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それ、事件じゃないんですかっ!?
校長は見てしまった……
しおりを挟む桂は顎に手をやり、側溝の辺りをウロウロ歩き回り始める。
その顔つきだけ見れば、立派な名探偵のようだ。
「夏巳、これは事件じゃないかな?」
……だから、違うと思います。
「この撒き散らされた書類と鍵束。
この中に犯人にとっては重要なものがあって。
それが人目に触れる前に隠滅しようとしたんじゃないのか?」
「えーと。
突き飛ばされたのって、校長先生じゃなくて、蒲生先生ですよね?」
と夏巳が言うと、桂は足を止め、こちらを見る。
「いや、たぶん、俺を突き飛ばしたように見せかけただけなんだ。
犯人は、たまたま校長の近くに居た俺を突き飛ばし、校長に体当たりさせ、重要書類を始末しようとしたか。
鍵を手に入れようとしたんだ。
つまり、これは――
綿密に練られ、周到に用意された計画的な殺人だったんだっ!」
……校長、死んでません。
そして、その場に居た貴方を突き飛ばしたってところからすでに。
なにも綿密でないし、計画的でもないです。
桂はその場にしゃがみ、プリントを集め始める。
みんなも手伝った。
「大丈夫ですか? 校長。
この中に、消えている重要書類はないか、確認してください」
と桂に言われ、
「い、いや、特に重要書類なんて。
これは今日のテントの配置図のコピ……」
コピーの束、と言い終わる前に、校長は桂の目を見てしまったようだ。
強い真昼の光にいつもより茶色く輝いて見える知的な桂の瞳。
校長は彼の誠意に応えねばと思ってしまったようだ。
「そ、そういえば、コピーだけじゃなくて、配置図の原本もその中に」
いや、原本だからなんなんですか……。
「そうなんですかっ。
それはいけない。
探さなければっ」
「いや……、今日の体育祭終わったら、もういらないと思いますね~」
と呟きながらも夏巳も、撒かれた配置図のコピーを拾うのを手伝う。
「あっ、それと、校長室や職員室の鍵も持ってました」
と校長先生が言い出す。
「何処ですかっ」
「あそこですっ」
と校長は力強く、側溝の向こう、フェンスとの境の草はらを指差した。
そこに、例の鍵の束が落ちている。
「これですかっ」
「それですっ」
いや、あるんなら、解決じゃないですか、と夏巳が思ったとき、すぐ近くに居たイガ栗頭の男子生徒が叫んだ。
「先生っ」
この『先生』って、学校の先生じゃなくて、蒲生さん呼んでるんだろうな……。
先生というほどの実績はない気がするんだが、と思う夏巳の前で、膝をつき、側溝の中を覗き込んで、イガ栗くんが言う。
「この中にブロックみたいな大きな石があるんですが、その向こうに、一枚落ちているみたいですっ」
「なにっ?
もしや、それが原本じゃないのか?」
と言った桂の言葉に、みんな、わらわらとそこに集まる。
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