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……帰って来てしまいました
お前、年寄りを敬おうという気はないのか
しおりを挟む「おーい、未悠。
例の剣……」
ふと思いついたことがあり、新たに未悠の部屋となっていた大きな王子妃の部屋の扉をノックしかけたシリオは、未悠がもう居ないことを思い出した。
……あのボケはいつになったら、帰ってくるんだ。
このまま帰ってこなかったら、あの鬱陶しい状態になった王子をどうしたらいいんだ。
ようやく、自分が真実、王の子であると知って、晴れやかな気分になる間もなく、未悠に消えられ、アドルフは最早、その存在自体が鬱陶しい状態に成り果てていた。
未悠、帰ってきて、責任を取れ、と思っていると、向こうから、タモンが歩いてきた。
相変わらず、女性の使用人が無駄に彼の世話を焼きたがり、つきまとっている。
「お前もだっ」
といきなり、タモンに向かい言うと、ひっ、と怯えたその若い娘は、申し訳ございませんっ、と頭を下げて、行ってしまった。
いや、お前を怒ったわけじゃなかったんだが……と思ったが、その娘が去ってくれたので、シリオはタモンに詰め寄る。
「お前が未悠を未悠の世界に送り返したんだろう。
なんとか呼び戻せないのか。
何百年も生きているくせに、この役立たずっ」
「……お前は年寄りをうやまおうという気はないのか」
と言ってくるタモンに、年寄りらしく、老けて、若い娘にモテなくなってからそのセリフを言ってくれ、と思った。
だが、一応、年長者であるということは思い出したので、軽く咳払いし、口調を変えて言う。
「早く未悠を呼び戻してください。
未悠が居ないとなんだか城の中が落ち着かない感じではないですか」
すると、タモンは周囲を見回し、
「ある意味、落ち着いているような気がするんだが……」
と言ってきた。
ま、まあ、確かに……と思っていると、タモンは、
「だが、まあ、悪かったな。
王子も落ち込んでいるようだが、お前も落ち込んでいるようだからな」
と言ってきた。
「私がですか?
私はなにも落ち込んでませんが?」
と言ったのだが、
「そうか?
未悠が居なくて、退屈そうだぞ」
と笑って言われ、どきりとしてしまう。
「ま、まあ、騒ぎを起こす人間が居ませんと暇ですからね」
と慌てて言ったが、タモンは、
「アドルフ王子じゃなくて、お前が未悠が居なくて、寂しいんだろう?
お前、未悠が好きなんじゃないか?」
と言ってきた。
「そんな莫迦な……」
と鼻で笑おうとしたが、畳みかけるように言われる。
「そもそも、未悠を此処に連れてきたのは、お前なんだろ?
ということは、お前が未悠を見て、これはいいと思ったんだろうが」
いや待て。
それで、未悠を王子に捧げるとかおかしくないか? と思ったのだが、何百年も生きている人間にそう言われると、そうかなーと暗示にかかりそうになる。
まあ、幾ら寿命だけ長くとも、ただ寝ていただけでは、なんの人生の経験値も上がらないので、人を見る目ができているということもなさそうだが、と思いながらも、どきりとしていた。
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