あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

菱沼あゆ

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肆 化け化けガム

いつまでも食べられる気がしていました……

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「寒いですね……」

 二十分後、壱花と子狸たちはストーブを囲んで震えていた。

「アイスの食べ過ぎだねえ」
と笑いながら、高尾もストーブにあたっている。

 同じくストーブの前にいる冨樫が壱花に向かい言った。

「お前ら、文字焼きでもなんでも、いつも作りすぎなんだよっ」

「冨樫……。
 その『お前ら』の『ら』に俺も入ってないか?」
と冨樫の横でストーブで手をあぶりながら、倫太郎が言う。

「ああっ、すみませんっ」
と冨樫は慌てて謝っていた。

 入ってないと言えばいいだけなのに。

 冨樫さん、莫迦正直だな~と思いながら、壱花は見ていた。

 まあ、私なら、入ってないと言った瞬間に半笑いになってしまってバレるかな、と思う。

「……甘酒でも作りましょうか。
 あったまりますし」

「俺はもう買い出しに行かないぞ……」
とすぐさま倫太郎が言ってくるが。

「いやいや、酒粕さけかすがあったんですよ。
 流しの棚に」
と壱花は言って、

「此処の流しの棚にっ?」
「いつのだっ」
と倫太郎と冨樫に言われる。

「いつのでしょうね~。
 なんか酒粕とかって永遠に食べられる気がしてましたが」

「……賞味期限あるだろう、一応。
 お前、味噌も納豆もいつまでも食べられると思ってるくちだな」

「納豆はさすがに。
 でも、味噌は古くなって色が濃くなったのも結構美味しいですよ。

 あんまり料理しないので、味噌、冷蔵庫の中で大変な色になっちゃってるんですが。

 その味噌を使って作る私の味噌汁は絶品だと評判ですよ」

「それは飲んでも大丈夫な奴なのか……」
と冨樫が言い、

「……誰に作ったんだ、それ」
と倫太郎が言い、

「料理しないのでと平気で言い切るのどうなんだ」
と冨樫が言った。

 冨樫さん、二度も責めてきましたね……と思いながら、壱花は、
「冨樫さんの方が社長より、追求が厳しいですよね」
と呟く。

 だが、冨樫は、
「社長よりって、社長はなにもお前を責めてないだろう」
と言ってきた。

「今、誰に作ったんだ、それって言ったじゃないですか。
 どうせ味オンチのやつに作ったんだろって意味でしょ?」

 高尾が笑って、
「面白いねえ、化け化けちゃん。
 そうじゃなくって、味噌汁って、朝、彼氏とかに作ってあげるものじゃ……」
と言いかけたとき、倫太郎がさえぎるように、

「いつできるんだ、甘酒。
 早くしろ」
と壱花に言ってきた。

「え? 腐ってるんですよね? あの酒粕」

「知らん。
 見てみろ。

 腐ってるようだったら買ってきてやる」

「さっきもう買い出しに行かないって……」

「やかましい、早く行け」
と店の奥へと追い立てられた。

「社長、買い出し行くのなら付き合いますよ。
 私はそのまま帰りますから」
と冨樫が言っているのが聞こえてきた。

「もう帰るのか」
と倫太郎が言っている。

「うっかり長居して、また三人で目が覚めたら嫌なんで。
 じゃ、行きましょうか」

「そうだな。
 さっさと行ってくるか」
という会話のあと、ガラガラとガラス戸を開けている音がする。

 ええっ?
 私、今、酒粕確認に向かってるんですけどっ?
と戻ってみたが、どうせ腐ってると思っているらしい男二人はもう消えていた。




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