七竈

菱沼あゆ

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懐かしい人たち

ここはどうにも落ち着かない

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 なんだろう。
 落ち着かない気分になってきた。

 三村は辺りを見回す。

 ざわざわと背中が総毛立つ感じ。

「どうした?」

 こちらの様子に気づいたらしい三橋が問うてくる。

「いや――

 何か居るよね?」

「……そこ此処にいっぱい居るじゃねえか」

 投げやりな口調で三橋は答える。

 そりゃそうだ。

 よく考えれば、誰も彼も霊だった。

 東も佐竹も、槻田英嗣も――。

「もしかして、僕もお前も霊なんじゃ――?」

 自らの存在に対しても懐疑的になってしまい、思わずそう呟いたが、

「なんだ、そのありがちなオチは」
と三橋に一蹴されてしまった。

 いつも自信満々で強気な三橋は、己れの存在を疑うなどということはしそうにもない。

 時に鬱陶しいこともある、その根拠のない自信がこんなときはありがたい。

 うっかり、頼りになる、などと思ってしまった。

 そのままの勢いで、東たちの向こう、生物室の入り口を見る。

 すりガラスの窓がはまっているが、その向こうに誰かが立っていた。

 淋しげな人影。

 俯きがちな女のようだ。

 此処に生きた人間が自分たちの他に居るとも思えないから、もちろん、それも死んだ人間なのだろう。

 三橋が自分の視線を追って言う。

「あれは、珍しくお前に気がある風なOL様じゃないか?」

「何くだんないこと言ってるんだよ、そんなんじゃないよ」

 っていうか、珍しくってひどくない?
と言いながら、

 確かにあの霊からは、悪意的なものは感じないんだよな、と思っていた。

 では、この押し寄せるような厭な感じは何処から?
と彼女の影の向こうを窺う。

 七月たちは何か深刻そうな話をしており、時子たちは、記憶がないらしい東をいろいろ質問攻めにしていた。

 自分で確かめるしかないか、と思い、戸口に近づく。

 身構えるように腰を低くし、取っ手に手をかけた。

 頭上の窓からOLの影を感じながら、引き開ける。

 すると、影としては見えていた彼女の姿はそこにはなかった。

 しんとした夜の廊下だけがそこにあった。

 だが、やはり何か感じる。

 ホラー映画なら、此処でチャンネルを切るか、何か飲みに行くふりをして席を立つところだな、と思ったとき、その気配の源を察した。

 すぐ近くの階段だ。

 ちらと目の端に見えた。

 肉は付いているのに、何故か干からびているように見える手。

 手首から先が突然、ふっと壁の向こうから現れた。

 ぺたりと冷たい廊下の上にそれが置かれる。



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