七竈

菱沼あゆ

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神隠し

あれは何処だ

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「ナナツキちゃん、なに見てるの?」
と言う久美の呼びかけに、

 ああ、ナナツキで定着しつつある、と思ったが、こんな場所に引っ張り込まれてパニックになっている久美にいろいろ言っても悪いので、黙っていた。

「いえ。
 あそこに何か居る、と思いまして」

 七月は校舎の下を指差す。

 窓から見えるそこで、何かが蠢いているのがわかる。

「人間?」
と久美は訊いてきた。

 が、残念ながら、それはない。

 七月は冷えた窓ガラスに手をやり、真下を覗きながら、

「いえ。
 これだけ暗くて距離があるのに、はっきり見えているから、生きた人間ではないと思います」
と答えた。

「そう……」
と言う久美は残念そうだが、こんな場所では、人間が居る方が大問題だ。

 久美のように、自分たちが仕掛けた空間の歪みに、うっかり呑み込まれただけの無害な人間ならいいが――。

 横に立って、同じように見下ろしている三村が言う。

「生きてても死んでてもいいんだけど。
 あれ、トイレの人、殺した犯人じゃないよね?」

 そう問題はそこだ。

 凶悪な人間も、凶悪な霊も、どちらもご免被りたい。

 トイレの霊は見下ろしたまま、何も言わない。

 それが自分を殺した人間なのかどうか。

 自分でもわからないのかもしれない。

「……私、行ってみるわ」
と七月が言うと、

 えっ!?
と全員が声を上げる。

「あの霊、あの場所に居るのがどうも気になるの」

 後ろから覗いた校長が言った。

「焼却炉ですね」
と眉をひそめる。

『……こ……

 ……こ。

 しょうこ しょうこ しょうこ しょうこ

 しょうこ しょうこ しょうこ。

 あれは何処だ――

 矢部……

 しょうきゃ』

 あのとき、林葉は自分たちに何かを伝えようとしていた。

 『焼却炉』だと思ったのだが。

 槻田とともに焼却炉を調べてみたが、何も出ては来なかった。

「ちょっと行ってみます」

 そう言い、七月はあの人影が消える前にと、すぐ近くにある階段に向かった。

「待てっ、ナナツキッ!」
「待って、ナナツキちゃんっ!」

 背後から慌てて追いかけて来る足音がする。

 何故、全員付いてくる……と思いながらも、七月は振り返らずに叫んだ。

「安西先生っ、校長と残ってください!」

「ええっ!? なんでっ!?」

 なんでってな……。

 あの人影、もしかしたら――

 だったら、安西先生は行かない方がいいと思った。

 振り返り、まだ上の階段に居る彼女に言った。

「行ったら、きっと恐ろしい思いしますよっ。
 校長と此処に居てくださいっ!」

「いやっ。
 だって、ナナツキちゃんと居るのが安全な気がするんだもんっ」
と叫び返して来た久美に、すぐ後ろを走っていた三村が、

「すごく勘のいい人だね。
 生存本能が強い。

 生き残るタイプだね」
と笑っていた。



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