ってもよろしいでしょうか?」
返事がない。スザンヌは悩んだが、部屋に入ることにした。
「失礼します。姫様。あの…、ご気分は如何ですか?」
部屋にリスティーナの姿がない。寝台を見れば、天蓋付きのカーテンが引かれていた。あそこにいるのだろうか?スザンヌはカーテンを引き、布団を被った状態のリスティーナに声を掛けた。布団からは金色の髪が見えた。
「姫様…。殿下の事、黙っていて申し訳ありませんでした。姫様が知れれば、傷つくかと思ったのであえて姫様には黙っていました。…姫様。どうぞ、お気を確かに。きっと、大丈夫ですわ。今までだって殿下は体調を崩しても回復していたのですから、今回だってきっと…、」
スザンヌはリスティーナに話しかけるが返事がない。リスティーナの気持ちを考えればそれは当然の事かもしれない。しかし、スザンヌは次第に違和感を抱いた。
……?何か様子が変だ。さっきから、リスティーナ様はぴくりとも動かないし、息をしている様に見えない。まさか…!スザンヌは急いで掛け布を掴んだ。
「姫様…?失礼します!」
バッと布団を捲った。スザンヌは目を見開いた。そこにリスティーナはいなかった。
ベッドにいたのは金髪の鬘を被ったお人形だった。スザンヌはサアア、と顔が真っ青になった。
「ひ、姫様!?」
部屋中を探し回ったがリスティーナの姿がない。
よく見れば、机の上に手紙が置いてある。見れば、手紙にはこう書かれていた。
『スザンヌへ
勝手な真似をして、ごめんなさい。
少しだけ出かけてきます。夜には戻ります。無事に戻ってくると約束するので心配しないで。
リスティーナより』
「ひ、姫様ー!」
スザンヌの絶叫が室内に響き、スザンヌはショックのあまり、気絶してしまった。
「リスティーナ様…。」
ルカはリスティーナの姿にギョッとした顔をし、ロジャーは呆然と呟いた。
「い、今の話、本当ですか?ルーファス様が助からないって…。」
「ち、違うんですよ!リスティーナ様!い、今のはその…、た、例えばの話でして…!」
ルカが必死に否定するが、ロジャーは覚悟を決めたように唇を引き結ぶと、
「リスティーナ様。よろしければ、殿下の傍に行ってあげてください。きっと、殿下もそれを望んでおられる筈ですから。」
ロジャーは暗い表情でリスティーナを部屋に招いた。リスティーナはロジャーに促されるまま、奥の寝室へと入っていく。
「ッ!ゴホッ!ガハッ…!」
「殿下!」
リスティーナが部屋に入ると、血の匂いがした。咳き込むルーファスの口元に血がべったりと付着している。それどころか、シーツにも血が無数に飛び散っている。看病しているリリアナが必死にルーファスの口元に付着していた血を拭っている。
「グッ…!」
ルーファスは胸を鷲掴みにするかのように手を当てて、苦悶の表情を浮かべ、呻き声を上げている。歯を食い縛り、必死に痛みに耐えている。リスティーナは震えが止まらなかった。視界が滲んだ。
「る、ルーファス様…?」
恐る恐るルーファスに近付く。ヒュー、ヒュー、と喉元から喘鳴のような音が聴こえる。息をするのも苦しそうなルーファスにリスティーナは涙が止まらなかった。
「あ、ああ…!」
リスティーナは震えが止まらなかった。
どうしよう…!私のせいだ…!私を助けたばかりにルーファス様がこんな目に…!
「ご、ごめんなさい…!ごめんなさい!わ、私のせいで…!」
リスティーナは立っていられなくなり、床に膝をついて、シーツの端をギュッと握りしめ、ごめんなさいと何度も謝った。謝罪したところで彼が助かる筈もないのに…。
「…その、声…、リス、ティーナ、か…?無事、だったのか…。」
「ルーファス様!」
リスティーナは弾かれたように顔を上げ、ルーファスを見つめた。弱々しく伸ばされ、宙を彷徨う彼の手をリスティーナは両手で握り締めた。
「そこ、にいるのか…?…目が霞んで…、よく見えない…。」
「ルーファス様!私はここにいます!今、あなたの目の前に…!」
リスティーナはギュッと血で汚れた彼の手を握り締めた。リスティーナはルーファスの手に頬を擦りつけた。冷たい…。まるで死人のように冷たくなっている。リスティーナは怖くなった。嫌…!彼を失いたくない!
「ごめんなさい!ルーファス様…!わ、私…!私のせいでルーファス様が…!」
ルーファスの焦点の定まらない瞳がリスティーナを認識しようと彷徨う。
「そんな事、気にするな…。」
苦しそうに息をしながらもルーファスは声を発する。血色が悪い顔はまるで死人のように真っ白だ。ルーファスは弱々しくも、リスティーナのそっと握り返してくれる。
「君が無事なら…、それでいい。」
「ッ…!」
リスティーナはルーファスの言葉に何も答えることができなかった。涙が止まらない。どうして…、どうしてそこまでしてまで私を…!
「私の事なんて…、見捨ててしまえば良かったのに…!どうして、私なんかの為に…!」
思わず本音を口に出してしまった。嗚咽交じりに泣くリスティーナにルーファスは、
「…君は…、俺の全てだったから。君を失う位なら…、死んだ方が、マシだ…。」
「ルーファス様…!」
こんな状態になってまでも彼はリスティーナを責めない。
ロジャーもルカも…、誰一人としてリスティーナを責めたり、批判したりしない。それが余計に苦しかった。リスティーナは胸が押し潰されそうな痛みと苦しみを感じた。
「お願い…!死なないで下さい!あなたが死んだら、私は…!」
ルーファス様がいなくなるだなんて想像したくない。考えただけでぞっとする。ルーファス様がいたから、リスティーナはこの世界は美しいと思えるようになった。母を亡くしてから、空っぽだったリスティーナに光を与えてくれた。母を亡くして以来、心から笑えたことはなかったのに、ルーファス様の前では自然と笑う事ができた。
「…すまない。…今回ばかりは…、俺も、もう…、耐えられそうに、ない…。」
ルーファスの言葉にリスティーナは絶望した。
嫌…!嫌だ!彼を失いたくない!リスティーナは強くそう願った。
「嫌!嫌です!ルーファス様!約束してくれたじゃありませんか!生きるって…!」
「……。」
ルーファスはゼエ…、と息をしながら、ぼんやりとした目でリスティーナを見つめる。
憔悴し、今にも死にそうなルーファスを見ていられなくて、リスティーナはワッと泣きながら、俯いた。
思わず心の中で女神様に祈った。女神様…!どうか、ルーファス様を助けて下さい!
全てを可能にする力を持つ女神様ならそれができる筈…!どうか、私からルーファス様を取り上げないで!リスティーナは泣きながら、そう祈った。でも、本当は分かっていた。祈っても願いは聞かれない。
母が死にませんようにと願った祈りも聞き届けられなかったのだから。泣いても、祈っても、状況は変わらない。私は…!私は…!
「私は…、諦めません!待っててください!ルーファス様!」
リスティーナはグイッと涙を拭うと、決意の籠った目でルーファスを見つめる。そして、リスティーナは服の下に隠すようにして身に着けていた太陽のペンダントを外し、ルーファスにそれを渡した。
「これ、は…、」
「このペンダント、お守りの効果もあるんです。持っていて下さい。ルーファス様が回復したら、返して下さいね。」
リスティーナは泣き笑いのような表情を浮かべ、彼の手から手を離した。そのまま立ち上がると、身を翻した。
「リスティーナ様…?」
「用事を思い出したので今日はこれで失礼します。本当はルーファス様の看病をしたい所なんですが…、急ぎの用事なのでこれで。」
意味深な発言をするリスティーナにロジャー達は怪訝な表情を浮かべる。リスティーナはタッとその場を退出した。入り口で待機していたジーナを連れて、足早に後宮に戻った。
リスティーナは帰って早々に図書室へと足を運んだ。
植物図鑑を手に取り、リスティーナは目次に目を通す。
「黄金の花…。あった。」
ページを開き、黄金の花の特徴に目を通す。生息場所は…、確かローゼンハイムの北の森…。
リスティーナは以前、エルザが珍しい植物図鑑を貰ったと言って、リスティーナに見せてくれたことがあった。
その時に黄金の花という植物が載っていたのを思い出した。
黄金の花はどんな病気や怪我も治すといわれている魔法の花…。
その花は高山にしか咲かず、黄金色に光っていることから、そう呼ばれるようになった。
これだ。リスティーナは一筋の希望が見えた気がした。黄金の花は病気や怪我だけでなく解毒作用の効果もある。この魔法の花なら、ルーファス様は助かるかもしれない!リスティーナは本を閉じ、急いで部屋に戻った。
「え…!?姫様が殿下の所に?どうして、姫様を後宮から出したりしたの!」
「だって、リスティーナ様がどうしても殿下に会いたいって言っていたし…、何だかとても必死だったから…。あんなに泣きそうな顔をしたリスティーナ様を見たら、そのまま見て見ぬ振りはできなかったのよ。何より、私はリスティーナ様に恩があるのよ。そんな方の頼みを断られるわけないじゃない!」
ジーナの言葉にスザンヌはう…、と言葉に詰まった。確かに、ジーナの立場ならスザンヌも同じことをしたかもしれない。
「じゃあ、姫様は殿下が倒れたことを知ってしまったのね…。」
リスティーナ様が回復するまでは伏せておこうと思っていたのに…。スザンヌはリスティーナが今、どうしているのか気になった。きっと、落ち込んでいるだろう。泣いているかもしれない。
「それで、姫様は?」
「それが暫く、一人にして欲しいって言われて…。食事も召し上がらなくて…。」
「そう…。」
スザンヌは意を決して、リスティーナの部屋に行くことにした。扉を叩いて、声を掛ける。
「姫様。スザンヌでございます。入ってもよろしいでしょうか?」
返事がない。スザンヌは悩んだが、部屋に入ることにした。
「失礼します。姫様。あの…、ご気分は如何ですか?」
部屋にリスティーナの姿がない。寝台を見れば、天蓋付きのカーテンが引かれていた。あそこにいるのだろうか?スザンヌはカーテンを引き、布団を被った状態のリスティーナに声を掛けた。布団からは金色の髪が見えた。
「姫様…。殿下の事、黙っていて申し訳ありませんでした。姫様が知れれば、傷つくかと思ったのであえて姫様には黙っていました。…姫様。どうぞ、お気を確かに。きっと、大丈夫ですわ。今までだって殿下は体調を崩しても回復していたのですから、今回だってきっと…、」
スザンヌはリスティーナに話しかけるが返事がない。リスティーナの気持ちを考えればそれは当然の事かもしれない。しかし、スザンヌは次第に違和感を抱いた。
……?何か様子が変だ。さっきから、リスティーナ様はぴくりとも動かないし、息をしている様に見えない。まさか…!スザンヌは急いで掛け布を掴んだ。
「姫様…?失礼します!」
バッと布団を捲った。スザンヌは目を見開いた。そこにリスティーナはいなかった。
ベッドにいたのは金髪の鬘を被ったお人形だった。スザンヌはサアア、と顔が真っ青になった。
「ひ、姫様!?」
部屋中を探し回ったがリスティーナの姿がない。
よく見れば、机の上に手紙が置いてある。見れば、手紙にはこう書かれていた。
『スザンヌへ
勝手な真似をして、ごめんなさい。
少しだけ出かけてきます。夜には戻ります。無事に戻ってくると約束するので心配しないで。
リスティーナより』
「ひ、姫様ー!」
スザンヌの絶叫が室内に響き、スザンヌはショックのあまり、気絶してしまった。
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