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昨日のイケメンは誰ですか

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「おはようございます。
 あれっ? 室長は?」

 翌朝、葉名は室長に用事があって、秘書室に訪ねていったのだが、居たのは、涼子だけだった。

「桐島っ、桐島っ」
とノートパソコンを打ちながら、涼子が手招きしてくる。

「昨日のイケメンッ、誰っ?」

 えっ?
 社長のことかっ? と一瞬思ってしまったのだが、それなら、誰とは訊かないはずだと気がついた。

「ほらっ、夕べ、あんたが一緒にご飯食べに行ってたっ」

 誰かと一緒に食べに行ったっけ? と思ったあとで、ああ、と気づく。

「あれ、たまたまお店に一緒に入っただけのお花屋さんのおにいさんです」
と答えた。

 いや、一緒に食べたのは事実なのだが、それはただ単に、店に入った誠二が、
「僕、やっぱり食べて帰ろう。
 その方が片付けるのにも手間いらずだしね」
と言い出したからだ。

 それを聞いた葉名が、

 確かに……。
 買って帰ったら、結構ゴミ出るし、パンくずも意外に散らばるよな~。

 部屋汚すと、また社長に怒られるしな、と思っていると、誠二が、

「葉名さんもどう?」
と言ってきたので、

「ああ、そうですね」
と返事をして、持って帰らずに店で食べただけなのだが……。

 ガラス張りの店で、道沿いのカウンターに座って食べたから見られたんだな、とは思ったが、まあ、別に見られてまずいこともない。

 そう思っている葉名の前で、涼子は、
「えっ?
 あの人、お花屋さんなのっ?

 何処にあんなイケメンのお花屋さんが居るのっ?

 紹介して、葉名っ。

 あんたの彼氏じゃないのならっ」
と言ってくる。

 あ、葉名になってる、と思いながら、葉名は笑って言った。

「その先の商店街のお花屋さんなんですよ。
 今度ご案内しま……」

 そこまで言ったとき、背後に不穏な気配を感じた。

 振り返ると、悪王子が立っていた。

「桐島。
 昨日のミスにより、ちょっと言いたいことがある。

 来い」

 いきなり、そんなことを言い、准はさっさと社長室に入っていってしまった。

「……ねえ、あんた、またなんかやった?」
と涼子が言ってくる。

「また、はいりませんよ、三浦さん……」

 いや、いるかな? と思いつつ、パタン、と閉まってしまった社長室の扉を葉名は眺めた。


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