クローバーをあげたくて

たみやえる

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告白する 2

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「では、聞きましょう。私も下に降りて聞きます」
壇上にかけられた階段を降りてゆく校長先生の後に続いて降りようとした冬木の手を洸夜がパッと握りしめた。
 ざわついていた講堂内が一斉にシーンとなった。
 洸夜がマイクを握り直したからだ。
「えぇっと」
と言ってからスゥッと息を吸い込んだ洸夜がチラッと隣に立つ冬木を見る。
 冬木もキュッと唇を引き結んで洸夜のことを見る。
 洸夜の口角が少しだけ持ち上がって……彼は話だした。
「……結果から言います。ボヤ騒ぎの本当の犯人は僕、新堂洸夜です。自然教室で火を起こさなければならない、はんごう炊飯をグループリーダーとして失敗したくなくて、こっそり河川敷で練習していました。僕は、みんなからなんでもできる優秀なヤツ、と思われているから。そのイメージを裏切りたくなかったから」
 生徒たちが、先生たちが驚きのあまり目を開き口をだらんと開け洸夜の顔を見つめてくる。
 その様はちょっぴり滑稽で、こんな話題で、こんな場所でなければ笑ってしまっていたかもしれないと洸夜は頭の隅で思った。
――自分が当事者でなければ。
 ひと回り小さな冬木の手のひらがキュッと洸夜のそれを締め付けて、洸夜は下唇をちょっぴり噛んで自分の弱い心に鞭を入れる。
「もちろん自分の周りに生えていた雑草は刈り取って火がうっかり燃え広がらないように注意したつもりです。でも、誰かが自分の方にくることに気がついて慌てて火を消して逃げた時、実はその日がちゃんと消えていなかったことに僕は気づいていませんでした」
チラッと横目で隣を見ると、冬木は決死の白茶けた顔色でひたすら前を向いていた。
 なんともいえないあたたかな何かが洸夜の胸の中を満たしてゆく……。
「西條君が来なければ、単なるボヤ騒ぎでは済まなかったでしょう。そうしたら僕は放火魔になっていたかもしれません。そういう意味で西條君は僕の恩人なのです。なのに、その彼が周りから犯人と思われて影であれこれ言われるのを僕は黙って見ていた……卑怯者です。西條君は今回の自然教室で崖から落ちかけた六年生の女子を助けてくれました。僕は自分が恥ずかしい。みなさん、本当に申し訳ありませんでした。そして西條君。本当に、僕が悪かった」
と言うと、洸夜は全教員、全校生徒の前で深々と頭を下げた。
 彼の手が緊張と恐怖からぶるぶると震えていたことは、彼の手を握りしめていた冬木しか知らない……。


 不思議と、洸夜のことを非難する声は多くなかった。

 イケメンで優等生でなんでも出来るとやっかまれることもあった洸夜が自分の間違った行いを全校生徒の前で白状したのが良かったのかもしれない。弱いところや卑怯なところも全部さらけ出した彼に、かえって今まで反発していた男子たちも心酔してしまったようで……。

 この後、洸夜は生徒会長を歴任することになる。

 まぁ、それはともかく。

 この事件をきっかけに、洸夜と冬木はお互いの家に泊まり合うほどの仲良しになる。

 自分の弱さを丸ごと飲み込んでくれた冬木に洸夜の方が密かに恋心を自覚するのはすぐのことで……。

 時を経てふたりは同居し始め、恋人になり……。
 もしかしたら、一生を共にするパートナーになるかもしれないけれど。

 それはまだ未来の話。






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