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俺に幸運を与えるものは――
きっと俺たちは大丈夫だ
しおりを挟む「葉名、今日は早く終われそうだ。
この間のコロッケ、美味かったから、一緒に買いに行くか」
と言われ、葉名は、はい、と社長室を出た。
准の仕事は予定通り早く終わり、二人で夕暮れの商店街を歩く。
八百屋のカゴ盛りのブロッコリーを見ながら、准が言ってきた。
「でも、そうか。
練人さんがお前の兄なら、俺がザラザラーのチョコしかもらえなかったときに、あの人は、ちゃんとしたチョコもらってたわけだな。
あのページにあった」
……根に持つなあ、チョコ。
今度、あの使い捨てスプーンにチョコ流し込んで渡してやろうか、と思いながら、
「いえ、チョコ、ひとつしか成功しなかったんですよ。
だから、兄も、ザラザラーのチョコでしたよ」
と教える。
「母が――
成功した分は、父にあげたいと言ったので。
あの頃は、お母さん、お父さんをすごく大切にしてたんですよね……」
と呟くと、
「それでも、別れてしまうものなんだな」
と准は感慨深げに呟いたあとで、こちらを見、
「でも、きっと俺たちは大丈夫だな」
と言ってくる。
いや、なにを根拠に、と赤くなっていると、
「俺はそんなにお前に期待してないから」
と准は言う。
いや、それもどうなんですかね……と思っていると、
「俺はお前にそんなに好かれてないことは、よくわかっているからな。
家族より俺を選んでくれるなんて思ってない。
でも、俺には、お前が一番だ。
心配するな。
お前が俺を選ばなくとも、俺は誰よりもお前を選ぶから」
真顔でそう言われ、
「いや……、そういう言われ方をすると、私がひとでなしみたいじゃないですか」
と言って、笑われた。
お肉屋さんでコロッケを買ったあと、熱々のそれを食べながら、准が言う。
「でも、ロミオとジュリエット的な立場もいいな。
反対されると燃えるからな」
ちょうど誠二と目が合った准は、
「おっ、ちょうどいい奴が――。
おい、誠二。
俺たちの結婚に反対しろ」
と唐突に言って、眉をひそめられていた。
准は、そんな誠二に、コロッケをひとつ差し出す。
「……ありがとう」
と誠二は受け取り、店の丸椅子と缶コーヒーを三つずつ出してきてくれた。
店先に三人で並び、夕陽を浴びながら、揚げたてのコロッケをかじる。
店内の緑に囲まれ、目の前を地元のおばあちゃんたちが世間話をしながら歩いていく。
「あー、なんか和みます~。
真後ろには、高層マンションが建っているというのに、なんだか此処は時代が戻ったような異空間ですよね~」
と葉名が言うと、
「昔からの住宅地も近くにあるしね。
いいとこだよ、ほんとに」
とぼんやり通りを見ながら、誠二は言う。
しばらく三人で話していると、誠二が言い出した。
「しかし、あれだね。
葉名さんが二階堂の人間なら、准はずいぶんと強力なバックを得たことになるね。
僕のガジュマルのおかげかな?」
「いや、葉名のペペロミアのおかげだろ」
と准が言う。
……いや、どっちでもいいですよ、と思っていると、誠二が、
「准。
これで、お前が一歩リードしたかもしれないが、お前にあれは渡さないからな」
と言い出した。
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