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白地図と最後の事件
これで事件は解決でしょうか?
しおりを挟む役所の男が刺された男と出会ったという場所も書き込んでいると、帆村が、
「つまりは、どういうことだったんですかね?」
と訊いてきた。
「何故、毒の入った瓶を刺された人が?」
佐古が、
「刺された男が瓶を探していたということは、あの男が署長を毒殺して、プチプチで巻いた男だったってことだろう」
と言うと、帆村が、
「じゃあ、なんで、その署長を毒殺した方が刺されてたんですかね?」
とまた訊く。
「……その刺された男に署長が殺されるところを見た誰かが、署長の仇っ、と成敗……
まあしねえよな」
あの人、人望なかったもんな、と近くに居た庄田が口を挟んできた。
「いや、わかりませんよ。
どんな人にだって、いいところも悪いところもありますからね。
署長さんだって、家ではマイホームパパかも」
そう言った茉守に庄田が言う。
「飲み屋の女と出来て、奥さんも子どもも家出てってるよ。
まああれかな。
刺されてた奴は、誰かに署長を殺すところを見られて、襲いかかったけど、やり返されただけなのかもな」
佐古がそこで反論する。
「でも、役所の男が見たときには、もう署長をやったあとだったんでしょうが、その時点では刺されてなかったわけですよね?
あいつも、あの男を刺したりはしてないと言ってるし」
「とりあえず、刺された人の身元は、署長に恨みを持っている人を当たっていけばわかるかもしれませんね」
そうちょっとホッとしたように言った帆村に佐古が言う。
「わかるか? すぐに。
マグマ筆頭に大量に居るだろ、そんな奴」
だが、まあ、いつかはわかるだろう――。
そんな空気が刑事課に流れた。
「じゃあ、これで事件は解決ですね」
と言った茉守に、
「待て」
と佐古が言う。
「それで、刺された男の身元がわかるとしても。
刺した人間が誰なのかは、まだわからないままだろ。
このまま意識戻らねえかもしれねえし」
そこで、誰かがデスクの並んでいる方から叫んだ。
「おい、マグマッ。
まだお前の荷物残ってるぞ、持ってけっ」
「あっ、お前ら、俺のデスク物置にすんなよっ」
もうお前のじゃねえだろっ、と他の刑事とマグマが物を投げ合い、揉めている中、茉守はまたあの白地図に書き込もうとした。
「あ、まだメモとってらっしゃるんですか?」
と相田が話しかけてくる。
事件の最初の頃に茉守のメモを見せて欲しいと言ってきた若い刑事だ。
帆村よりは、ちょっとシュッとした感じだが。
その刑事と帆村が二人で並ぶとアイドルユニットのように見える。
「はい。
ああでも、これは地図の方なんですけど」
「体温で消えるフリクションペンで書くなよ」
と言うマグマに、
「でも、これだと、何かあったときに、ぱっと手で文字を押さえると、すぐに消えますよ」
と言う。
いや、なんの秘密があるの、その地図に、という顔をみんながし、マグマが、やっぱり秘密道具じゃねーか、それ、という顔をした。
庄田が立ち上がり、こちらに来る。
「面白いな、それ」
そのとき、佐古が茉守に言った。
「おいお前。
それ、今夜一晩、庄田さんに貸してやってくれないか?
同じの量産してくれるかもしれないぞ」
いいですよ、と茉守は素直に庄田にペンを渡した。
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