あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

菱沼あゆ

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玖 安倍晴明の恩返し

そこで張り合うのはどうかと思います

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 壱花は冨樫とともに、冨樫家の押し入れやクローゼットを探した。

 冨樫はどうやら、行方不明時の父親の服装を確認するために、捜索に使ったビラを探しているようだった。

 一応、ビラはとってはあるようだったが。

 前の父親のものを残しておくのは今の父親に対して悪いと思ってか、家の何処か奥深くにしまってあるようだった。

「なにかこう、伺っていた通りのお母様ですね」
 冨樫に言われるまま、押し入れの奥を探しながら、壱花は言う。

「前になにか言ったんだったか?」

『いつも軍隊の上官か? というような物言いで何事にも厳しい人』だと言ってましたよ。

『顔以外、何処がいいのかよくわからない』

『今の父はドMに違いない』とも。

 そうこうしているうちにドMなお父様が戻ってきた。

 冨樫の今の父、直志ただしは、あんなに太ってはいないが、穏やかな感じが、狸のお父さんと似ていた。

「葉介、探してるの、もしかして、これ?」
と穏やかな口調で言い、直志は問題のビラを出してくる。

 出張に出かけときなどに、人に見せて、探してくれていたらしい。

 なんていい人なんだっ、と衝撃を受ける壱花の横で、冨樫がぼそりと言った。

「ほんとうに……なんでこんないい人が、うちの母親と。
 狐か狸に化かされてるんじゃないかと子どもの頃は思っていたよ」

 まあ、化かしそうな人たちなら、あやかし駄菓子屋にたくさんいますけどね、と思いながら、壱花はひっくり返した押し入れを片付けた。



「と言うわけでハンバーグご馳走になって帰ってきました」

「……何しに行ったんだお前」

 壱花は夜の駄菓子屋で、即行、倫太郎に罵られていた。

 確かに。
 探しただけで、なにも見つけてはいない。

 押し入れの中をひっくり返して戻すという、よく年末に大掃除と称してやる無意味な行為に似たことをやって、戻ってきただけだ。

「あ、でも、初めて冨樫さんのお母様を拝見しました。
 綺麗だったです」

「……うちの母親も綺麗だぞ」
と何故か倫太郎は張り合う。

「なんですか、マザコン自慢ですか?」

 そうじゃない、と言う倫太郎はスルメを甘辛く炊いて、ポット入りの駄菓子のスルメみたいなのを作っていた。

「社長、なんでまたストーブ出してきたんですか。
 暑いじゃないですか」
と壱花が文句を言うと、

「いや、携帯コンロが見つからなかったから」
と言う。

 倫太郎も肩に乗っている子狸も、店内を物色している生活に疲れたサラリーマンたちも汗だくになっていた。

「ところで、式神ちゃんたちは帰ってきましたか?」

 なんだ、式神ちゃんたちって、と言いながら、倫太郎が顔を上げたとき、ガラガラと入口の重いガラス戸を開け、斑目が入ってきた。

「おっ、酒に合う、良さそうなもの作ってるじゃないか」

 外までいい匂いがしてたぞ、と斑目は、ご機嫌だ。

 連れてきたおとなしい部下の人もいる。

 斑目は、ひょろりとした顔色の悪い部下の人の背を叩き、
「こいつ、最近、疲れてるから、ここに来たら元気になるかと思ってな」
と気の利いたことを言うが。

 斑目の背中への一撃でよろける部下の人を見ていると、斑目のバイタリティについていけずにフラフラなのでは? という気もしていた。

 毎度連れてくる部下の人、顔色悪いしな、と壱花は苦笑いする。


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