ネタバレすると、俺が男主人公なことは確定。

杏2唯

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アサシンはボスとなる

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 しののんによる適当すぎる学園案内が終わった後は、学級委員等を決めるよくある“学級会”が開かれることになった。
 今日は昼までしか授業がない。これを終えれば家に帰れる。しののんのことだから学級会もやる気ないと信じている。ほらさっさと終わらせてくれ!

「え~っと……じゃあ今からクラス委員を決めて行きたいと思います~……うちの学園はまだ生徒が一期生のみんなしかいないから生徒会を作るのは来年からになるみたいでぇ~……とりあえず今年は各クラスの学級委員になった人が中心になって学園を盛り上げて行くっていう方針みたいなんだけどね~」

 ほう。じゃあ学級委員にだけは絶対にならない。こんなおかしい学園を盛り上げるなんて普通の感覚を持った一般人の俺には到底不可能だからな。

「みんなやりたくて仕方ない人気の委員と思うんだけど、学級委員は各クラスに一人だけで~す」

 いや誰もやりたがらないだろ――と思っていたが周りからは予想外の声が上がる。

「学級委員やってみたい!」
「僕もやりたい!」

 次々と学級委員の立候補者が現れる。何だお前らやる気満々族かよ!? もしかしてこのクラス結構熱血系多い!?

「まぁやる気ないこちらからしたら大助かりですけどねー……な、佐伯――」

 同意を求めようと隣の席を見ると佐伯もピシッと手を挙げて学級委員に立候補していた。まさか佐伯もやる気満々族の方の人間だったとは予想外だ。何だろうこの仲間を失ったような寂しさ。

「えっと、佐伯サーン? 学級委員とか絶対大変だって。他にも保健委員とか図書委員とかさ、佐伯にぴったりそうな可愛い委員会あるから」

 ほら大体保健委員とか図書委員って可愛い女子なこと多くない? ていうか可愛い女子にやってほしくない?

「何言ってるの麻丘くん! 学級委員は言わばクラスの――ううん、学園のボスだよ! 私ボスやりたい!」

 そんな俺の願いは佐伯に伝わることなくそう返される。佐伯らしい考えだなとは思うけど学園のボスは校長だと思うんだけど……言わないでおこう。

「はいはぁ~い。みんな落ち着いて~。ここで残念なお知らせです。学級委員はもう決まってるんだよねぇ」

 しののんがそう言うとざわつく教室内。学級委員が決まってるってどういうことだと思うけどもうそんなちんけなことじゃ驚かなくなった俺だ。
 どうせ入試の時に一番成績良かった奴とかが指名されるんだろ。立候補制にしろ指名制にしろ俺には関係ないことだ。

「校長からの指名で~うちのクラスの学級委員はアサシンになりまぁ~す」

 しののんは力が抜けるような声でそう言った。あれだけざわついてたのにしーんと静まり返る教室。
 誰なんだ学級委員に選ばれたラッキーな奴は。良かったなこれで今日からこのイカれ学園を盛り上げる一年間を送れるぞ。

「アサシ~ン? 聞いてる~?」

 アサシンさんかくんだか知らないけど誰なんだ。ていうか変わった物騒な苗字だな……もしかして俺と同じで学級委員なんてやりたくなかった側の奴だったりして。そうだったら俺は心の底からお前に同情するよアサシン――

「あ~さ~お~か~し~ん~や~く~ん!」
「――は!? 俺!?」

 今までしののんからは聞いたことない大きな声で自分の名前を呼ばれて俺は椅子ごと後ろにひっくり返りそうになった。
 ま、待て。嫌な予感がする。何で今名前呼ばれた? 今って学級委員を決めてる真っ最中だったよな? そんな状況で名前が呼ばれるってことは、それって――

「ちょちょ、ちょっと待って下さいって。アサシンって奴が学級委員なんじゃないの!?」
「だから麻丘伸也で略してアサシンだよ~早く気付いてほしかったなぁ」
「何その理不尽!」

 いつの間にかしののんに変なあだ名をつけられていた俺はまさかの学級委員に指名されてしまっていた。しかも校長からの指名とかいう恐怖の言葉聞こえたけど?

「つーか何で俺!? いやいや、こういうのはやりたい奴がやった方がいいんだって! ほら立候補者あれだけいたんだしさ!」
「でも校長指名だからどうしようもないんだよねぇ~。はい、うちのクラスの学級委員に拍手~」

 俺の主張も虚しくパチパチと拍手が起こる。俺に拒否権って存在しないの? しかもみんな納得すんの早いしさ。高校生にしては聞き分け良すぎると思うんですけど。

「まぁアサシンなら仕方ねーか」
「そうね。頼んだわよアサシン!」
「しっかりやれよー!」

 相変わらず男か女かわからないクラスメイトから笑顔で激励される。何その「お前になら学級委員任せられるぜ」みたいな感じ。俺いつの間にかこのクラスで英雄にでもなったのかな。

「どどどど、どうしよう佐伯、俺この学園を盛り上げるなんてムリ――」
「後はキミに託したぞ麻丘ボス! ふふっ!」
「……おう、後は任せろ」

 佐伯の笑顔に俺はボスになることを受け入れた。男って単純だなあ。
 それにしても――どうして校長は俺を指名したんだ? 入学式の一件のせいか?
 考えてもその意図は結局校長にしかわからないことであって、俺は考えるのをやめた。

 委員も決め終わり、今日の授業(と言っていいかは不明)は全て終わった。
 さっさと教室を出ようとしたところを、しののんに呼び止められる。

「えーっと……何でしょうか」
「ゴメンねアサシン、言い忘れてたんだけど……」

 また、嫌な予感がした。

****

「ったく! だから嫌だったんだよ学級委員なんて!」

“放課後各クラスの学級委員が集まる委員会議があるの。今から二階にある二年A組の教室に行って~、そこが委員会室になるからぁ~”
 帰りにしののんに言われたのは委員会議に行けという内容だった。
 学級委員になると定期的にこういうことが他の委員よりも多くあるらしい。最悪だ。やっぱり俺はボスになんてなりたくない。男に二言はないなんていうのは絶対に嘘だ。
 文句を言いながら憂鬱な気分で二年A組の教室のドアを開けると、そこには既に俺以外の学級委員と思われる奴が既に三人揃っていた。

「あっ!」

 その中の一人を見て、思わず声が出る。
 さっきの学園案内中に俺にマヌケと言った、気が強すぎる女がそこにいたのだ。男かもしれないけどとりあえず名前もわからないし女と例えさせてもらうことにする。

「……」

 女は無言で俺を睨んだ。ひるんだ俺は遅れたことを軽く謝りながら空いている席に座る。

「これで、全員かな? じゃあまず最初に自己紹介しようか」

 気まずそうに苦笑いを浮かべながら、四人いる中の一人が口を開いた。

「ボクはD組の学級委員になった東宮青葉ヒガシミヤアオバ。よろしく」

 東宮青葉と名乗る俺の向かい側に座るそいつはいかにも学級委員になりそうな感じの奴だった。
 細フレームの眼鏡をかけて、こういう言い方もアレだけどガリ勉な感じ――いや頭良さそうな感じ! そして見た目だけでいうと、男。

「じゃあ続けて、自己紹介してもらっていいかな?」
「えーへきるが? しょうがないなあ」
「ゴ、ゴメン……」

 東宮は頼りなさそうに見えるけど、この場を頑張って仕切ろうとしてくれている。
 正直すんげー助かる……たった四人しかいないのにこの空気。ビシビシ感じる個性の強さ。俺は扱い切れないしってか一年やっていけるのかこれ。

河合カワイへきるちゃんでーすっ! “かわいいへきる”で覚えてねっ! へきるはC組の学級委員だけど学級委員なんてやったことないからみんなに任せまくっちゃうけどよろしくねっ」

 東宮の隣に座る、ブリッコが過ぎるちょっとうウザめな見た目は女子。
 C組学級委員、河合か……金髪ツインテールっていうラノベやアニメに一人は絶対いるだろうって感じなビジュアルだ。
 河合を見ながらそんなことを考えていると、東宮がチラチラと俺の方を見ている。あ、次の自己紹介は俺の番ってことか。

「俺はA組の学級委員の、麻丘伸也です……役に立たないと思うけど、えっと、よろしく」
「あーっ! 昨日の入学式で目立ってた人だよね!?」
「……ごめん俺入学式の時の記憶ないんだよね」
「何それ変な奴ぅ!」
「まぁまぁその辺にしといて……よろしくね麻丘くん」

 騒ぐ河合を止めてくれる東宮に感謝しながら、俺は作り笑いを浮かべることしか出来なかった。
 そして最後は、俺の隣に座ってるこの気の強すぎる女なんだけど――

「……早乙女忍サオトメシノブ。B組学級委員」

 ブスッとした顔のままそれだけ言うと、すぐに黙って頬杖をついたままプイッとそっぽを向く気の強すぎる女こと早乙女。
 なるほど、めちゃくちゃ感じ悪い。いや知ってたけど! 何ていうか……可愛げがまるでない。
 しかし綺麗に内巻きにされたピンクのロングヘアーからフワッと、さっきと同じいいにおいがした。

「何かめちゃくちゃ感じ悪い奴いる~げろげろ~」

 河合は早乙女の態度が気に食わないようで、本人に聞こえるように大きな声で文句を言い出す始末だ。
 この二人、絶対に合わなそうだ……そう思ってるのは東宮も同じようで、俺と同じように先が不安そうな顔をしている。

「あ、ちなみに俺校長指名で学級委員になったんだけど、みんなは?」

 東宮ばかりに任せるのも気が引けて、何とか雰囲気を良くしようと話題を振ってみる。実際他クラスはどうやって決めたのか気になってたし。

「ボクもだよ! 自分で言うのもアレなんだけど、入試の時の成績が一番だったみたいで、それで校長指名」
「え!? 東宮学年トップの秀才ってこと!? す、すげえ」
「いやいや! 入試の成績だし! すごくなんかないよ」
「トーグーいかにもガリ勉みたいな見た目だもんねっ! ひゃひゃひゃ!」
「えっと、トーグーって……?」
「あり? これってトーグーって読むんじゃないの?」
「ひがしみやだよ! ひ・が・し・み・や! ていうかさっきのボクの自己紹介聞いてた……?」
「めんどくさいからトーグーでいいじゃーん! あ、へきるも校長の指名だよっ! 多分理由は~へきるが一番可愛いから~!」

 やばい。思ったより河合めんどくせえ。
 これ以上こいつを喋らせるのは危険だと思った俺は、愛想よく早乙女にも話しかけてみた。

「早乙女さんは? 校長指名?」
「じゃなきゃ学級委員なんてやるワケないでしょ。馬鹿なの?」
「デスヨネー」

 やばい。思ったより早乙女こええ。
 これ以上こいつに喋りかけるのは危険だと思った俺は、そのまま黙りこくった。

「――じゃあ、とりあえず始めようか。みんなも早く帰りたいだろうし、さっさと終わらせよう」

 多分今この場にいる誰もが、自分が一番帰りたいと思っているに違いない。
 それからは東宮が中心となって話を進めてくれた。俺はしののんから何も聞いてなかったから全然知らなかったけど今日は初日だし軽い顔合わせみたいなものらしい。
 週に一度は学級委員会を開かなきゃいけないみたいで、その曜日を決めたりとか、学園の校則の確認を改めてしたりとか、そういう内容だった。
 河合はウザイけど話し合いには積極的で意見をバンバン言ってくれるから話が進みやすい。
 東宮はうまくまとめてくれるし、俺は頷いてるだけだけど。

 逆に早乙女は終始感じが悪かった。話し合いにも一切参加せずどうでも良いと言わんばかりの態度。
 意見を求めてもキツイ言い方で、一気にその場の空気を最悪にさせる。

「ていうかまだ続くの? あたしもう帰りたいんだけどこんなとこから」

 東宮がノートに話し合ったことをまとめている最中に、早乙女がそう言った。
 散々空気悪くさせといて最後までその態度を貫く早乙女に、さすがの俺もイラッとする。

「――お前さ、そんなんじゃ友達出来ねぇぞ」

 それは、俺が初めて女子に怒ってしまった瞬間だった。早乙女が男だったら違うけど――俺の本能が叫んでいる。早乙女忍は女だと。
 俺の言葉を聞いた早乙女はまっすぐに相変わらず汚物を見るような目つきで俺を見据えて、口を開く。

「いらないわよ! こんな状況、誰も信用出来ないじゃない!」

 想像してたより遥かに大きな声でそう叫んだ早乙女は、それだけ言うと教室を出て行ってしまった。

――待て。
――今何て言った?

「……仲間だ」

 俺の口から思わずこぼれ出てた言葉。
 そのまま俺も教室を飛び出した。

「早乙女っ!」

 見つけた早乙女の背中に向かって名前を呼ぶけど早乙女は振り向かない。でも俺のこの気持ちは止まらなかった。
 そのまま早乙女を追い抜かし、早乙女の前に立ってガッと肩を掴む。想像通りの、華奢な肩だった。

「ちょっと! 離しなさ――」
「お前みたいな奴もいたのか!」
「はぁ!? な、何なのよあんた!」

 興奮して、肩を掴む手に力がこもる。

「感動した! 友達になってくれ!」
「とも……!?」

 この学園の、男と女がわからないという状況。
 学園の方針だから受け入れることが当たり前なんだと思っていた。異常だと思う俺が異常なんだと。
 でも、早乙女は、違った。

 こんな状況で誰も信用出来ないと言った早乙女は俺と同じだ。やっと出会えた仲間なんだ。

「いつまで掴んでんのよ変態っ!」
「いってええ!」

 肩から手を離さない俺を、早乙女が容赦なくビンタする。
 さすが気が強い女。ビンタにも容赦がない。ジンジンと頬が痛んだけどジンジンと心も震えている。

「友達なんて冗談じゃないわ! あたしは男が死ぬほど嫌いなのよ!」
「――俺のこと、男って思ってくれんの?」
「どう見ても男じゃないあんたは」

 ――やばい。俺の中で早乙女の評価が爆上がりしている。

「だからあたしにとっては、こんな状況地獄だわ……」

 そう言う早乙女の表情は深刻で、そしてやっぱりあの目をしていた。
 憎しみがこもったかのような、あの目を。
 何が早乙女をこんな風にさせているのかは、今の俺にはわからなかった。

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