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懐かしい人たち
生物室
しおりを挟む「待て、こら。
何処に向かってるんだ」
廊下を歩いていた七月は、三橋に制服の襟を引っ張られた。
「え……
七竈に」
「ぜんっぜん違うところに出てないか!?」
いや、まあ、そうなんだけど。
「私のせいじゃないじゃない」
階段を下りていっているはずなのに、何故か階数が上がっていっている。
手すりの隙間から、いつまでも下の階が見える上に、増えていた。
「いやあ、矢部さんの迷う気持ちが現れてんじゃない?」
「またそんなこと言って――
っていうか、迷わないわけないし。
――あれ?
こんなところに生物室が」
通常の配置と違うところに生物室と書かれた部屋があった。
「ちょうどいい。
行ってみようぜ」
と三橋は早速手をかける。
「いや、待って待って。
私に迷うなとか言っておいて、脱線?」
「脱線した方がお前の気分転換になって、早道かもしれないだろ」
ほんとか?
単に見たいだけでは、と思いながらも、もう戸を開けてしまった三橋に付いて入った。
ふいにスマホが鳴る。
「はい」
と握っていたそれを耳に当てながら、あの生物室独特の匂いの中、教室を見回す。
それぞれの机にある水道の蛇口が月明かりに光って見えた。
『何処に居るんだ?』
槻田の声だった。
「いや、そこに行こうと思ったんだけど、迷っちゃって。
今、生物室」
沈黙があった。
何処をどう迷ったら、生物室に辿り着くんだと思ったのだろうか。
「三橋くんが白骨死体を見たいって言うから」
「人体骨格標本だろ!?」
と既に準備室の前まで来ていた三橋が振り返って怒鳴る。
「それなんだけどさ。
人体骨格模型じゃないの?
どっちかと言えば。
骨格標本って言っちゃったら、標本だから、本物の骨ってことになるんじゃない?」
「だから、本物の骨なんじゃないかっつってんだろ?」
と自棄気味に言った三橋はドアを開け、閉めた。
「どうしたの?」
ノブを握ったまま、
「……いや」
と小さく呟く。
『どうかしたのか?』
繋がったままの携帯から槻田の声がしていた。
「……なんか見えた?」
この上なく厭そうに三村が訊く。
「なんか……気のせいだ。
気のせいが見えた」
いや、言ってる意味がわからないし。
このまま引き帰そうとか言われたら、気になって眠れない。
七月は三橋の手の上からノブに手をかけた。
「あっ、おいっ!」
ドアを開けると、そこで人が踊っていた。
「……」
無言のまま閉める。
「どうしたの?
何が見えたの?」
三村の問いに、三橋と同じことをしてしまった、と思いながら、彼の手を掴んだまま見上げる。
「自分で見といて、そんな顔するなよ!」
と悲鳴を上げられた。
いや、恨みがましく見たわけではないのだが。
どうしよう、と思っただけだ。
『おい。
何が起こってるんだ?』
「あの――
人が踊ってるんだけど」
『人体模型か?』
「違う。
……燃えている人」
思い返したくなくて、そこで言葉を止めた。
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