そこらで勘弁してくださいっ ~お片づけと観葉植物で運気を上げたい、葉名と准の婚約生活~

菱沼あゆ

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お前にそう言われてみたい ~クワズイモ~

君、社長になに言ってんのっ?

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「なので、問題の印鑑は、この会社にあるような気がしてたんです」

 独り言のように呟く葉名に、……問題の印鑑ってナニ? と黛は思っていた。

「金印がこの会社の何処に埋まってるのか知りませんが。
 お父さんには頭下げたくないから、おにいちゃんに言って、ブルドーザーでも入れてもらおうかなとか思ってたんですが――」

 なんだかわかんないけど、壊さないで、会社っ。

 そして、君のおにいちゃんとお父さん、誰っ?
と思っていると、葉名は、

「でも、ひっそり電話しようとロビーの隅に来たら、これがあるじゃないですか。

 なんか、いい感じに古い大時計が。

 どうも気になって、近くに寄って見たら、金の振り子に薄く描いてあったんですよ、古い社屋がっ。

 金の社屋に金の印ですよっ」
と訴えてくる。

「時計を開けて内部を見たいんですが、確かこういう精密機械は素手で触ってはいけないとおじいちゃんが言っていたので」

 今度は、おじいちゃん。
 おじいちゃん、何者っ? と思っていると、葉名は、
「あと、五分しかありませんっ。
 二分前には職場に戻らないと、久田さんたちに、つるし上げを食らいますっ」
とまた、現実に話を引き戻してくる。

 やはり、夢物語を語っているわけではなさそうだ、と判断し、わかった、と黛は頷いた。

「手袋、警備員さんにでも借りてくるよっ」

 宝探しの本を必死に読んでいた子どもの頃の気持ちを思い出し、ちょっとワクワクしながら行こうとしたその瞬間、玄関に黒塗りの古いプレジデントが着いた。

 東雲准が降りてくる。

 げっ、社長っ、と思ったのだが、葉名は准がロビーに入ってくるなり、彼に向かい、叫び出した。

「社長っ、手袋はありませんかっ?」

 わあああっ、君、なに言ってんのっ、と黛は慌てたが、准は真面目な顔で、
「どうかしたのか?」
と葉名に訊き返している。

「社長、あの大時計、開けてもらってもいいですか?
 きっと、あの中になにかのヒントが隠されてるんですよ」

「なんのだ?」
と言いながらも、准は迷うことなく、大時計の扉を開ける。

 さすが、行動が早い、と思う黛の前で、葉名が叫ぶ。

「金印ですよっ。
 きっと、金印が隠された場所へのヒントがこの中に……っ。

 あ……、あった」
と言い、葉名は斜め下を見た。


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