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あやかしを探しています
もー……
しおりを挟むそのあと、母屋の縁側でみんなでお茶を飲みながら、走り回る吉之輔を眺めていた。
真凛が笑い、
「いっぱい人がいるからかしら。
ひとりであんなに、はしゃいじゃってー」
と言うが。
実は、吉之輔はウリがいるから、はしゃいでいるのだった。
二匹がじゃれ合うようにして、境内からつづく庭を駆け回っている。
「ほう。
明日は釣りに行くのか」
と司が総司たちと話しているのが萌子の耳にも届いてきた。
「お兄さんもどうですか?」
と総司が誘っている。
「それが釣りはあまり得意じゃなくて。
子どもの頃、おじさんに連れられて釣りに行ったとき、ハゼドンを一匹釣ったくらいかな」
そんな司の言葉に藤崎が笑い、
「司さん、ハゼのこと、ハゼドンって言うんですね。
うちのおじさんもなんですよ。
昔、そういうアニメがあったらしくて」
と言うと、司は激しい衝撃を受けたような顔していた。
「ハゼドンとはハゼのことだったのかっ。
ハゼドンという魚がいるのかと思っていたっ」
そんな兄に続いて、萌子も叫ぶ。
「私はハゼドンが正式名称で、略称がハゼなんだと思ってましたっ」
「……待って。
あんたたち、小さい頃から頭よかったよね?」
と真凛が呆れたように呟き、理が笑って、
「小さいときの刷り込みって怖いね」
と言っていた。
そのあと、キャンプ場に移動し、みんなで総司の蘊蓄を聞き流しながら、晩ご飯の準備をした。
「中国では手の届かないところにある茶葉を猿にとらせていたという伝説がある」
「へー」
「真珠は媚薬効果があるので、結婚式にも用いられるのではという話がある」
「へー」
「……も、もー……」
「へー」
みんな、反射的に適当な相槌を打ったあとで、ん? と振り向く。
総司は、みんなに背を向け、焚き火台の準備をしていた。
「今の、もー、はなんですか?」
と萌子が問い、
「今、牛が鳴いた?」
と理が訊く。
「……なんでもない」
と総司は言いながら、薪を薄く削っていた。
鳥の羽のようなふわふわがついた棒になる。
「それ、なんですか?」
「フェザースティックという薪で作る着火剤だ」
「そこは蘊蓄たれないんですね……」
総司はフェザースティックを別に変わったものだとも思っていないようだった。
そういうものに関する豆知識なら、みんな真剣に聞くと思うんだが。
まあ、役に立たない蘊蓄ばかりたれているから、田中侯爵なんだよな、と萌子は変に納得してしまった。
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