【完結】大魔法師様は運命の恋人を溺愛中。〜魔法学院編〜

みるくくらうん

文字の大きさ
241 / 321
一年生・秋の章<それぞれの一週間>

フィンとメイド服①

しおりを挟む


 普段なんとなく新聞を流し読みをするリヒトは、執務室でコーヒーを飲みながら新聞を捲る。
 すると、そこには驚くほど可愛らしい女性の写真と共に、“王都に謎の美少女降臨”という見出し文が書かれた記事を見つけた。興味が全くなかったリヒトは、次のページに進もうと指を動かすが、写真に違和感を感じ再度じっくりと美少女の写真を見つめる。


「……これは」


 既視感を覚えたリヒトは、さらにその写真を睨み付けるようにまじまじと見つめると、突然立ち上がった。


「フィン」


 写真の美少女がフィンだと気付いたリヒトは、その新聞のページを持って慌ててベッドルームを目指す。その表情は焦燥が滲み出ていた。
 部屋に入ると、昨晩リヒトに愛でられたフィンが裸で毛布に包まりながら眠っており、リヒトは部屋に入った瞬間音を立てないようにそっと歩く。


「……まだ寝てる、か」


 すやすやと寝息を立てて眠る天使の姿に、リヒトは優しい表情を浮かべてそっとベッドの淵に腰掛けた。


「フィン……困ったな。そんな可愛い顔で寝られては起こしにくい」


 この記事の美少女は間違いなくフィンだ。
 確信を持っているリヒトだが、目の前の天使を無理矢理起こして問い詰めるようなことまでは出来ない。この寝顔をもっと見ていたい。
 だが、なぜ女装をしたのかその理由を聞きたくて仕方がない。
 リヒトは葛藤しながら、目を細めフィンを見つめ続ける。


「けど……俺に黙ってこんなことするなんて、いけない子だね」


 リヒトはそっとフィンの頭を撫で、ミルクティーのような柔い色をした髪を掬うように掴むと、匂いを嗅いでから愛おしそうに見つめそっと額にキスをした。


「すー、すー」


 フィンは少しも起きることなく気持ち良さそうに眠っているため、リヒトはクスッと笑みを浮かべ頬を撫でた後、首もすりすりと撫でて様子を伺う。
 フィンはピクリとも反応せず、気持ちよさそうに寝息を立て続けた。


「今日は深い眠りだな」


 フィンは寝付きが良く、時折どんなに揺すっても起きないぐらいに深く眠る時がある。今日がその日だと悟ったリヒトは、フィンがかけていた毛布をそっと捲った。


「起きないなら悪戯するよ」
 

 リヒトは少し小さめの声でそう問いかける。しかしフィンは起きることなく、仰向けで寝続けていた。
 いつもなら好きなだけ寝かせてあげているが、今はとにかくなぜこんな格好をしたのかが聞きたい。リヒトはそう考え小さく溜息を吐いてフィンの耳にキスをした。
 無理矢理起こそうと思えば起こせるが、リヒトはあえて段階を踏むことにする。


「フィン」


 リヒトは毛布を全て捲ると、フィンに覆いかぶさるような体勢になりキスをした。柔らかいフィンの唇を啄むと、舌を入れて吸ったり舐め回し、気付けばフィンの手首を強く握って押さえつけている状態になる。


「んんー」


 フィンは少し声を出すが、それでも深い眠りについたまま目を醒さない。
 リヒトは次に、フィンの鎖骨に舌を這わせる。


「んん、ゃー……っ」


 フィンは眠ったままくすぐったそうに身を捩る。


「いや?」


 リヒトは今度はフィンの乳首に舌を這わせ強く吸い付くと、今度は流石にビクッと反応を示しフィンは少し目を開いた。リヒトは薄ら笑みを浮かべフィンの視線を拾うように目を合わせにいくと、「フィン」と小さく呼ぶ。


「ん、ぇ……?」


 寝ぼけ眼のフィンは、暫く状況を読み込めないままぼーっとリヒトを見上げた。
 フィンの目が開いたことを確認したリヒトは、新聞を取り出すと、フィンの女装写真の載った記事をフィンに見せる。


「フィン。これ、説明してもらおうか?」


 リヒトの低い声と、目に飛び込んだ自身の写る新聞記事を見てすぐに覚醒したフィンは、目を見開き慌てた様子で新聞を掴み飛び起きた。


「ななななんで僕が新聞にっ!?」


 いつの間に写真を撮られたのだろう。以前、エスペランス祭の取材でルイやセオドア等と共に一面を飾ったことはあるが、こんなにすぐにまた新聞に取り上げられるとは。
 しかし、これはフィンではな“ミシュリー”。今謎の美少女として新聞に取り上げられていることに狼狽えつつも、自分だと分かるのはリヒトだけだろう。


「やっぱりフィンなんだね」


 リヒトは軽くため息を吐きながらもフィンから新聞を奪い取り再度押し倒す。


「わっ!あ、あのね……ごめんね?隠すつもりは全然無かったんだけど」


 フィンは申し訳なさそうにそう話すと、リヒトはフィンの顔を掴んで目を細める。


「説明して?どうしてこんなことを?」


 リヒトは相変わらずの美しい顔でじっと見下ろした。


「うんとね……」


 フィンはルイ達と計画を立て、メイド長を追い出す計画を実行し成功させたことを話す。事の顛末まで聞き終えたリヒトは、表情を少し曇らせてベッドの端に腰掛けると溜息を吐いて俯いた。


「なるほどな……アイツらしいやり方だ」


 ルイは他人に迷惑をかけることを躊躇うタイプであるため、こういった頼み事をするということは王城でよほどストレスを抱えた生活をしていたのであろう。
 信頼のできるフィンとセオドアに、何としても被害が行かないように考え込まれた設定とシナリオ。フィンに至ってはメイクとヴィッグで完全に女性にしか見えないようになっており、この新聞だけでフィンと気付く人はおそらく自分以外にいない。


「……確かにルイの方法なら、セオドアとフィンが身バレもせず、やり返されるリスクは低い。メイド長が罪の意識を背負い戻ってくることにリスクがあると判断した以上は、もう王城に戻らないかもしれないしね」


 それに何より、この計画の顛末を語るフィンの目が輝いていた。リヒトはチラッとフィンの方を見ると、フィンは毛布で肩まで身体を隠しながら起き上がり、怒られてしまうのかと目を潤ませている。


「フィン、楽しかったんだね」

「っ」


 フィンは目を見開いたあと、小さく頷いて口を開いた。


「最初はびっくりしちゃったけど、でも、三人で協力して成功した時、なんかすごく楽しくて。ルイくんも、これで安心して過ごせるんだなって思うと嬉しかったの」


 フィンは目を細め優しく微笑むと、リヒトは溜飲が下がったような感覚になったのかフィンを見てから頭を撫でた。


「気持ちはわかる。俺も昔、三人で色々やったから」


 ミネルウァの黄金世代と言われた時代。リヒトはアレクサンダーとエリオットと結託しフィンには自慢できないような事をよくやっており、リヒトはそれが楽しかった記憶だったのか、少し思い出して軽く笑みを見せた。
 フィンは安心したように表情を緩ませるも、リヒトは途端に目を鋭く光らせる。


「でも」

「!?」

「一つ許せないことがある」

「え……」


 フィンは小動物のようにぷるぷる震えながら毛布を掴んでリヒトの様子を伺った。






しおりを挟む
感想 160

あなたにおすすめの小説

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

処理中です...