最初のオトコ

たみやえる

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——荒木はもう新幹線に乗ったのだろうか。それとも、私を誘うくらいだからホテルに泊まりなのか。
(このまま寝るには……酒の量が足りないなぁ)
 ふらりと寄った自宅近くのコンビニ。缶ビールと柿ピーを調達する。店の外に出ると、葉桜の下に荒木が立っていた。

 翌日、土曜の朝。
 剥き出しになった背中に頬擦りされる感触に(どうしてこうなっちゃったんだろう……)とこま子は戸惑っていた。
 うつ伏せ寝のこま子の頭の横に手をついた荒木が伸び上がるようにしてこめかみにキスしてくる。
「……結婚したなんて嘘ついて、酷いなぁ」
 甘くなじりながら荒木が布団を捲り上げる。
 仰向けにひっくり返されそうになり、前から全身を見られる恥ずかしさでジタバタするこま子のことを、荒木が、ぎゅうっ……と抱きしめた。
「やっ、ちょっと……力強過ぎ! 苦しいってば」
「男の純情をもてあそんだ罰や。もっと気持ち良ぅして俺から離れられんようにしてやる」
 何をされるかと身を捩るこま子の脇腹を荒木がしつこくくすぐってくるので、こま子は笑いが止まらない。荒木の手から逃げようと身をくねらせているうちに二人してベッドの下に落ちてしまった。
「くっ、ふふ……荒木の関西弁、懐かしー……」
「よぅ出さん。怖がられるもん。出すときは、本気の時だけだな」
 あらら、関西弁が途中から抜けた。
 笑いを引っ込め荒木が真剣な目で見てくる。頬が熱くなるのを見られるのが嫌でこま子は顔を背けた。
 ……そういえば、以前まえに荒木の関西弁を聞いたのは、学生時代のあの夜、身体を重ねている最中だった……。
 予想外に過去の記憶が鮮明に思い出されてますます顔が熱い。たまらず覆った両手を、荒木に引き剥がされた。
「なぁ、コマコマ。昔、なんで逃げた?」
 荒木は、まさに学生時代のあの一夜のことを言っているのだった。
「……別に」
 責められている。こま子は床に落ちた掛け布団を引き寄せてゴロゴロ転がって体に巻きつけながら荒木と距離をとった。ベッドの横に置いていたローテーブルが邪魔で止まると、すかさず荒木の腕の中に引き戻された。
「……なぁ、ヨかったろ?」
「っ、恥ずかしーなぁっ。そういうこと、わざわざ聞くかなっ?」
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