【完結】大魔法師様は運命の恋人を溺愛中。〜魔法学院編〜

みるくくらうん

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一年生・秋の章<それぞれの一週間>

ルイの悩み②

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「ルイくん、こんなんで大丈夫かなぁ?変じゃない?」


 フィンは自身の格好を見せるようにくるりと一周し、首を傾げて不安げに問いかけるが、ルイは顔を赤らめ眉を顰めて目を逸らす。


「セオ……やりすぎだぞ!」


 遠くで手を振るセオドアを睨むルイは、小声で文句を言うもセオドアは聞こえていないためヘラヘラと笑った。


「ルイくん……?やっぱりおかしい?」


 フィンは目を潤ませ再度問いかけると、ルイは軽くため息を吐き自身の頭をわしゃわしゃと掻いてからフィンを見下ろす。


「いや……女装は完璧すぎるぐらい完璧だ」

「本当!?良かったー」


 安堵の笑みを浮かべるフィン。口元のピンクのリップが綺麗に発色し、柔らかな雰囲気の中にもはっきりと女性を思わせるような色っぽさが弾け、頬に乗ったほんのりと滲む淡いピンクのチークが愛らしさを強調している。
 ルイはメイクひとつでここまで変わるのかと動揺しつつ、相手の肩をポンっと叩いた。


「悪いな、変なことに巻き込んで。とっとと終わらせに行くぞ」

「うん!!よし、頑張るぞっ」


 二人は王城に続く門を目指しながら歩き始めた。


「ものの数分でいい、お前は”ミシュリー“という女性に扮して、リュシエンヌっていうふざけたメイド長の前で俺と”恋人っぽい会話“をしてくれ。数分間俺たちは完璧に恋人ごっこをする。分かったな?」

「うん!任せて、台本はちゃんと覚えてきたからねっ?」


 フィンは頷きながら満面の笑みを見せると、ルイは顔を赤らめグッと心臓を抑える。


「(落ち着け、相手はおとぼけド天然のフィンが女装してるだけだ。変に緊張するな。これを成功させれば俺の心の安寧が訪れる)」


 ルイは大きく息を吐き、フィンを連れて王城へ入っていった。



--------------------------------------------------



「ここから先が俺が寄宿している城のエリアだ。門兵に俺が女性と来ていると認識されているから、リュシエンヌもその情報をいち早く聞いて、この扉の先で待っているはずだ」


 ルイの言葉に、フィンはゴクリと唾を飲んで頷いた。


「鳴らすぞ」


 扉前のベルを鳴らすと内側から扉が開く。
 そこには縦ロールの巻髪をツインテールにしたリュシエンヌが真顔で立って待ち構えていた。


「お帰りなさいませルイ様」


 リュシエンヌは深々と頭を下げ出迎えると、フィンの方に視線を向ける。


「お客さまでしょうか」


 リュシエンヌがルイに問いかけると、ルイは演技を始めた。とびっきり優しい笑みを浮かべてフィンを見下ろし、肩を少し強めに抱き寄せる。


「ああ。俺の恋人のミシュリーだ」

「っ!!!」


 リュシエンヌは驚愕の表情を浮かべ、歯を食いしばってあからさまに悔しそうな表情を浮かべた。
 フィンは台本通りに口を開く。


「初めまして、ミシュリーです。ルイ様とお付き合いさせて頂いてます」


 フィンはドレスの下部分を持ちふわっと軽く持ち上げて挨拶をする。


「ミシュリー、俺の部屋に行こう」


 ルイは優しい声色でそう提案すると、フィンはもじもじとしながら顔を赤くする。


「そんな……もう、ですか?ルイ様ったら、私昨日もたくさん愛してもらったのに、今日も愛してもらえるなんて幸せすぎて死んじゃいそうです」


 フィンは両頬を抑え照れながらルイを見上げた。
 フィンの演技力がとてつもない破壊力を持っていることに気付いたルイだが、それよりも気になることがあり、ルイは一瞬眉を顰める。


「(おいおい、台本と違うセリフだぞ……?でもコイツがセリフ覚え間違える訳がないし、アドリブするタイプでもない。つーことは)」


 脳裏によぎるセオドアの悪戯めいた笑み。


「(アイツ!セリフ変えてフィンに叩き込んだな馬鹿野郎!あとで殺す!)」


 ルイは表情を変えず内心苛つきながらもフィンの台本に合わせて演技を続けた。


「本当は毎日愛したいぐらいなんだ、足りないよ」

「私も、本当は四六時中ルイ様と一緒に居たい……大好きですっ」

「俺の方が大好きだ(セオ、アイツ俺の返し方のパターンでセリフをいくつか用意して覚えさせてやがるな)」


 ルイはニコッと優しく笑みを浮かべると、フィンの金髪ヴィッグを一房掴んで匂いを嗅ぐ仕草をし、チラリとリュシエンヌを見る。


「っ(ルイ様があんな優しそうに笑うなんて……!それにこの女、こんな美少女がいたら少しは噂になるはずなのに。ルイ様は一体どこでこんな子を見つけてきたのかしら)」


 リュシエンヌはぷるぷると震え悔しそうな表情をしていたため、ルイはニヤッと口角を上げた。
 リュシエンヌは小さく口を開く。


「この城……中庭がとても綺麗で……まずはそこでお茶をするのはいかがでしょうか。せっかく王城に来ていただいたのですし、庭師が育てた自慢の花達を見ながらお菓子と紅茶でも」


 リュシエンヌは作り笑顔を必死に作ってそう提案すると、ルイは少し悩んだ後頷く。


「(フィンに毒でも盛るつもりか?)……良いだろう。アレクシ、お前がお菓子と紅茶を用意しろ」


 作戦を知っているアレクシは落ち着いた表情で頷くと、用意するために一度その場から離れ、二人はリュシエンヌの案内で中庭を目指す。


「ルイ様、王城でお茶ができるなんて私夢みたいっ」


 本来なら部屋に行って終了するはずだったが、ここから先は台本に無い行動のためアドリブで会話をするしか無い。
 フィンは少し困りつつも抜群の演技を続けた。


「実は、俺は中庭に行ったことがなくてな。でもお前は花が好きだろう?」

「はい!大好きです!嬉しいっ」

「どちらのお嬢様か存じ上げませんが、ミシュリー様の城には中庭はないのですか?」


 振り返ることなく問いかけるリュシエンヌ。
 何気ない質問だが、少し棘があり、フィンが何者かを探っている様子だった。
 ミシュリーという人物の設定は考えてあるため、フィンは怖気付くことなく答え始める。

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