クローバーをあげたくて

たみやえる

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訪れる 2

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 だが、冬木は黙ってうつむいたままピクリともしない。
「ど、どういうこと……」
とうろたえるサヤに、
「冬木君は本当にやっていないんです。お母さん」
と、洸夜が言った。
 そして冬木をひたと見つめると、
「冬木、オレ間違ってた。ボヤ騒ぎのこと、本当はオレだったんです。オレがやったんです。なのに、逃げて……結果冬木君のせいにしてしまいました。本当にごめんなさい」
と一気に言った。
 サヤは驚きすぎたのか目を開き、洸夜と冬木の顔を交互に見ることしかできない。
「うちの両親にはもう話してあります。後日両親共に改めて謝罪に来ます。それから、学校にも……学校のみんなにも、ちゃんと言います」
 冬木の瞳は潤んでいた。
「こうや君、それでもいいの?」
 そんなことをしたら、洸夜の評判はどうなってしまうのか。
 心配だと目を潤ませる冬木を、洸夜は困ったように眉を下げて見た。
「なんで冬木が心配するの。ここ、怒るところでしょ?」
「だって……」
 みんな洸夜に幻滅するかもしれない。嘘つきと罵るかもしれない。
直接責めてくる輩はいなかったけれど、それでも、噂話を根拠に冬木はハブられたし散々白い目で見られた。
 実際にはボヤを発見して知らせただけの善意の第三者だったはずなのに……。
 根も葉もない噂だけが一人歩きしてしまった結果だ。
 今更真実をさらけ出すことに冬木は不安しかない。
 一人で河川敷あんなところで火を使うなんて間違ったことだと冬木だって思う。洸夜だって本当はわかっていたはずなのだ。
 そんなことをしたら危ないと。
 だけど洸夜は、やらずにはいられなかったのだ。
 なんでもできる優等生という彼への評価が、洸夜に考える余裕を奪っていたのかもしれない。
 洸夜が誰かに責められたりなじられたりするくらいなら、
(このまま俺がボヤ騒ぎの犯人ってことで、噂話が立ち消えるのを待てばいいんじゃないかな……)
 なんてふうに冬木は思い始めている。
 正座した膝の上でぎゅっと握った冬木の手の内側にじんわり嫌な汗がにじみだす。
 その手を急に洸夜が掬い上げ、両手で包み込んできた。
 手のひらは手汗だらけ。とても洸夜に触ってもらいたい状態ではない。
 驚いて引こうとするのに、洸夜はがっちりと両手で冬木の手を包み込んで離さなかった。
「これまでが間違ってた。その間違いを正すだけ。理由もなく冬木のこと傷つけてた。謝っても謝りきれないよ。オレはずぅっと卑怯で嘘つきだった自分を終わりにしたいんだ」
「でも、怖いよ」
と言う冬木の目を捉えてうなずいてから、洸夜はちょっぴり目を伏せた。



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