17 / 79
今のところ、お前が一番気に入っている
昨日のイケメンは誰ですか
しおりを挟む「おはようございます。
あれっ? 室長は?」
翌朝、葉名は室長に用事があって、秘書室に訪ねていったのだが、居たのは、涼子だけだった。
「桐島っ、桐島っ」
とノートパソコンを打ちながら、涼子が手招きしてくる。
「昨日のイケメンッ、誰っ?」
えっ?
社長のことかっ? と一瞬思ってしまったのだが、それなら、誰とは訊かないはずだと気がついた。
「ほらっ、夕べ、あんたが一緒にご飯食べに行ってたっ」
誰かと一緒に食べに行ったっけ? と思ったあとで、ああ、と気づく。
「あれ、たまたまお店に一緒に入っただけのお花屋さんのおにいさんです」
と答えた。
いや、一緒に食べたのは事実なのだが、それはただ単に、店に入った誠二が、
「僕、やっぱり食べて帰ろう。
その方が片付けるのにも手間いらずだしね」
と言い出したからだ。
それを聞いた葉名が、
確かに……。
買って帰ったら、結構ゴミ出るし、パンくずも意外に散らばるよな~。
部屋汚すと、また社長に怒られるしな、と思っていると、誠二が、
「葉名さんもどう?」
と言ってきたので、
「ああ、そうですね」
と返事をして、持って帰らずに店で食べただけなのだが……。
ガラス張りの店で、道沿いのカウンターに座って食べたから見られたんだな、とは思ったが、まあ、別に見られてまずいこともない。
そう思っている葉名の前で、涼子は、
「えっ?
あの人、お花屋さんなのっ?
何処にあんなイケメンのお花屋さんが居るのっ?
紹介して、葉名っ。
あんたの彼氏じゃないのならっ」
と言ってくる。
あ、葉名になってる、と思いながら、葉名は笑って言った。
「その先の商店街のお花屋さんなんですよ。
今度ご案内しま……」
そこまで言ったとき、背後に不穏な気配を感じた。
振り返ると、悪王子が立っていた。
「桐島。
昨日のミスにより、ちょっと言いたいことがある。
来い」
いきなり、そんなことを言い、准はさっさと社長室に入っていってしまった。
「……ねえ、あんた、またなんかやった?」
と涼子が言ってくる。
「また、はいりませんよ、三浦さん……」
いや、いるかな? と思いつつ、パタン、と閉まってしまった社長室の扉を葉名は眺めた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
87
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる