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訪れる 1
しおりを挟むそして……。
自然教室を終えて無事帰ったその翌日。
代休のため、家でゴロゴロしていた冬木の部屋のドアがこんこんとノックされた。
薄く開いて顔を覗かせたのは冬木の母サヤだ。
「何」
顔をしかめてドアを閉めようとする冬木にサヤが早口で、
「冬木に、お客さまが来てるんだけどいいかな」
と言ってくる。
「お客さま?」
小学生の自分に〈お客さま〉なんて……とキュッと眉を寄せた冬木の表情が、サヤのうしろから顔をのぞかせた人物に、
「こうや君……」
と驚愕に変わった。
戸惑う冬木の前に立ったのは洸夜だった。
開口一番、
「ごめん」
と深々と頭を下げる美少年に動揺した様子のサヤが、
「えぇっと、ジュースでも持ってこようかしら。ね?」
と階段を降りて行こうとする。それを洸夜が「お母さんにも聞いてほしいです」と引き留めた。
冬木の部屋に入った洸夜は床に敷かれたカーペットに額を擦り付け頭を下げた。
洸夜の前には目をパチクリさせてポカンと口を開ける母のサヤと弱ったように目をしょぼつかせる冬木が仲良く並んで、なぜかこちらもかしこまって正座している。
「そ、そんなふうにしないで。どうぞ顔を上げて。ね? あはは、おばさん困っちゃうなぁ」
サヤが声をかけても、平身低頭したままの洸夜に、冬木親子は弱って顔を見合わせた。
「一体何したのよ。こんなカッコイイ子に頭下げさせるなんて」
ヒソヒソ言ったサヤが息子の太ももを軽くつねる。
「痛っ。俺は何も……」
と眉を寄せた冬木は、母親から目を逸らして不安気に洸夜を見た。
洸夜と冬木が見つめあう。
会話のない状態に耐えきれなくなった様子のサヤが喋りだした。
「ごめんなさいね、ホント喋らなくて愛想無しだし……あなたみたいな立派な子が訪ねてくれるなんて。えっと学年違うみたいだけど、お友達なの? どうやって知り合ったのかな?」
「母さん、ちょっと黙ってて」
「なんで止めるのよ。大体、あんた学校の方は大丈夫なの? 自然学校は無事行けたみたいだけど、ほら、あのボヤ騒ぎのこととか」
「だから、黙って」
と、冬木が制してもサヤは相当このことで溜め込んでいたのだろう、不安や不満が溢れて止まらない様子だ。
「何よ、その言い方。心配してるのよ? あのね、この子ったらちょっと前に河川敷で火遊びしちゃってね。周りの草に火が移って慌てて大人を呼んでのね。ボヤで済んだんだけど、あの時誰も見つけられなくて火が消せなかったらどうなってたかと思うとゾッとしちゃう……」
「俺はやってない!」
膝を握り締めた冬木が大声を出し、ビクッとしたサヤは「あ……」と洸夜の顔を見て、気まずく口を閉じた。
母の視線につられたのか冬木も同じように洸夜の顔を見、しおしおとうなだれた。
なんとも言えない空気がながれる。
しばらく沈黙の後、
「そうです。冬木君は何にもやっていません」
と、言ったのは洸夜だった。
洸夜がパッと音が出そうな勢いでもう一度床に額を擦り付け、その勢いに気圧されたサヤは助けを求めるように自分の息子を見た。
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