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謎の男に買われました
メディフィスの都に来ました
しおりを挟むアローナたちの乗った馬車が、ぐるりと城下町を囲む堀の前にたどり着くと、ゆっくりと跳ね橋が下りてきた。
橋を渡って街の中に入ったアローナは驚く。
此処へ来るまでの荒涼とした風景とは違い、いきなり華やかな街が現れたからだ。
整備された石畳の道。
その沿道は花や食べ物を売る屋台であふれていた。
「メディフィスの都だ」
とアハトが教えてくれる。
えっ? 此処がっ?
噂に聞いてたのと全然違うっ、と馬車から外を眺めながらアローナは思った。
恐ろしい王様が支配する、戦と陰謀にまみれた強国だと聞いていたのに。
市民が圧政に苦しんでいる様子はなく、みな楽しげだ。
視線を馬車の中に戻すと、同じように外を見ていたアハトと目が合った。
なにか言わねばと思ったが、声は出ない。
仕方なく、アローナは身振り手振りと顔つきで、
「素敵な街ですね」
と伝えてみた。
アハトは深く頷き、
「わかった。
買ってやろう」
と言って、馬車を止めさせ、屋台で菓子を買ってこさせた。
いや、違うんだが……。
だが、意外にいい人だ、とピンク色の甘いなにかでコーティングしてある渦巻状の菓子を手渡されて思う。
ありがとうございます、と身振り手振りで伝えてみたが、今度も伝わったかはわからなかった。
ひとりで食べるのもな~と思い、半分ちぎって、アハトに渡そうとしたが、
「いや、いい。
食べなさい」
と言われる。
「新しい王は横暴な方ではないから、気に入れば、大事にしてもらえるかもしれないぞ。
まあ、王様という奴はなにを考えているかわからないものだからな。
いきなり殺されても恨むなよ」
と言うアハトに、
……いや、この菓子一個で、殺されても恨むなと言われても、とアローナは思う。
だが、最後まで美味しくいただいた。
それにしても、新しい王?
前の王様はどうしたのだろう、と思っている間に、白く美しい宮殿に着いた。
砂漠の国の宮殿とも似た感じだが。
側に見張り台として使っているのか、異国風の堅牢な高い塔があり、受ける印象は全然違う。
交通の要所となっている国だからだろうか。
いろんな文化が混ざっている感じだな、とアローナは思った。
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