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犯人(?)の告白
ほら、ごらんの通り
しおりを挟む「殺人犯ではありません」
高校二年だというその青年、吉野英春は、みんなにとり囲まれ、少し項垂れて、告白をはじめた。
「僕がやったのは、ただの器物損壊です」
「器物損壊も『ただの』じゃないだろう」
とちょっと叱るように将生が言う。
「僕が選ばれなかった校内の美術大会。
超ムカつく奴が大賞とったんで、傘でバリッと……
やりかけてやめたんだけど、傷がついてしまって。
ああもう、僕はとり返しのつかないことをしてしまった犯罪者なんだと自暴自棄になりました」
しょんぼりと英春は言う。
「学校で犯人探しが始まったんで、何処かの店に傘を置いて逃げようと思ったんですが。
そこのスーパーに同じ傘があったので、……その、つい、すり替えてしまって」
「そうなんですか。
そんなことが。
いろいろ大変でしたね」
と琳は言ったが、将生は容赦無く言う。
「大変もなにも全部こいつが自分が蒔いた種だろう」
「でも、ムカつく人が大賞とかとったりするんですね。
絵に現れたりとかしないんですかね? 性格とか」
「まあ、ムカつく絵が芸術だと思う人も居るでしょうしね」
と実は美術部だったという椋木が頷き、何故か絵の話になったので、琳はついていけず、とりあえず、英春が外に隠しているという傘を取りに行く。
少し濡れているその青い傘を手に琳は英春に確認した。
「これがあなたが持ち去っていた私の傘ですね」
「問題の仕込み刀の傘か」
将生がそう言いながら傘をとり、持ち手を外そうとしたので、琳は慌ててとり返すと、自らの手で外してみせた。
持ち手から短剣が現れ、おおっ、とみんながどよめき、覗き込む。
龍哉たちが居たら、目を輝かせていたろうな、と思いながら、琳はその先端に指先を当ててみせる。
いてっ、と思いながらも顔には出さずに微笑んだ。
「ね? すぐ引っ込むニセモノなんですよ」
「……何処も引っ込んでないし。
なにもニセモノじゃないようなんだが。
絆創膏持ってこい」
血が出てるぞ、と将生が言ったが、とりあえず、スルーしてみた。
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