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ラジヲ
順番抜かしちゃ駄目かな
しおりを挟むさっさと寝室に消えて行く七月を槻田は見送っていた。
「おはよう」
と前から声がかかる。
コタツに座っている英嗣が自分に向かい、言ったようだった。
「逢えた?」
と訊いてくる。
「例の生霊か死霊にか?
いや――」
出ては来なかった、というか、最早、そちらに意識が向いてなかったというか。
「だったら、あれ、やっぱり、カヅキさんなのかな?
僕の夢に出てたからね」
とコタツの天板を見ながら、英嗣は呟く。
「あのさあ、聞いてる?
聞いてないよね? 僕の話」
視線が事あるごとに七月の消えた方に向かうのを咎《とが》めているようだった。
「じゃあもう、行ってきなよ~」
と言いながら、めんどくさそうにコタツの中に半身を消す。
「もうさっさとどうにかなっちゃって。
僕さ、やっぱり死ぬんじゃなかったかなとか最近思っちゃってるんだけど。
生まれ変わるんなら、七月ちゃんから生まれてみたいからさ。
さっさと子ども作ってよ」
と言う。
後半にはいろいろ言いたいところのことがあるが、英嗣の口からはっきりと、死ぬんじゃなかったという言葉が出たことには驚いた。
嬉しいような、切ないような。
幾ら後悔しても、もう時間は戻らないから。
まあ、それはそれとして――
「……今作っても、まったく成仏しそうにないお前が、すぐに、するっと魂を移せるとも思えないが」
と横目に見ながら訊く。
「そうだねえ」
と起き上がって来た英嗣は、今にもコタツでミカンをむき出しそうな呑気さで、背中を丸めて座る。
「そもそも、どうやって転生したらいいのかなあ?
よくわからないんだけど」
だから、まず、あの世に行かないといけないんじゃないかと思ったが、自分にもよくわからない。
だって、自分がいつも遭遇するのは、まだあの世に行けてもいない人々だから。
彼らもどうやったら転生できるかなんて、知りはしないだろう。
「そういえば、カヅキさんもまだ成仏出来てないしね。
順番抜かしちゃ駄目かな」
そういうものでもないだろうが……。
カヅキに関しては、まず、呪いを解かなければ無理だろうし。
彼女が呪いをかけているというより、彼女自身が七竃の呪いに縛られている気がするから。
ふいにひよりの顔が頭に浮かんだ。
七竃から連想したようだ。
彼女はラジオで何を話そうとしているのだろう。
ふと気づけば、英嗣はまた寝たふりをしており――
少し迷って、七月の居る寝室のドアをノックした。
ちょっと間を置いて、
「はい?」
と返事がある。
「鳴った? レンジ」
という七月の声を聞きながら、ドアを開けた。
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