七竈

菱沼あゆ

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神隠し

ラーメン屋を探してみよう

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「これはちょっと私は脂が強過ぎるかなあ。
 どうですか?」
と七月は横に正座して座る霊を振り返る。

 霊は鼻をくんかくんかと動かし、
「匂いは結構いけてるけどな」
と言った。

 駅前の屋台は準備中で、結局、弥生が力説する、濃くて美味しいラーメン屋に立ち寄っていたのだが。

「そもそもお前っ。
 此処、大手のチェーン店じゃねえか」

 しっかり食べながら、みんなで座る座敷で三橋が文句を言う。

「チェーン店だって、美味しいとこいっぱいあるのよ。
 だいたい、美味しくなきゃ、あちこちに出来るわけないじゃない」

「単に入りやすいから、客が来るんだろ?

 ファミレスと一緒だよ。
 ファミレスで、うまいものに当たった試しがない」

 写真で見ると、うまそうなのに、と愚痴る三橋は、
「でも、三橋、ドリンクバー好きだよね」
と霊の隣に座る三村に言われ、睨んでいた。

「そもそも、なんで、お前がその位置だ」

「いや、単に、霊の人を矢部さんと挟んでるだけなんだけど……」
と三村は苦笑いしている。

「あんたたち」
と水を飲んだ弥生が、コップをテーブルに叩き付けながら、口を挟んだ。

「今、座り順の話じゃないし。
 ファミレスの話でもないわよ」

 その言葉に三村が、
「でもあの。
 そもそもラーメン屋の話でもなかった気がするんだよね」
と言う。

 みんな、心の何処かにラーメンを食べたい気持ちがあったので。

 居酒屋を調べる前に、こっちに来てしまったのだろう。

「ラーメンって」
と器を置きながら沙智が言う。

「話題に出ただけで食べたくなるわよね」

 三橋は、
「テレビで見ると食べたくなるのは、すき焼きだかな」
とその話題に乗っていた。

「まあ、お腹も満たされたことだし」
と三村がまとめに入る。

「僕らだけじゃ、居酒屋に入れないけど。

 この霊の人を連れて、店の前に行ってみるだけで、効果あるんじゃないかと思うんだ。

 それぞれの店、入り口から、派手で特徴あるしね」

 幸い、駅前に、299円や399円の居酒屋が並んでいる。

「なんで、駅前に多いのかしらね?」
という弥生に、三橋が、

「車じゃ来れねえからだろ」
と言う。

「でも、駐車場がある居酒屋さん、結構あるよね。
 うちは母親が呑まないで運転してるよ」
という三村の言葉を聞きながら、槻田を思い出していた。

 槻田が居たら、店に入れないこともないのだが。

 まあ、どのみち制服ではな、と思う。

 さっきの廊下。
 槻田先生の気配を感じた。

 姿は見えなかったけど……。

 そんなことを考えている間に、もうみんなは靴を履いて、座敷を下りていた。

「矢部さん、行くよ」
と三村が声をかけてくる。



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