好きになるには理由があります ~支社長室に神が舞い降りました~

菱沼あゆ

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理由が必要か?

ドボドボ呑まされてますっ

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 焼き杉と黒い鉄で作られたアーチ状のドアに、船で使われていそうなランプ。

 ドア開ける前から騒がしいし。

 なにやら、海賊が酒盛りでもやってそうな雰囲気だ、と思いながら杵崎はドアを開けたが。

 いや、本当にそんな感じだった。

 これ、コンパなのか?
と問いたくなる大人数の会場はすでに大いに盛り上がっていて。

 一際大きな声で笑っているのは由紀だった。

 かなり出来上がっているようで、隣に座っている杵崎の気の弱い友人の肩をバンバン叩きながら、腹を抱えて笑っている。

 ……ありゃ今回も駄目だな、と杵崎は思った。

 自分は由紀の、酒が入ると、気取った見た目に反して、豪快なオッサンみたいになるところは嫌いではなかったのだが。

 一般の男には受けなさそうだな……と側に座らされている友人に同情しながら思う。

「杵崎さん、杵崎さん」

 そのとき、深月が自分を呼んだ。

 周囲を見回し、小声でヒソヒソと言ってくる。

 お兄さんにだけに、いい情報流しますぜ、とか言ってくる怪しい黒服かなにかのように。

「……実は、今日、本物の巫女さんが来ています」

 いや、お前は偽物なのか、と思ったが。

 どうやら、深月のようにOLと兼業ではない、大きな神社に就職している巫女さんが来ている、という意味らしい。

「でも、まず、純さんたちにご挨拶してからでないと角が立つので――」
と言い出すので、

「いやそれ、俺を連れてかないとお前が角が立つだけで、俺には関係ないよな」
と言ってやった。

 そのまま友人たちのところに行こうとすると、待って、待ってください~っと深月が腕をつかんでくる。

「どうか私の顔に免じて」

「いや、お前の顔に免じなければならないような義理はない」
とすげなく言い捨て、行こうとしたが、

 杵崎さん~っ、と深月は自分の腕を引っ張ってくる。

 せっかく諦めようと思っているのに、不用意に触れてくるなーっ、と杵崎は思っていた。

 ……いきなり、此処でキスしてやろうか。

 陽太は嫌われたくなくて、積極的に出られなくなっているようだが。

 俺は最初から捨て身だから、なんでもできるんだそ、一宮、と思ったとき、深月が、あ、と言って手を離した。

 スマホが鳴っているようだ。

 薄暗い照明の中、深月がそれを手に取ると、周りが騒ぎ始める。

「えーっ?
 また支社長ーっ?」

「もうっ、支社長うるさいっ。
 かわりなさいっ、私が文句言ってやるからっ」

 取らずに切ってやれーっ、と酔った弾みか、由紀たちが口々に恐ろしいことを叫んでいる。

 それにしても、この二人、もう関係があるのかと思っていたが、違うのだろうか、と杵崎は思う。

 陽太のこの余裕のなさ。

 まだ一宮になにもしてないに違いない。

 ……まあ、諦める俺には関係のないことなんだが、と思うその手をぎゅっと深月が握ってきた。

「はい、杵崎さん。
 巫女さんはこちらですー」

 純さん経由、巫女さん終点です~と言いながら、騒がしい人波の中、自分を引っ張って行こうとする。

「……お前、そうは見えないが、酔ってるな」

「酔ってないです~。
 酔いそうになったら、支社長の電話で酔いを覚まされてます~。

 でも、なんだかわからないですけど。

 みんながドボドボお酒ついで来るんですよ~」
と言うので、

「金子たちか?」
と可愛らしい人買いのような深月に連れて行かれながら言うと、

「あっちの人たちです~」
と深月は、気弱ではない自分の友人たちを指差した。

「……よし、俺が後でシメといてやる」
とそっちを見ながら友人たちに聞こえるように言うと、みんな苦笑いして、よそを向いていた。



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