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新堂洸夜の誕生会
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当然のような顔で、「今日は泊まらせてください」とうちの両親に頭を下げる冬木に(これまでモヤモヤしてた時間を返してくれ)とオレは心の中で悪態をついていた。
あてがわれた客間(当然のように俺たちは同室だった)の入り口のドアでベッドに腰掛けた冬木を振り返り、
「じゃあ、行ってくるから。先に寝てろよ」
と言うと、スマホを確認していた冬木が顔を上げる。
「家族会議、頑張ってきてください」
「オレが頑張るところは何もないけどな」
「うっかりでも、彼女と結婚するとか言わないで」
「バカ言うな」
半分呆れて半分本気で拳を振り上げて見せると、冬木がくしゃりと表情を崩した。すがりつくようなその顔を見るのは初めてで、オレは一瞬息を忘れる。
だが、そんなコイツの必死な顔を見ても、オレの中の心の霧は晴れていないのだった。わざわざ両親に挨拶に来ていた冬木。しかも親の会社の社長の座を狙っているなんて話を聞いた今でも、オレはビクビクしていた。冬木に「やっぱり別れましょう」と言われるんじゃないかって。
つまり、冬木のことを信頼しきれないでいる。
それは、オレたちの生活についての取り決めを、ここ二ヶ月の間に冬木が変えようとしていることが理由だった。オレが不満を抱いていると知っているだろうに……。
あぁ……。
やっぱりお前の考えてること、分からないよ。
「寝ないで待ってます」
「いや、いいよ。遅くなるかもしれないし……」
オレは拳を下げた。視線をさまよわせていると、その俺の手を冬木が両手で握る。
「戻ってきても眠らせないから」
目線だけあげると、冬木の眼光がオレの胸に鋭く突き刺さってきてドキッとする。
「なっ……お前」
かぁぁっつと顔面に血が昇る。うわー、うわー……ヤバい。これから家族に会うというのになんだか物凄いことを言われた気がする。
いや、ここオレの実家だし。
さすがに無いだろ? いや、無いだろ。
両親と兄が同じ屋根の下にいるんだぞ?
生まれてから大学まで、それなりの思い出もあったりする、そんな場所で……ナイナイない。
顔面どころか下腹部にまで巡り始めた血流をいったん堰き止めるイメージをする。
いやほんと、仮に部屋に戻ってきてガッついたのに拒絶されたら、明日の朝どんな顔で家族に顔を合わせたらいいか分からない。
ドアを開けたまま立ち止まっていると、冬木に「行ってください」と急かされてしまった。
「あ、ああ……」
それでもぐずぐずしていると、
「さぁ、行って。その後俺たちも、話し合わなきゃいけないことあるから」
と言われ、顔から火が出る思いになってうつむいた。恥ずかしいな! オレは猿か。少しそれっぽいこと言われただけで舞い上がって、もうアッチのことしか考えられなくなってる……。
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