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お前にそう言われてみたい ~クワズイモ~

なに、此処、異世界?

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「そんな黛さんを信用して言いますけど」
と葉名は声を落として言い出した。

「私、実は宝のを探してるんです」

 ……此処、会社だよね?
と黛は思わず、周囲を見回した。

 一瞬、リアル脱出ゲームかなにかのイベントが始まったのかと思ってしまったのだ。

「急いで、あと十分で見つけなければ」
と葉名は思い詰めたような顔で言う。

 なにか爆発するとかっ? とその顔につられて思ってしまったのだが。

 葉名は、
「だって、あと十分でお昼休みが終わってしまいますからね」
と現実的なことを言ってきた。

「……そうだね」
と言いながら、どうやら、ふさげているわけではなさそうだ、と黛は思った。

「あの、黛さん、この会社の社歌って、ご存知ですか?」

「いや、知らないけど?」

「私、入社試験受けるときに、いろいろと、この会社のこと調べたんですよ。

 創業者や、今の社名に至るまでの流れや、グループ全体の現在の従業員の数や。

 ……ま、どれも出なかったんですけどね。

 試験始まる直前までブツブツ言って覚えたのに。
 徒労とろうってこういうことを言うんだなと思いましたよ」
と寂しく呟いたあとで、葉名は言う。

「此処の社歌って、社員のみなさんも、あまりご存知ないようなんですけど。
 面白いんですよ。

 『朝日さす、夕陽かがやく』で始まるんです。

 この言葉、埋蔵金を示す暗号文の冒頭に使われる言葉として、広く知られてますよね。

 実際にその言葉が入った歌や言い伝えが、埋蔵金のことを表しているかどうかはともかくとして。

 みんながそう思っているこの言葉を社歌の冒頭に持ってきてるのが面白いなと思いまして」

 なにか今にも、二時間スペシャルでも始まりそうだ……と思う黛の前で、葉名はいきなり小声で歌い出す。

「朝日さす、夕陽かがやく金の社屋に金のいん……♪」

 それに被せるように、お昼休みも終わりなので、交代するらしい受付嬢たちが、
「お疲れさまでーす」
と声を掛け合っているのが聞こえてきた。

 後ろでは、そんな職場での日常の光景が繰り広げられているというのに、此処だけ異世界のようだった。


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