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消えずの火と第一の殺人
ツギ ハ オマエダ
しおりを挟む上で騒ぎが起きているようだ。
ニートはやけに人が集まっているように見える山頂を見上げる。
「ニート」
と声がして振り向くと、倖田眞人が立っていた。
マグマと同じく、幼なじみの倖田は、今では立派な県会議員様だ。
だが、その性格は、眞人という名をみんなが、
「魔神」
と呼んでいたことからもわかるように、
……まあ、ほんとにそんな感じの性格だ。
パリッとしたスーツを着こなす倖田は手を眩しげに目の上にかざし、山頂を見上げる。
「山頂で刺された人間が見つかったそうだ」
「えっ?」
精悍な若手政治家の面影もなく、ちっ、と舌打ちした倖田は言う。
「何故、神の山で殺人なんか」
「死んでるのか?」
刺されただけの可能性もあると思い、ニートが訊いてみると、倖田は、
「まだ死んでない。
死なせない。
神の島の威信にかけてっ」
と言い出す。
それだと治すの医者じゃなくて、神様では……と思ったが、倖田はスマホで、ドクターヘリはもう飛んだのかと訊いていた。
「ところで、なんでお前、此処に居るんだ」
上に行かなくていいのかとニートが問うと、
「上、携帯通じにくいんだ。
それにしても、今日やらなくてもな」
と倖田は忌々しげに言う。
「絶対、橋開通より、事件のニュースの方が大きくなるじゃないか。
せっかく市長じゃなく、なんか見栄えのいい観光客を渡らせたのに」
「……お前の差し金か」
「見たか? あの女。
不吉なまでに綺麗だろ」
と倖田は笑っている。
「不吉だと思ってるのなら、島に呼び込むなよ」
「お、ヘリが来たな」
大きな音ともに、頭上をドクターヘリが飛んでいく。
山の斜面に生えている木々がヘリが巻き起こした風に激しく揺れる。
「よし、そろそろ行くか」
と倖田がスマホをしまったとき、それは空から舞い落ちてきた。
白いコピー用紙のようだった。
なんだ? と倖田は指でつまんで、それを受け止める。
筆跡がわからないようにか、ピンクのマジックで書き殴ってあった。
「ツギ ハ オマエダ」
「なんだ?
なにが『次はお前だ』なんだ?」
「普通、そういうのっても殺害予告とかじゃないか?」
そうニートが言うと、倖田は黙って、それを見つめたあとで、おもむろにニートの懐に突っ込もうとする。
「待てこら、ぐしゃぐしゃにするなっ。
っていうか、俺に渡すなっ」
「いや、俺だって、空から舞い落ちてきたのを受け止めただけなんだからなっ」
と叫ぶ倖田と二人で揉める。
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