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事件の匂いがするらしいです……
蒲生さん、空気を読んでください
しおりを挟むうーん。
まあ、お父さんですか、という呼びかけもおかしくないこともないんだが……。
誰だ、この男は、と娘との関係を父親が怪しんだ瞬間に、お父さんですか、とか言ったら、結婚を前提にお付き合いしてるような感じがしてしまうではないですか。
蒲生さん、空気読んで……。
この人、やはり、顔だけ知的で、天然な人なのだろうか、と夏巳は思う。
寛太は警戒心をあらわにしているが、桂は気づいてもいないようだった。
「あのー、お父さん。
この人、そこの探偵事務所の探偵さん――」
で、私を助けてくれた人、と言う前に、寛太は怒り出す。
「探偵っ?
なんだってお前、そんな胡散臭い職業の男とっ。
探偵なんて、いつも犬か猫を追いかけ回してるか。
浮気の調査をしてるかだろうがっ!」
偏見です、お父さん……。
っていうか、この人の場合、そのどちらもないから問題なんですけど、と夏巳が思っていると、寛太は、
「夏巳っ!
そんな男とは関わりになるなっ。
探偵と居ると、行く先々で事件が巻き起こってしまうじゃないかっ」
と言ってくる。
おとーさん、ドラマとアニメの見過ぎです……。
っていうか、巻き起こらないから、問題なんですってばっ、と思いながら、桂の方を窺うと、どうしても巻き起こしたい彼は、最早、寛太の方は見ずに、平川を質問攻めにしていた。
平川が、……犯人でもないのに……、観念したように、
「わかりましたよ。
じゃあ、うちに来てみます?
たぶん、柱に私がぶつかった血の痕でもありますよ」
と提案してくれた。
その言葉に、
「血?」
と平川を見た寛太は、
「うわっ。
どうした、お前っ。
撲殺されたのかっ?」
と叫んでいる。
「……品川さん」
と父とよく一緒に居る小笠原という若い刑事が今、気づいたのか、というように苦笑いしていた。
ちょっと天然入っているところが、父と桂は似ている気がしてきたのだが……。
まあ、気のせいだろう、と思うことにした。
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