134 / 222
第三章 立志編
呼び出し
しおりを挟む
「お兄様。ここにいたのね。」
「アーリヤか。」
アーリヤは兄が一人になった所に声を掛けた。ラシードはアーリヤを見て、愉し気に笑みを浮かべた。
「さっきのことだけど、あれは一体、どういう風の吹き回し?」
アーリヤの言葉にラシードは明確に答えずにフッと笑った。
「あの女はどうだった?」
「すごい落ち込んでいたわよ。勇者様に非礼を働いてしまったってそれはそれは思い悩んでいたわ。
でも、不敬罪で罰せられるんじゃないかって涙目になっていたあの子は最高に可愛かったわ。」
「それは俺も見て見たかったな。」
「お兄様も悪い人ね。リスティーナも可哀想に…。まんまと騙されてしまって…。」
アーリヤはクスッとおかしそうに笑った。
あの時、リスティーナが転びそうになったのは事故じゃない。あれは仕組まれたものだった。
リスティーナがラシードの元を去ろうとした時、ラシードはアーリヤに目で合図した。
ラシードとアーリヤは血を分けた兄妹。目を見れば、その意を汲み取る位、訳もない。
アーリヤはこっそりと魔力を使い、リスティーナに眩暈を起こさせ、そのまま足元のバランスが崩れるように平衡感覚を狂わせる魔法をかけた。
勇者のラシード程ではないがアーリヤも王女なだけあってそこそこ魔力はある。
本命は剣だが魔法だって使えないわけじゃない。誰にもバレないようにこっそりと魔法を発動する位の腕前はあった。
そんな裏事情を知らずにリスティーナは自分のせいだと思い込み、必死にラシードに謝っていた。
「ちょっと予想外の展開になったからな。よくやったぞ。アーリヤ。お蔭で上手くいった。」
「どういう意味かしら?ちゃんと私にも分かるように説明して頂戴。」
「あの女に俺を意識させるためだ。実際、効果はあっただろう?これで、あの女は俺に罪悪感と後ろめたい思いを抱いている。交渉をするには絶好の機会だ。」
「その為にわざわざあんな手の込んだ真似を?」
「それだけじゃないさ。…アーリヤ。あの女は俺が探していた例の女だ。」
「ッ!何ですって?」
アーリヤは目を見開いた。
「確かなの?」
「ああ。間違いない。確かに北の森で見た時は小汚い格好をしていたが顔を見ればすぐに分かる。」
「有り得ないわ!リスティーナが後宮を抜け出して、北の森に行くだなんて…!あの大人しい子がそんな無謀な事をするとは思えない。そこまでの度胸も行動力もない筈よ。」
「そうか?だが、お前も言っていたじゃないか。普段は大人しいが、時々芯の強さを感じる時があると。ああいう大人しい女に限って意外と肝が据わっていたりするんだよ。」
「それはそうだけど…、でも、何でわざわざ北の森なんかに…?」
「黄金の花が目当てなんだろうな。確か、ルーファスが危篤状態だったんだろう?その後、ルーファスの命が助かった所を見ると、黄金の花で一命を取り留めたって所か。」
「あの男の為にそこまでしたの!?…いいえ。有り得るわね。あの子、ルーファスの為に呪術について調べていたし、聖女様に直談判する位だし…。」
「へえ。見るからにか弱そうで誰かに守られていないと生きていけなさそうな顔をしてるくせに意外と度胸があるじゃないか。…悪くないな。」
目を細めるラシードの反応を見て、アーリヤはすぐに気づいた。兄がリスティーナを気に入っているという事に。
「お兄様も気に入ったの?でも、あの子は私が先に目をつけたのよ。」
「おいおい。狙った獲物をとるのに順番なんて関係ないだろう?」
「可愛い妹の獲物を横取りするなんて、お兄様って随分と意地汚いのね。…酷いわ。私がこの王宮でたった一人で味方もいない状況で耐えてきたというのに…。それなのに、こんな仕打ちをするなんて…!」
アーリヤは顔を手で覆って、シクシクとわざとらしく声を出している。勿論、嘘泣きだ。
そして、そんな妹の嘘泣きに気付かない程、ラシードは馬鹿じゃない。
「あー、はいはい。分かった。分かった。約束は約束だ。望み通り、お前があの女を手に入れられるよう協力してやるよ。それで?上手く誘き出せそうか?」
「…駄目だったわ。あの子、他の女と違ってあまりお兄様に興味がないみたいよ。二人の時間を邪魔するわけにはいかないからって断られちゃったわ。それに、あの子は今、聖女様に会う事に夢中でそれどころじゃないみたい。」
「へえ。それはそれは…。」
面白い…。ラシードはクツリ、と喉を鳴らして笑った。
「どうするの?さっきの失態を匂わせれば、あの子も断らないと思うけど。」
「そんな事をしなくても、もっといい手がある。既に俺はあの女の弱味を握っているんだ。俺の誘いを断る真似はできないさ。」
そう言って、ラシードは企んだ笑みを浮かべた。
目を閉じて、規則的な呼吸をして、静かな寝息を立てているルーファスの寝顔を見ながら、リスティーナはホッと安心した。良かった。ちゃんと寝ている。
リスティーナはふと、ルーファスの手に視線を落とした。細い手首…。前よりも細くなっている。
頬だって、窶れて…。
最近、食欲が戻ってようやくスープを飲めるようになったけど、まだまだ栄養が足りていないんだ。
ルーファス様が起きたら、何か食べられる物を用意しておこうかしら?
リスティーナは一瞬、使用人を呼ぼうかと思ったが、すぐに思いとどまった。
ルーファス様はさっき、誰も呼ぶなと言っていた。きっと、あまり、人に知られたくないんだ。
リスティーナはチラッとルーファスを見下ろす。
少しだけなら…、いいよね?
リスティーナは乱れた髪を直し、誰かに会っても見苦しくない程度に身なりを整えた。
「ルーファス様。ごめんなさい。すぐに戻ってきますから。」
リスティーナは小声でそう言って、そっとルーファスの手から手を離し、部屋から退出した。
何にしようかな。やっぱり、林檎か果物でも持って行って…、そうだ。ゼリーやプリンなら食べられるかも…。
幸い、今は祝賀会で立食式のパーティーが開かれている。恐らく、皆、お喋りやダンスに夢中になっている筈。ああいった食事や菓子は手を付けられていないことが多い。ということは、たくさん料理が残っている筈。ルーファス様の分に少しだけ貰っていこう。
そんな風に考えながら、廊下を歩いていると、
「あら、リスティーナ。ここにいたのね。」
「アーリヤ様?」
リスティーナが廊下を歩いていると、背後から声を掛けられた。振り返れば、そこにはアーリヤが立っていた。
「良かった。探していたのよ。」
「私を?」
「ええ。お兄様から伝言を頼まれているの。」
「え…、」
リスティーナはドキッとした。もしかして、北の森の件のことかな?
いや。ひょっとしたら、さっき殿下の前で転びそうになったことかもしれない。心当たりがありすぎる。
「あなたに大事な話があるから、これから部屋に来てくれですって。」
「!」
へ、部屋に…?あの人の所へ…?
い、行きたくない…。
あの鋭い猛禽類みたいな目を持つラシード殿下に会うのは怖い。
それに、相手は炎の勇者様だ。また何か失態を犯したらどうしよう…!
でも…、リスティーナはギュッと手を握りしめた。
これは…、もしかしたら、チャンスなのかもしれない。ここでラシード殿下と上手く交渉すれば、ローザ様の協力を得ることができるかもしれない。
リスティーナは唇を強く引き結び、覚悟を決めた。
「い、行きます。私…。ラシード殿下の元に連れてって下さい。」
リスティーナの言葉にアーリヤは驚いたように目を瞠ったがやがて、ニコッと笑い、
「じゃあ、着いて来て。案内するわ。」
「はい。」
緊張と不安と恐怖でドキドキしながら、リスティーナは頷き、アーリヤの後に続いた。
ごめんなさい。ルーファス様…。もう少しだけ待っててください。
そう心の中で謝りながら、足を踏み出した。
「アーリヤか。」
アーリヤは兄が一人になった所に声を掛けた。ラシードはアーリヤを見て、愉し気に笑みを浮かべた。
「さっきのことだけど、あれは一体、どういう風の吹き回し?」
アーリヤの言葉にラシードは明確に答えずにフッと笑った。
「あの女はどうだった?」
「すごい落ち込んでいたわよ。勇者様に非礼を働いてしまったってそれはそれは思い悩んでいたわ。
でも、不敬罪で罰せられるんじゃないかって涙目になっていたあの子は最高に可愛かったわ。」
「それは俺も見て見たかったな。」
「お兄様も悪い人ね。リスティーナも可哀想に…。まんまと騙されてしまって…。」
アーリヤはクスッとおかしそうに笑った。
あの時、リスティーナが転びそうになったのは事故じゃない。あれは仕組まれたものだった。
リスティーナがラシードの元を去ろうとした時、ラシードはアーリヤに目で合図した。
ラシードとアーリヤは血を分けた兄妹。目を見れば、その意を汲み取る位、訳もない。
アーリヤはこっそりと魔力を使い、リスティーナに眩暈を起こさせ、そのまま足元のバランスが崩れるように平衡感覚を狂わせる魔法をかけた。
勇者のラシード程ではないがアーリヤも王女なだけあってそこそこ魔力はある。
本命は剣だが魔法だって使えないわけじゃない。誰にもバレないようにこっそりと魔法を発動する位の腕前はあった。
そんな裏事情を知らずにリスティーナは自分のせいだと思い込み、必死にラシードに謝っていた。
「ちょっと予想外の展開になったからな。よくやったぞ。アーリヤ。お蔭で上手くいった。」
「どういう意味かしら?ちゃんと私にも分かるように説明して頂戴。」
「あの女に俺を意識させるためだ。実際、効果はあっただろう?これで、あの女は俺に罪悪感と後ろめたい思いを抱いている。交渉をするには絶好の機会だ。」
「その為にわざわざあんな手の込んだ真似を?」
「それだけじゃないさ。…アーリヤ。あの女は俺が探していた例の女だ。」
「ッ!何ですって?」
アーリヤは目を見開いた。
「確かなの?」
「ああ。間違いない。確かに北の森で見た時は小汚い格好をしていたが顔を見ればすぐに分かる。」
「有り得ないわ!リスティーナが後宮を抜け出して、北の森に行くだなんて…!あの大人しい子がそんな無謀な事をするとは思えない。そこまでの度胸も行動力もない筈よ。」
「そうか?だが、お前も言っていたじゃないか。普段は大人しいが、時々芯の強さを感じる時があると。ああいう大人しい女に限って意外と肝が据わっていたりするんだよ。」
「それはそうだけど…、でも、何でわざわざ北の森なんかに…?」
「黄金の花が目当てなんだろうな。確か、ルーファスが危篤状態だったんだろう?その後、ルーファスの命が助かった所を見ると、黄金の花で一命を取り留めたって所か。」
「あの男の為にそこまでしたの!?…いいえ。有り得るわね。あの子、ルーファスの為に呪術について調べていたし、聖女様に直談判する位だし…。」
「へえ。見るからにか弱そうで誰かに守られていないと生きていけなさそうな顔をしてるくせに意外と度胸があるじゃないか。…悪くないな。」
目を細めるラシードの反応を見て、アーリヤはすぐに気づいた。兄がリスティーナを気に入っているという事に。
「お兄様も気に入ったの?でも、あの子は私が先に目をつけたのよ。」
「おいおい。狙った獲物をとるのに順番なんて関係ないだろう?」
「可愛い妹の獲物を横取りするなんて、お兄様って随分と意地汚いのね。…酷いわ。私がこの王宮でたった一人で味方もいない状況で耐えてきたというのに…。それなのに、こんな仕打ちをするなんて…!」
アーリヤは顔を手で覆って、シクシクとわざとらしく声を出している。勿論、嘘泣きだ。
そして、そんな妹の嘘泣きに気付かない程、ラシードは馬鹿じゃない。
「あー、はいはい。分かった。分かった。約束は約束だ。望み通り、お前があの女を手に入れられるよう協力してやるよ。それで?上手く誘き出せそうか?」
「…駄目だったわ。あの子、他の女と違ってあまりお兄様に興味がないみたいよ。二人の時間を邪魔するわけにはいかないからって断られちゃったわ。それに、あの子は今、聖女様に会う事に夢中でそれどころじゃないみたい。」
「へえ。それはそれは…。」
面白い…。ラシードはクツリ、と喉を鳴らして笑った。
「どうするの?さっきの失態を匂わせれば、あの子も断らないと思うけど。」
「そんな事をしなくても、もっといい手がある。既に俺はあの女の弱味を握っているんだ。俺の誘いを断る真似はできないさ。」
そう言って、ラシードは企んだ笑みを浮かべた。
目を閉じて、規則的な呼吸をして、静かな寝息を立てているルーファスの寝顔を見ながら、リスティーナはホッと安心した。良かった。ちゃんと寝ている。
リスティーナはふと、ルーファスの手に視線を落とした。細い手首…。前よりも細くなっている。
頬だって、窶れて…。
最近、食欲が戻ってようやくスープを飲めるようになったけど、まだまだ栄養が足りていないんだ。
ルーファス様が起きたら、何か食べられる物を用意しておこうかしら?
リスティーナは一瞬、使用人を呼ぼうかと思ったが、すぐに思いとどまった。
ルーファス様はさっき、誰も呼ぶなと言っていた。きっと、あまり、人に知られたくないんだ。
リスティーナはチラッとルーファスを見下ろす。
少しだけなら…、いいよね?
リスティーナは乱れた髪を直し、誰かに会っても見苦しくない程度に身なりを整えた。
「ルーファス様。ごめんなさい。すぐに戻ってきますから。」
リスティーナは小声でそう言って、そっとルーファスの手から手を離し、部屋から退出した。
何にしようかな。やっぱり、林檎か果物でも持って行って…、そうだ。ゼリーやプリンなら食べられるかも…。
幸い、今は祝賀会で立食式のパーティーが開かれている。恐らく、皆、お喋りやダンスに夢中になっている筈。ああいった食事や菓子は手を付けられていないことが多い。ということは、たくさん料理が残っている筈。ルーファス様の分に少しだけ貰っていこう。
そんな風に考えながら、廊下を歩いていると、
「あら、リスティーナ。ここにいたのね。」
「アーリヤ様?」
リスティーナが廊下を歩いていると、背後から声を掛けられた。振り返れば、そこにはアーリヤが立っていた。
「良かった。探していたのよ。」
「私を?」
「ええ。お兄様から伝言を頼まれているの。」
「え…、」
リスティーナはドキッとした。もしかして、北の森の件のことかな?
いや。ひょっとしたら、さっき殿下の前で転びそうになったことかもしれない。心当たりがありすぎる。
「あなたに大事な話があるから、これから部屋に来てくれですって。」
「!」
へ、部屋に…?あの人の所へ…?
い、行きたくない…。
あの鋭い猛禽類みたいな目を持つラシード殿下に会うのは怖い。
それに、相手は炎の勇者様だ。また何か失態を犯したらどうしよう…!
でも…、リスティーナはギュッと手を握りしめた。
これは…、もしかしたら、チャンスなのかもしれない。ここでラシード殿下と上手く交渉すれば、ローザ様の協力を得ることができるかもしれない。
リスティーナは唇を強く引き結び、覚悟を決めた。
「い、行きます。私…。ラシード殿下の元に連れてって下さい。」
リスティーナの言葉にアーリヤは驚いたように目を瞠ったがやがて、ニコッと笑い、
「じゃあ、着いて来て。案内するわ。」
「はい。」
緊張と不安と恐怖でドキドキしながら、リスティーナは頷き、アーリヤの後に続いた。
ごめんなさい。ルーファス様…。もう少しだけ待っててください。
そう心の中で謝りながら、足を踏み出した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
辺境伯と幼妻の秘め事
睡眠不足
恋愛
父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。
途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。
*元の話を読まなくても全く問題ありません。
*15歳で成人となる世界です。
*異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。
*なかなか本番にいきません
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
虐げられた出戻り姫は、こじらせ騎士の執愛に甘く捕らわれる
無憂
恋愛
旧題:水面に映る月影は――出戻り姫と銀の騎士
和平のために、隣国の大公に嫁いでいた末姫が、未亡人になって帰国した。わずか十二歳の妹を四十も年上の大公に嫁がせ、国のために犠牲を強いたことに自責の念を抱く王太子は、今度こそ幸福な結婚をと、信頼する側近の騎士に降嫁させようと考える。だが、騎士にはすでに生涯を誓った相手がいた。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる