神の住まう島の殺人 ~マグマとニート~

菱沼あゆ

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白地図と最後の事件

そんな機会はきっとない

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 マグマたちが若い檀家さんのリストアップをしてくれている間、茉守はニートの枯山水を眺めていた。

 しばらくして、
「おい、できたぞ」
とニートがプリントアウトしたものを手にやってくる。

 側に立ち言った。

「なにやってんだ?」

「いえ、あのところどころ置いてある大きな石は、鑑賞する以外、なんの役に立つのかなと思って」

「……むしろ、眺める以外、なんの役に立つ可能性があるんだ?」

「ニートさんがせっかく作られた砂紋を踏まないよう、八艘はっそう飛びするためとか。

 八艘飛びの練習をするためとか」

「……人生の何処で、八艘飛びする機会があるんだよ」

 たぶん、お前でもないぞ、と言われる。

 

「よし、こいつが明日バイトしに帰るというから。
 急いで手分けしてやるぞ」

 山頂でマグマはそう言った。

「リストアップしてみたところ、やはり、たいした人数は居なかった。
 一人につき、三人ずつだ。

 少し脅しをかけつつ、じっくり訊き出せ。
 場合によっては悪人を演じても構わん」

 俺たちには警察がついているっ、とマグマは、

「待てっ。
 ついてないぞっ」
と佐古や庄田に叫ばれそうなことを言う。

「質問のあるものっ」
と軍隊の上官風に言ったマグマの言葉に、

「はいっ」
とかき氷屋が手を挙げる。

「あの~、なんで僕も聞き込みの人数に組み込まれてるんでしょう?」

「早くに解決するためです、かき氷屋さん」
と茉守が言い、

「早くに解決するためだ、かき氷屋」
とマグマが言う。

 この二人には逆らえないかき氷屋は、……はい、とおとなしく従った。

 

「まず、敵(?)に会ったらこう言え。

『寺のプリンターが犯罪に使われていたことがわかりました。
 プリンターに残っている使用履歴を調べています。

 あなたのスマホを確認させてもらませんか』と」

 やましくなかったら、すぐに見せるだろ、とマグマは言うが、かき氷屋が、
「スマホに別のやましいなにかの履歴があったら、見せないかもしれませんよ。
 特に茉守さんには」
と苦笑いして言う。

「その場合は、俺たちを呼べ」
とマグマが言うので、茉守はなんだかわからないまま、

「わかりました」
と言った。

「それから、『あのプリンター、使用履歴は残らないはずですが』とか言い出したら、そいつは怪しいから、俺に連絡しろ」

 はい、と二人は頷く。

 山頂で解散したあと。

 かき氷屋は夕日に照らし出された、もう閉店している売店を見ながら、ちょっと笑って、茉守に言う。

「こんなこと言ってはいけないとは思うんですが。
 なんかちょっぴり楽しいですね」

「それはよかったです」

 無表情に茉守は言った。

 そして、自分が無表情なので、怖がられるかな、と思ったが。

 かき氷屋はまるでなにかが伝わっているかのように、茉守と目を合わせ、ふふふ、と笑う。


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