クローバーをあげたくて

たみやえる

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時は過ぎて 1

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 それから十三年経った、ある休日のこと。

 洸夜が運転する車にのって一時間。たどり着いたのは最近郊外にできた巨大なショッピングモール。
 何層も重なるエスカレーターの上は吹き抜けで、アクリルの天井が張られている。
 空の青さが眩しかった。
(雨の日ならエスカレーターになったまま、落ちてくる雨粒を見上げられるのか)
とアクリル越しの空を見ている冬木の左頬を、つんと洸夜がつついた。
「ほら、この間テレビで見たGODIVAのチョコドリンク。ここ、出店してんだろ。新作食べたくってさ」
 ニコッと微笑まれれば、普段冷たいと言われがちな冬木の切長の目にもやさしさが灯る。
 上からふりそそぐ冬の光はプラスチックのように透明で初々しい感じ。
 洸夜の白い頬がその光を反射している。まるで彼自体が発光しているようで眩しかった。
 ふと顔を上げると、上の階の手すりにもたれながら仲良く会話していたカップルが、ぽかんとした顔で洸夜の美貌に見入っているのが見えた。
 働きはじめてから、洸夜の表情には学生の頃には見られなかった陰影がプラスされて……仕事、大変そうだな、大丈夫かなとか心配もしているのだけれど……より美貌に磨きがかかっている気がする。仕事の充実が彼を輝かせているのかもしれない。
(社会人二年目……だもんな)
と冬木は、ほんの少しの寂しさをごくりと飲み下す。
 洸夜は去年、デザイン会社に就職した。
 てっきり、彼は親の経営する化粧品会社に就職するものばかりだと思っていた。
 まぁ、その化粧品会社の商品パッケージを洸夜は担当しているみたいだから、親の商売と完全に別とは言えないのか。
 あ、これはちょっと意地悪な見方だ。
 親の七光りで仕事してる、的な?
 洸夜はそう言うのが嫌で、親の会社を就職先にしなかったんだ。
 でも、勝手に憶測して言いたいこと言うヤツはいるわけで。きっと洸夜は冬木が知らないところで色々闘ってた。そして結果を出しているんだろう。
 ……追いつきたいな、と思う。
 いつかこの生まれつき開いたままの二歳差のこの距離を飛び越えて、洸夜を追いつき追い越して手を握り引っ張り、守っていける存在になりたい。



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