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王様とお話がしたいわ
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アンナ・デヴォアルテは、シーリアンテ王国の四大公爵家のひとつであるデヴォアルテ公爵家に生を受けた。というのは少し語弊があるかもしれない。正しくは転生し、それまでの幾つもの記憶を持ったまま目を覚ました。
童話の中にはこんな一説がある。
『女神さまは誠実なその人間に惚れ、その人間の願いをなんでもかなえてあげた。国さえも創ってあげた。女神さまは人間の短命をひどく嘆き、創った国に住む人間すべてに百年の時をあげた。おかげでその国の人間は最低でも百年の時を生きるようになったが、その代わり、女神さまは死ぬようになった。その記憶は持ったまま、何度も何度も生死を繰り返す。これを転生と人間は呼んだ』
アンナの転生はまさにこれであった。とはいえ、首も座らない赤子が突然話し始めたならば人間にとっては恐怖でしかないだろう。アンナのその身体も発語するのには未熟であった。だから生まれて三回目の誕生日を迎えるまでひたすら時を待った。
「私はアイオニーの生まれ変わりなの。だから、今の王様とお話がしたいわ」
三歳になるまで一言もしゃべらず、喃語もなく、両親以外の使用人に不気味と遠巻きにされていた幼女が唐突に喋ったのだ。驚きどころでは済まされないだろう。父親は目を白黒させ、母親は気絶した。その対応に追われ、誰もアンナにかまう余裕はなかった。
アイオニーは女神が持つ、たくさんの名前のうちのひとつである。
「つまりアンナは女神の生まれ変わりで、ひとつ前の死の前に約束をしたからそれを陛下と話したいと言うのだね?」
夜が明けて、父親は全快していない母親を横に座らせて抱えながらアンナに問う。
「そうよ。いつ会えるかしら?」
「明日にでも会えるように手紙を出しておくよ。ところで、ひとつ聞いてもいいかい?」
「なあに?」
「なぜ、このタイミングで教えてくれたんだい。神話によれば生まれたその瞬間から記憶はあるものと書いてあったのだが…」
「だって、人間は三歳になるまで喋ることが出来ないのでしょう? 今まで生んだ子たちはみんなそうだったわ。違うの?」
見守る使用人も、父親も、その場にいた全員が目を点にして、同じことを胸のうちに思った。
『この女神、どこか抜けている』と。
童話の中にはこんな一説がある。
『女神さまは誠実なその人間に惚れ、その人間の願いをなんでもかなえてあげた。国さえも創ってあげた。女神さまは人間の短命をひどく嘆き、創った国に住む人間すべてに百年の時をあげた。おかげでその国の人間は最低でも百年の時を生きるようになったが、その代わり、女神さまは死ぬようになった。その記憶は持ったまま、何度も何度も生死を繰り返す。これを転生と人間は呼んだ』
アンナの転生はまさにこれであった。とはいえ、首も座らない赤子が突然話し始めたならば人間にとっては恐怖でしかないだろう。アンナのその身体も発語するのには未熟であった。だから生まれて三回目の誕生日を迎えるまでひたすら時を待った。
「私はアイオニーの生まれ変わりなの。だから、今の王様とお話がしたいわ」
三歳になるまで一言もしゃべらず、喃語もなく、両親以外の使用人に不気味と遠巻きにされていた幼女が唐突に喋ったのだ。驚きどころでは済まされないだろう。父親は目を白黒させ、母親は気絶した。その対応に追われ、誰もアンナにかまう余裕はなかった。
アイオニーは女神が持つ、たくさんの名前のうちのひとつである。
「つまりアンナは女神の生まれ変わりで、ひとつ前の死の前に約束をしたからそれを陛下と話したいと言うのだね?」
夜が明けて、父親は全快していない母親を横に座らせて抱えながらアンナに問う。
「そうよ。いつ会えるかしら?」
「明日にでも会えるように手紙を出しておくよ。ところで、ひとつ聞いてもいいかい?」
「なあに?」
「なぜ、このタイミングで教えてくれたんだい。神話によれば生まれたその瞬間から記憶はあるものと書いてあったのだが…」
「だって、人間は三歳になるまで喋ることが出来ないのでしょう? 今まで生んだ子たちはみんなそうだったわ。違うの?」
見守る使用人も、父親も、その場にいた全員が目を点にして、同じことを胸のうちに思った。
『この女神、どこか抜けている』と。
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