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第一部 「エルフの禁呪」編
その人はエルフを脱出させ、「雷の女帝のしもべ」は禁呪の根源に向かう。
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「お恥ずかしい次第だ……」
とメイガス魔導師が言った。
「里に到着したルシアとわたしは、エルフの評議会を召集し、これまでのいきさつを説明した。
そして、アンバランサーの協力で、禁呪の呪いを祓うことができることも伝えたのだ。
しかし……」
「納得してもらえなかったのですか」
「大部分のエルフは、われわれの知らせに喜び、君にここに来てもらうことに賛成したのだが……」
ルシア先生が続けた。
「どうしても、同意しない人たちがいたのです」
「なんで? それで、まるくおさまるのに……」
とジーナ。
「エルフの誇りは、ほかの種族の力をかりることを許さない。何処の馬の骨かもわからない、よそ者のアンバランサーなぞに頼るなんて、エルフの名折れだ。そう強硬に反対したのです」
「わたしなぞは、裏切り者呼ばわりだ」
『まあ、それは、事実、そうだからな……なにも間違ってはいないな』
と、わたしの頭の中で、ヴリトラ様が辛口にコメントした。
「ルシアについても、アンバランサーにたぶらかされた痴れ者と罵ってなあ」
『まあ、それもある意味そうか?』
(ヴリトラ様、怒りますよ!)
「最後まで、反対し続けたのは、わたしたちの中でも特に強い魔力を持つ、三人のエルフでした……」
「かれらは、それだけ、自らの魔法に自信があったのだろう。矜持も高く、どんな説得にも応じなかった」
「話がまとまらないので、最終的に、このエルフの里にいるエルフ族全員で、評決をとることになりました。
これまでも、重大な決め事は、わたしたちはそうやってきたから。
その結果には、たとえ反対でも従わなければいけないし、それができないなら、ここを離れるしかないのです。
それがエルフの掟です」
「評決の結果、彼らは敗れた。
禁呪を再度使うことは中止し、君をこの地に招くことに決定した。
それで、わたしとライラが、君に連絡をとろうとしたところ」
「彼らは暴走しました。この世界樹の最上部にある、魔水晶石の間に立てこもると、世界樹から注がれる魔水晶石の魔力、エルランディア以外のダンジョンでこれまでに集めた魔力と、自らの持つ魔力をすべて注ぎ込み、禁呪を発動したのです……」
「その結果がこれか……」
「今、魔水晶石の間がどうなってしまっているかはわからない。
だが、そこから爆発的に発生して雪崩れ落ちてくる、あの、おぞましい霧にふれたエルフはみな、石と化して命を失った。
われわれは、護りの結界を張ったが、もはやこの場から動くこともできず、ただ禁呪の霧から生き残りのエルフを守ることしかできなかったのだ」
「よく、そんな中で、ぼくのところに連絡ができましたね」
「ルシアのおかげだ」
とメイガス魔導師は、ルシア先生に目を向けた。
「君は、ルシアのクリスを持っている。そして、ルシアとの間に、いろいろな意味で、とてもつよい紐帯が形成されている。そのために、ルシアの事告げ鳥を、あの禁呪を通してさえ、君のもとへ、送ることができたようだね」
「でも、危ないところでしたよ。ぼくのところに来た事告げ鳥は、見るも無残なありさまで、一言用件を告げた後、石になって砕けました」
「ルシアには、感謝してもしきれない。事告げ鳥を君に送るために、彼女は、自分の持つほぼすべての魔力を使い果たしたのだ。
『届いた!』そう叫んだ後、彼女は精も根も尽き果てて倒れて、さきほどまで伏していたのだよ」
「わたしには、わかりました。わたしの事告げ鳥があなたに届き、そしてあなたが、かならずここに来てくれることが……」
「うん、泣かせるねえ、女帝、健気ではないか」
ヴリトラ様がコメントする。
ヴリトラ様、すこし静かにしていてもらえませんか?
「あと少しで、結界を張るわれわれの魔力も、体力もつきはてるところだったよ……」
メイガス魔導師が、
「これが、いきさつだ。すまないな、アンバランサー」
と頭を下げた。
これまでの話をきいていた、回りのエルフたちも、深く頭を下げるのだった。
「いまから、ぼくたちがしなければならないのは」
と、ユウが言った。
「まず、エルフのみなさんを、安全な場所に避難させることだ」
「避難といっても、ここには百人以上、いるのだぞ」
「大丈夫だ」
と、わたしの口を借りて、ヴリトラ様が告げた。
「列車が地下のステーションまで来ている。二両連結で来たから、十分乗れる」
エルフが驚いた声をあげた。
「あれが、まだ、動くのか? 崩落もあると聞いたぞ」
「わたしたちは、あれで、シンドゥーからここまで来たのだ。
崩落はすべて、アンバランサーが吹き飛ばした。
電力も途中まで来ている」
「おお!」
「皆さんの、回復した魔力をそそぎこんで、護りの結界のトンネルを、ステーションまでのばしてください。ぼくが、みなさんを、列車まで飛ばしますので」
ユウは続けた。
「みなさんが乗り込んだら、列車を押し出します。電力があるところまで、進めますから、そこから先はなんとかなるでしょう」
「それにしても、操縦は必要だろう?」
メイガス魔導師が聞く。
「それは、こうすれば良いのだ」
ヴリトラ様がいい、
「ひゃっ!」
わたしの首筋がもぞもぞ動いた。
そして、わたしの首筋から、
しゅるり!
赤と黒のまだら模様の蜘蛛が走り出て、
「うおっ!」
メイガス魔道士の首筋に取りついた!
メイガス魔道士は、とたんに目をとじると、ぶるぶると体をふるわせ、そして、ぱちりと目を開く。
「これで、わたしとメイガスの間にはつながりが生じた」
と、ヴリトラ様の声が、メイガス魔道士の口から漏れる。
「わたしが、アンバランサーの力を中継し、列車を誘導する」
……ということは、ヴリトラ様の蜘蛛は、メイガス魔道士の方に行っちゃったんだ。
よかった、よかった。
わたしがそう思って、ほっとすると
「だから、そうじゃけんにするなというのに」
「うわっ!」
あいかわらず、ヴリトラ様の声が頭に響く。
えっ?
どうして?
「わたしは神だぞ。一度に、たったの蜘蛛一匹しか、使えないわけがなかろう」
ジーナが驚いたように言った。
「蜘蛛が、二匹に分裂しちゃったよ……」
ということは
「うん、娘よ、まだしばらくは、わたしたちは、ともに進もうな」
はいはい。
もう、どこへでもついてきてください。
でも、そのぶん、きっちり働いてくださいね。
「神に対して、なかなか言うではないか……まあ、そういうところが、気に入っておるわけだがな」
「そして、もうひとつ、しなければならないのは」
と、ユウが言う。
「あの禁呪をなんとか解除することだ。
そのためには、どうしても、魔水晶石の間にいかなければならないと思う」
「「そうだ」」
と、ヴリトラ様の声が、わたしの口と、メイガス魔導師の口から同時に出て重なった。
「「おそらく、禁呪を駆動したエルフはもう生きていない。
しかし、あの空間でなにかが起きている。
禁呪を解除するには、その地点に行く必要があるとわたしも思う」」
「ユウさん」
とルシア先生が、ユウの目をみて、強い口調で行った。
「わたしも、そこに行くわ。つれて行ってください」
ユウはルシア先生をじっと見た。
ユウの顔を、しばし、いろいろな考えがよぎったようだが、
『うむ、かれは、なによりルシアの安全を案じているようだな……』
とヴリトラ様が、わたしの頭の中で言った。
『ルシアの方も、アンバランサーの身を心から案じておるぞ』
いや、ヴリトラ様、そんな解説はいいですから。
やがて、ユウは意を決し、微笑んで
「では、いっしょに行きましょう、ルシアさん」
「はい」
ルシア先生はうなずいた。
「「わたしたちも、行きますから!!」
わたしとジーナが同時に叫んだ。
ユウとルシア先生はそんなわたしたちをみて、にこりとし
「うん、ではみんなで行くとしようか」
「「はい!!」」
生き残ったエルフ族の脱出が始まった。
まず、回復したエルフ全員の魔力を使って、護りの結界のトンネルを、列車のある位置まで伸ばしていく。
メイガス魔導師が先頭に立ち、結界を、前進させていくのだった。
すでに、禁呪の霧はステーションの中まで入り込んでいて、列車が止まっている場所(「ほおむ」というらしい)に迫っていたが、なんとかトンネルを、列車まで接続することができた。メイガス魔導師を通じて発揮されるユウの力と、ヴリトラ様の力が、エルフたちの魔力に加わって、それを可能にしたのだ。
「よし、つながった!」
「列車の入り口をあけるぞ」
とヴリトラ様がいい、
「では、みなさんをそこまで飛ばしますから」
ユウがいい、
「うおっ?」
エルフたちの体が浮かび上がると、まるで流れるように次々に、護りのトンネルの中を列車に向けて移動していく。
数刻ののち、全員がぶじ列車に乗り込むことができ、エルフの集会所に残ったのはわれわれ四人だけとなった。
「感謝するよ、アンバランサー。ルシア、すまないが、よろしく頼む」
わたしの口から、中継されてメイガス魔道士の声がした。
「では、出発しましょう。力を送ります」
ユウがいい、そして、エルフ族を載せた列車は動き出す。
同時に、ここからステーションまでの、護りの結界も消滅する。
エルフ族がいなくなり、しんと静まった、集会場で。
ユウ、ルシア先生、わたし、ジーナの四人は、おたがいをみつめた。
「いよいよだ。なんだか、いつのまにか、たいへんなことになってしまったね」
と、いつもの調子で、ユウ。
「わたしの選択はまちがっていなかった。ありがとう、ユウさん」
と、ルシア先生。
「さあ、がんばりますか!/おう!」
と、ジーナ/イリニスティス。
「ひょっとして、上に行ったらさあ」
とわたしが言いかけると
「だから、あんたのそれは、やめて! ライラ、あんたはつくづく学ばないねえ」
「あたし、ジーナに言われたくないよ!」
「娘よ、やはり君たちは面白いなあ」
そして、わたしたちは、禁呪の源である魔水晶石の間に、突入する。
とメイガス魔導師が言った。
「里に到着したルシアとわたしは、エルフの評議会を召集し、これまでのいきさつを説明した。
そして、アンバランサーの協力で、禁呪の呪いを祓うことができることも伝えたのだ。
しかし……」
「納得してもらえなかったのですか」
「大部分のエルフは、われわれの知らせに喜び、君にここに来てもらうことに賛成したのだが……」
ルシア先生が続けた。
「どうしても、同意しない人たちがいたのです」
「なんで? それで、まるくおさまるのに……」
とジーナ。
「エルフの誇りは、ほかの種族の力をかりることを許さない。何処の馬の骨かもわからない、よそ者のアンバランサーなぞに頼るなんて、エルフの名折れだ。そう強硬に反対したのです」
「わたしなぞは、裏切り者呼ばわりだ」
『まあ、それは、事実、そうだからな……なにも間違ってはいないな』
と、わたしの頭の中で、ヴリトラ様が辛口にコメントした。
「ルシアについても、アンバランサーにたぶらかされた痴れ者と罵ってなあ」
『まあ、それもある意味そうか?』
(ヴリトラ様、怒りますよ!)
「最後まで、反対し続けたのは、わたしたちの中でも特に強い魔力を持つ、三人のエルフでした……」
「かれらは、それだけ、自らの魔法に自信があったのだろう。矜持も高く、どんな説得にも応じなかった」
「話がまとまらないので、最終的に、このエルフの里にいるエルフ族全員で、評決をとることになりました。
これまでも、重大な決め事は、わたしたちはそうやってきたから。
その結果には、たとえ反対でも従わなければいけないし、それができないなら、ここを離れるしかないのです。
それがエルフの掟です」
「評決の結果、彼らは敗れた。
禁呪を再度使うことは中止し、君をこの地に招くことに決定した。
それで、わたしとライラが、君に連絡をとろうとしたところ」
「彼らは暴走しました。この世界樹の最上部にある、魔水晶石の間に立てこもると、世界樹から注がれる魔水晶石の魔力、エルランディア以外のダンジョンでこれまでに集めた魔力と、自らの持つ魔力をすべて注ぎ込み、禁呪を発動したのです……」
「その結果がこれか……」
「今、魔水晶石の間がどうなってしまっているかはわからない。
だが、そこから爆発的に発生して雪崩れ落ちてくる、あの、おぞましい霧にふれたエルフはみな、石と化して命を失った。
われわれは、護りの結界を張ったが、もはやこの場から動くこともできず、ただ禁呪の霧から生き残りのエルフを守ることしかできなかったのだ」
「よく、そんな中で、ぼくのところに連絡ができましたね」
「ルシアのおかげだ」
とメイガス魔導師は、ルシア先生に目を向けた。
「君は、ルシアのクリスを持っている。そして、ルシアとの間に、いろいろな意味で、とてもつよい紐帯が形成されている。そのために、ルシアの事告げ鳥を、あの禁呪を通してさえ、君のもとへ、送ることができたようだね」
「でも、危ないところでしたよ。ぼくのところに来た事告げ鳥は、見るも無残なありさまで、一言用件を告げた後、石になって砕けました」
「ルシアには、感謝してもしきれない。事告げ鳥を君に送るために、彼女は、自分の持つほぼすべての魔力を使い果たしたのだ。
『届いた!』そう叫んだ後、彼女は精も根も尽き果てて倒れて、さきほどまで伏していたのだよ」
「わたしには、わかりました。わたしの事告げ鳥があなたに届き、そしてあなたが、かならずここに来てくれることが……」
「うん、泣かせるねえ、女帝、健気ではないか」
ヴリトラ様がコメントする。
ヴリトラ様、すこし静かにしていてもらえませんか?
「あと少しで、結界を張るわれわれの魔力も、体力もつきはてるところだったよ……」
メイガス魔導師が、
「これが、いきさつだ。すまないな、アンバランサー」
と頭を下げた。
これまでの話をきいていた、回りのエルフたちも、深く頭を下げるのだった。
「いまから、ぼくたちがしなければならないのは」
と、ユウが言った。
「まず、エルフのみなさんを、安全な場所に避難させることだ」
「避難といっても、ここには百人以上、いるのだぞ」
「大丈夫だ」
と、わたしの口を借りて、ヴリトラ様が告げた。
「列車が地下のステーションまで来ている。二両連結で来たから、十分乗れる」
エルフが驚いた声をあげた。
「あれが、まだ、動くのか? 崩落もあると聞いたぞ」
「わたしたちは、あれで、シンドゥーからここまで来たのだ。
崩落はすべて、アンバランサーが吹き飛ばした。
電力も途中まで来ている」
「おお!」
「皆さんの、回復した魔力をそそぎこんで、護りの結界のトンネルを、ステーションまでのばしてください。ぼくが、みなさんを、列車まで飛ばしますので」
ユウは続けた。
「みなさんが乗り込んだら、列車を押し出します。電力があるところまで、進めますから、そこから先はなんとかなるでしょう」
「それにしても、操縦は必要だろう?」
メイガス魔導師が聞く。
「それは、こうすれば良いのだ」
ヴリトラ様がいい、
「ひゃっ!」
わたしの首筋がもぞもぞ動いた。
そして、わたしの首筋から、
しゅるり!
赤と黒のまだら模様の蜘蛛が走り出て、
「うおっ!」
メイガス魔道士の首筋に取りついた!
メイガス魔道士は、とたんに目をとじると、ぶるぶると体をふるわせ、そして、ぱちりと目を開く。
「これで、わたしとメイガスの間にはつながりが生じた」
と、ヴリトラ様の声が、メイガス魔道士の口から漏れる。
「わたしが、アンバランサーの力を中継し、列車を誘導する」
……ということは、ヴリトラ様の蜘蛛は、メイガス魔道士の方に行っちゃったんだ。
よかった、よかった。
わたしがそう思って、ほっとすると
「だから、そうじゃけんにするなというのに」
「うわっ!」
あいかわらず、ヴリトラ様の声が頭に響く。
えっ?
どうして?
「わたしは神だぞ。一度に、たったの蜘蛛一匹しか、使えないわけがなかろう」
ジーナが驚いたように言った。
「蜘蛛が、二匹に分裂しちゃったよ……」
ということは
「うん、娘よ、まだしばらくは、わたしたちは、ともに進もうな」
はいはい。
もう、どこへでもついてきてください。
でも、そのぶん、きっちり働いてくださいね。
「神に対して、なかなか言うではないか……まあ、そういうところが、気に入っておるわけだがな」
「そして、もうひとつ、しなければならないのは」
と、ユウが言う。
「あの禁呪をなんとか解除することだ。
そのためには、どうしても、魔水晶石の間にいかなければならないと思う」
「「そうだ」」
と、ヴリトラ様の声が、わたしの口と、メイガス魔導師の口から同時に出て重なった。
「「おそらく、禁呪を駆動したエルフはもう生きていない。
しかし、あの空間でなにかが起きている。
禁呪を解除するには、その地点に行く必要があるとわたしも思う」」
「ユウさん」
とルシア先生が、ユウの目をみて、強い口調で行った。
「わたしも、そこに行くわ。つれて行ってください」
ユウはルシア先生をじっと見た。
ユウの顔を、しばし、いろいろな考えがよぎったようだが、
『うむ、かれは、なによりルシアの安全を案じているようだな……』
とヴリトラ様が、わたしの頭の中で言った。
『ルシアの方も、アンバランサーの身を心から案じておるぞ』
いや、ヴリトラ様、そんな解説はいいですから。
やがて、ユウは意を決し、微笑んで
「では、いっしょに行きましょう、ルシアさん」
「はい」
ルシア先生はうなずいた。
「「わたしたちも、行きますから!!」
わたしとジーナが同時に叫んだ。
ユウとルシア先生はそんなわたしたちをみて、にこりとし
「うん、ではみんなで行くとしようか」
「「はい!!」」
生き残ったエルフ族の脱出が始まった。
まず、回復したエルフ全員の魔力を使って、護りの結界のトンネルを、列車のある位置まで伸ばしていく。
メイガス魔導師が先頭に立ち、結界を、前進させていくのだった。
すでに、禁呪の霧はステーションの中まで入り込んでいて、列車が止まっている場所(「ほおむ」というらしい)に迫っていたが、なんとかトンネルを、列車まで接続することができた。メイガス魔導師を通じて発揮されるユウの力と、ヴリトラ様の力が、エルフたちの魔力に加わって、それを可能にしたのだ。
「よし、つながった!」
「列車の入り口をあけるぞ」
とヴリトラ様がいい、
「では、みなさんをそこまで飛ばしますから」
ユウがいい、
「うおっ?」
エルフたちの体が浮かび上がると、まるで流れるように次々に、護りのトンネルの中を列車に向けて移動していく。
数刻ののち、全員がぶじ列車に乗り込むことができ、エルフの集会所に残ったのはわれわれ四人だけとなった。
「感謝するよ、アンバランサー。ルシア、すまないが、よろしく頼む」
わたしの口から、中継されてメイガス魔道士の声がした。
「では、出発しましょう。力を送ります」
ユウがいい、そして、エルフ族を載せた列車は動き出す。
同時に、ここからステーションまでの、護りの結界も消滅する。
エルフ族がいなくなり、しんと静まった、集会場で。
ユウ、ルシア先生、わたし、ジーナの四人は、おたがいをみつめた。
「いよいよだ。なんだか、いつのまにか、たいへんなことになってしまったね」
と、いつもの調子で、ユウ。
「わたしの選択はまちがっていなかった。ありがとう、ユウさん」
と、ルシア先生。
「さあ、がんばりますか!/おう!」
と、ジーナ/イリニスティス。
「ひょっとして、上に行ったらさあ」
とわたしが言いかけると
「だから、あんたのそれは、やめて! ライラ、あんたはつくづく学ばないねえ」
「あたし、ジーナに言われたくないよ!」
「娘よ、やはり君たちは面白いなあ」
そして、わたしたちは、禁呪の源である魔水晶石の間に、突入する。
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