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それ、事件じゃないんですかっ!?
体育祭が混沌としてきました
しおりを挟む「誰、誰っ、あの人っ。
あんたのお兄さんっ?」
体育祭が始まってすぐ、夏巳は上級生女子から詰め寄られていた。
桂が夏巳の家のタープテントに居るからだ。
いや……私のお兄さん、何処から湧いてきましたか、と思いながら、夏巳は、
「あの人は、最近、萩に来られた探偵さんです。
うちのお父さんとちょっと知り合いで」
と父が刑事なことを使い、上手く言い訳をする。
桂に助けられ、なりゆきで事務所でバイトをしているなどと、もらそうものなら、大変なことになりそうな気がしたからだ。
ついでに桂の助けになればと彼の窮状も少し知らせてみる。
すると、次の瞬間、上級生女子たちは、すぐに夏巳の家のテントに行き、
「探偵さん、事件探してるんですか?」
と訊いていた。
普段は怖い、ガッチリ体型のバレー部のキャプテン、佐川が、その怖さを微塵も感じさせない顔で微笑んでいるのが見えた。
いや、違う意味で怖いんだが……と夏巳が思っていると、桂が言う。
「ああ、なにかいい事件はないかな」
先生、その訊き方、おかしいです、と思ったとき、佐川が言った。
「先生、うちの犬、逃しますよ」
「なに言ってんですかっ、先輩っ。
うちのサンタを逃すことになってるんですよっ」
と桂にベタ惚れの夏巳の友人、祥華がそこに割って入る。
サンタ。
そして、名前も知らない佐川先輩の犬、可哀想に……と夏巳が思ったとき、集団の少し後ろに立っていた夏巳に気づいた桂が、
「頑張って走れよ、夏巳。
お父さんたちと見てるから」
と素敵な笑顔で言ってくる。
きゃーっ、と悲鳴が上がった。
「夏巳っ、ずるいっ」
「覚えてらっしゃいっ、シゴいてやるからっ」
と佐川も言い出す。
いや、先輩。
私、バレー部じゃありません……。
シゴかれるためだけにバレー部に入れられそうな気配を感じ、夏巳は、すたこら逃げてみた。
しかし、女子に人気なのは予想はついていたが。
何故か男子も桂にメロメロのようだった。
「俺っ、あんな男になりたいっ」
とイガ栗頭の少年が言う。
いや、いろんな意味で無理なんでは……。
っていうか、顔以外はあんまり目標にしない方がいい人なんだが、と思いながら、桂に応援されたので頑張って走ってみたが、徒競走は四位だった。
後ろから二番目だ。
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