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あの人も来ました……
お前、偵察に来たんだろう
しおりを挟む「あのー、日向子さんはお幾つなんですか?」
自分は、こうはなれないなあ、と変に感心しながら、芽以は日向子に訊いてみた。
「私は逸人と同い年よ」
芽以と日向子を見比べた静が、ふうん、と言ったあとで、
「このくらいの年になると、年齢ってあんまり関係なくなるんだね」
と言ってきた。
えーと。
それもまた、どういう意味なのでしょうかね……?
と思ったあとで、
しかし、日向子さんは、逸人さんと同い年なのか。
なんとなく、圭太とより、接点多そうだな、と思ってしまう。
……なんだろう。
なにか気になるな、と芽以は、かなり気のおけない様子で話している二人を眺めながら思っていた。
逸人は遠慮もなく、詰問口調で日向子に訊いている。
「お前、芽以のことを偵察に来たんだろう。
誰だ、芽以が此処に居るとバラしたのは。
砂羽か?」
「あら、お義母様よ。
芽以さんにご挨拶したいって言ったら、それは良いことねって、すぐに教えてくださったわ」
「相変わらず、どうしようもない親だな」
と逸人は呟いていたが、何処か諦めている風でもあった。
まあ、親のことに関しては、子どももある程度の年になると、はいはい、と流せるようになる。
親からしてもそうなのだろうから、お互い様かもな、とは思っていた。
そのとき、静がいきなり、
「ねえ、逸人。
さっきの羽ペン、開けてみた?」
と言い出した。
「いや、まだだが……」
「じゃあ、行こうよ」
と言って、逸人を連れて厨房に行く。
なんだかわからないけど、二人だけにしてくれたようだ。
いや……私は、日向子さんと二人きりにはなりたくなかったんだが、と思っていると、日向子が、
「座ったら?」
と静が空けてくれた席を手で示してくる。
はい、と芽以は言われるがままに腰掛けた。
やっぱり、日向子さんの方が年上っぽいな、と思いながら。
でもまあ、日向子さんは兄嫁になるわけだから、立場的には、向こうが上で別にいいのか、と思っていると、日向子は、
「貴女、私に、なにか言いたいことはある?」
と訊いてきた。
言いたいこと……。
言いたいことか。
厨房で静と話している逸人をチラと見、芽以は訊く。
「日向子さんは、何故、逸人さんと同い年なのですか?」
「……いや、何故っておかしくない?
っていうか、それがあんたの一番訊きたいことってのがおかしくない?」
そう日向子は胡散臭げに言ってくる。
訊き方がおかしかったようだ。
だが、なんだか気になったのだ。
日向子と逸人が同い年であることが。
逸人は自分と話すときより、かなり楽な感じで、日向子と話している。
同い年だからかなあ、と思ってしまったからだろうか。
いや、だからって、それに不満を持つのもおかしな話なのだが、と思っていると、日向子は椅子に背を預け、逸人のように腕を組んでこちらを見た。
「貴女が圭太に未練があるのなら、どうしてやろうかしらと思って来たんだけど。
特にないみたいね」
……はい?
と芽以は日向子を見た。
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