好きになるには理由があります ~支社長室に神が舞い降りました~

菱沼あゆ

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支社長室に神が舞い降りました

おみくじをひいてみました

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 深月は、清春に竹箒で突かれている陽太を見ていた。

「帰れか……。
 恋に破れたから、おみくじ引いて帰る」
と陽太が言い出した。

「破れたんですか?」
と思わず訊いてしまい、

「破れてないのか?」
と訊き返される。

 いやいやいや。
 帰れって言ったの、清ちゃんですからね、と思っていると、

「お前も引け」
と社務所にあるおみくじのところに連れていかれた。

「でもこれ、うちの神社のですよ」
と山積みのおみくじの載った三方さんぽうを見ながら深月が言うと、

「だからなんだ。
 商品を売る奴が使わないでどうする。

 自社製品に自信がないのか」
と陽太は言う。

 いや、作ったのうちじゃないんですけど、売ってるだけで……と思いはしたが。

 陽太の迫力に押され、結局、引くことにした。

「おごってやる」
と陽太が言い、深月の分もお金を入れてくれた。

 百円をポイ、と入れて、三方に置いてあるおみくじを一個取る、という非常に原始的なシステムのおみくじだ。

「性善説の上に成り立ってるよな、これ」
とむき出しのおみくじが載っている三方を見ながら言ったあとで陽太は、

「よし、一緒に取るぞ。
 せーのっ」
と言う。

 掛け声につられ、深月も同時に取った。

「見るなよ」
と言いながら、陽太はおみくじを手に後ずさる。

「なんでですか……」
と深月が言うと、陽太とは違うところから返事があった。

「恋愛運に都合の悪いことが書いてあったら、闇に葬る気だろ」

「何故わかる……」
と陽太が清春を振り向く。

「深月の前で開けるのなら、俺でもそうするからだ。
 見せろ」
と清春は陽太に向かい、手を差し出す。

 だが、陽太はおのれのおみくじは握り隠し、深月の方を向いた。

「嫌だ。
 深月、見せろ」

「そうだ、見せろ」
と清春も言い出す。

 二人そろって深月に向かい、手を差し出してきた。

 何故、こんなときだけ結託するっ、
と深月はおみくじを胸に抱いて隠そうとした。

 清春が、
「『恋愛 身近な相手にして良し』とか書いてないか?」
と言うと、陽太が、

「深月の、今、一番身近な男、俺だろ。
 お前より一緒にいる時間長いんだから」
と言い出す。

 いや、一番長いの、総務部の斜め前の席のおじさんですけど……、
と思いはしたが。

 もうめんどくさくなってきたので、二人の前で開けてみた。

「中吉」

「俺にこんなに愛されているのに、何故、大吉じゃない」
と不思議な文句をつけてくる陽太の横で、清春が、

「お前の件はともかく、大吉が一番いいとは限らないがな」
と言ってきた。

 陽太が横から覗き込み、読み上げ始める。

「失せ物 早く出る。

 引っ越し 急がぬ方がよし。

 結婚してもすぐには引っ越すなってことか?」

 ……誰と結婚するんだ?

「旅 友人に注意せよ」

 注意すべき友人が多すぎて、誰のことだかわからないんだが……。

 待ち合わせしたら、四時間遅刻してくるあいつか?

 それとも、酒を手に、右向いて左向いたら吐いていたあいつか?

「学問 勉学せよ」

「当たり前だろ」
と清春が自分のところのおみくじにケチをつける。

「恋愛 ……この人なら幸福になる」

「俺だっ!」
と二人がそろって言ってきた。

「……結んでくるねー」
と深月はおみくじを手に、おみくじ掛けのところに逃げる。

 陽太が追いかけてきた。

「何故、結びに行く、深月っ。
 いいおみくじは持って帰れっ」
と叫んでくるが。

 いやいやいや。
 なにやら、いろいろと面倒ごとが起こりそうですし。

 っていうか、貴方のおみくじはどうだったんですか、と思ったが。

 気がつくと、陽太は一緒に並んでおみくじを結んでいた。

 ……よくなかったんだな、とおみくじに向かって手を叩く陽太を見て、ちょっと笑った。



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