【完結】大魔法師様は運命の恋人を溺愛中。〜魔法学院編〜

みるくくらうん

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一年生・秋の章<それぞれの一週間>

ルイの悩み⑦

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「(ルイ様の殺気……重くて痛くて、苦しい……!)」


 思ったよりも大事になりそうな予感がしたリュシエンヌは、少しずつ後退り目を潤ませる。


「(このままルイ様が必死にミシュリーを探すことになれば、間違いなくあの川に沈む死んだミシュリーが見つかってしまう)」


 リュシエンヌは目を潤ませ心臓をバクバクと鳴らし、コヒュッと嫌な呼吸音を鳴らして動揺を見せた。


「ああ、そうだ、いいことを思いついた」


 ルイはスッとさっきを消すと、リュシエンヌに近づく。


「師匠に頼んで視てもらおう」

「……?」


 リュシエンヌは青ざめた顔で一瞬目をパチクリとさせ、首を傾げる。


「アカシックレコードだよ。リュシエンヌ、協力してくれるだろう?シュヴァリエ公爵に協力してもらえば君の発言の裏付けになる」


 アカシックレコード。国宝レベルの特殊能力を持つシュヴァリエ家の専売特許。リュシエンヌの脳裏によぎるのは、銀髪の冷酷なハイエルフ・リヒトの姿だった。
 触れられたら最後、リュシエンヌは二度と日の目を見ることはなくなる。


「ぁ……ああ……」


 命の危機を感じ狼狽えるリュシエンヌ。


「どうかしたのかリュシエンヌ。ずいぶんと怯えているようだな(だいぶ効いてるな)」


 ルイは目を細めニヤリと笑う。


「まさか、嘘ってことはないだろうな?」


 ルイの問いかけに、リュシエンヌは足が震え失神寸前にまで体が拒否反応を示した。


「あ、あ、もうしわけありませ……嘘ではありません!お暇させて頂きます」


 自分の記憶が見られれば、嘘が暴かれ命はまずないと悟ったリュシエンヌは、涙を流して慌てて逃げるようにルイの前から姿を消した。


「ふー。俺が脅して出て行かせた、みたいになってないよな?」


 残されたルイは、安堵の表情を浮かべつつも眉を顰め自分の行動を振り返ると、再びロッキングチェアに腰掛け窓を眺めた。


「……ま、これだけ脅せば、もう変な気は起こさないだろう。二度と俺の目の前に現れてくれるなよ、媚薬女」


 しばらくすると、一人になったルイの元にアレクシがやってくる。


「ルイ様。無事リュシエンヌは馬車に乗って北部を目指しています」

「ん。しばらくは動向を探ってくれ。腐っても由緒ある家柄だ、また戻ってくるかもしれない」


 ルイはそう言って再び本を開くと同時に、フィンとセオドアに対して「終わった。お礼はまた今度」と一言メモを伝書鳩に託した。


「ルイ様はお優しいですね」


 執事のアレクシは、少し目を細め肩まである髪を耳にかけると小さく笑みを浮かべる。


「俺が?なんでそうなる」

「リュシエンヌは王城の中でも、狡猾で恐れられていたメイド長です。きっとこれまで色々な罪を犯している事は間違いありませんから、これを機にシュヴァリエ公爵に頼んで殺害未遂で投獄しても良かったのでは?」


 アレクシは満面の笑みでそう提案するも、ルイは首を横に振った。


「いや、あの女は恐ろしい本性を持っている。そういう追い詰め方をすれば余計に何をするか分からないんだよ。あの女はビクビクと僻地で怯えて過ごしてもらうぐらいで丁度良い。いい薬だ」


 ルイの見解にアレクシは目を見開いた。


「なるほど。だからあそこまでの大芝居をうったわけですね。本当にルイ様は賢い!ただ権力を振り翳して追い詰めるだけが力ではないと、学ばせてもらいました」

「恋人役を立てるというお前の案は、非常に応用がきく作戦で良かった。セオドアもフィンも身元はリュシエンヌに明かされていないし、アイツらに被害がいくこともないだろう」





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 翌朝。

 メイド長のリュシエンヌが北部の地に異動になったことで、王城で働くもの達は騒然としていた。驚きの後に囁かれたのは、リュシエンヌがいなくなったことで働きやすくなったという内容。
 ルイは必然と王城で働くメイド達を救っていたのであった。


「ルイ様。代わりのメイドはいかが致しましょうか」


 新しくメイド長になったカリーナは、ついに頭を下げてから問いかける。


「最初にも言ったが、俺は南から信頼できる執事を連れてきている。正直アレクシで事足りているから必要ない」


 ルイは他所行きの愛想の良い表情を浮かべると、カリーナはニコリと笑みを浮かべた。


「承知しました。何かあればなんなりとお申し付けください」


 カリーナはリュシエンヌと違い早々に引き下がりルイの部屋を後にすると、ニヤッと笑みを浮かべた。


「(よっしゃァァァァァ!たなぼたでメイド長に抜擢ィ!給料爆上がりあざーっす!!!あの陰湿女が急に消えてくれてラッキーだったなぁ。これからこの城に仕えるひとたちものびのびと働けるわね)」

「メイド長、ちょっと良いですか」
 

 他のメイドが引き継ぎのためバタついているため、カリーナは慌てて助け舟を出すのであった。

 部屋に残されたルイは、一枚の新聞を広げる。


「あーあ。これがなきゃ完璧だったっつーのに。一体誰がこんなもん」


 新聞の一角には、女装したフィンの盗撮写真が貼られ、“王都に謎の美少女降臨”という見出しの記事が掲載されていた。


「一応これ以上この記事が出ないようにはしたが、既に出回ってるものは回収しきれないぞ」


 ルイは脳内でリヒトの姿を思い浮かべると、苦笑して新聞を放った。


「フィン、お前の対応次第だな」


 眉間に指を当て、フィンがこの事態をどう収集するかに賭けたルイは、窓から差し込む太陽の日差しを浴びながら溜息を吐いた。






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