七竈

菱沼あゆ

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ラジヲ

生放送当日

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 ひよりがゲストに呼ばれたラジオの生放送当日。

 落ち着かない気持ちでこの数日を過ごしていた百花だったが、結局、知り合いのスタッフに頼んで見学させてもらうことにした。

 ひよりを探し、ラジオ局の廊下を歩く。

 あっちに居るよ、と言われ、雑誌のたくさん置かれたアナウンス室横の控え室を覗いてみたのだが、そこにひよりの姿はなかった。

「あっ、百花っ」

 見ると、反対側の入り口に、雑誌を手にした小柄な女が立っていた。

 スタッフのような軽装だ。

 大学のとき、同じマスコミ志望の人たちが集うサークルに居た友人だった。

「久しぶり!
 あれっ?

 此処の局だったっけ?」

「ううん。
 バイトバイト」

 本業は主婦だと言う。

 子どもが保育園に行っている間、昔のツテで子会社にバイトに入っているのだと言う。

「うは。
 保育園……」

 知らない間に時間は流れているもんだな、と妙なところで実感していると、

 彼女はそこで何故か少し声を落とし、

「ねえ、今日、ひよりが来てるでしょ」
と言い出した。

「そう。
 ひよりの見学に来たのよ。

 ひよりは何処?」
と訊くと、彼女は戻しに来たらしい雑誌を手にしたまま、眉根を寄せる。

「ねえ、ひより、ちょっとおかしくない?」

 そう言われて、どきりとした。

「ぱっと見、いつものテンションなんだけどさ。
 減らず口も相変わらずだし」

 彼女は振り返り、アナウンスのデスクを見ながら、

「さっきまで、清水部長と話してたんだけどね」
と自分たちが子どもの頃から居る看板アナの名前を出す。

 今、そこには清水の姿もひよりの姿もない。

「なんだか様子がおかしい気がして。

 話してても上の空っていうか」

 あまり座っていることがないせいか、雑然としたデスクの多いアナウンス室を見ながら、そこにひよりの残像を探す。

 そういえば、七月ちゃんは、ちゃんと今日の放送のこと覚えているだろうか。

 最近忙しくて、弟とあまり顔を合わせていないので、確認する暇もなかった。

 そういえば、なんだかわからない居酒屋捜しも難航したままみたいだったしな。

 落ち着いたら、また手伝ってやろう。

 そう思った瞬間、厭な感じがした。

 こうして、日常生活の忙しさにかまけて、延ばし延ばしにしているうちに、何もかもが間に合わなくなるのではないか。

 ふと、そんなことを思いついたのだ。

 理由のはっきりしない不安ほど不気味なものはない。

 自分は勘など、そう働く方ではないから、実際に見聞きしたものや、誰かの言動の中に、そう思わせる何かがあったはずなのだが、思い出せない。

 ますます落ち着かない気持ちになりながら、百花は友人と別れ、またひよりを探し出した。





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