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「えっ……」
確かにすぐ思い出せなかったが、シュワルツ様に言い方が優しそうでいて……とてもキツい事を言われたと思った。
貰った物を忘れてしまっていた訳じゃ無かったけれど……今はそう思われても仕方がなかったかも知れない。
貰い物をすぐ忘れてしまうっていう言葉が図星で心にグサリと棘が刺さった様な気持ちになった。
何故だか手が震えだして今まで美味しかった料理がどんな風に美味しかったのか思い出せなくなってくる。
「兄さん!!本当に何の話をしているんだ!!エネに大した物なんか何にもあげてないよ!!」
ニコル先生がいよいよシュワルツ様に激高していたが、そんなニコル先生に対しシュワルツ様は少し残念そうな目でニコル先生を見ていた。
それにしても、先月はニコル先生に気軽に沢山のパンを貰ってしまい図々しかったかも知れない……よく考えればニコル先生にも余計な心配をさせてしまって、今日は自宅にまでノコノコやって来て食事を頂いている……。
それが、俺にとってはおかしい事だとは思わなかったが、俺の考えがそもそもおかしい事だったかも知れない。
侯爵家に招かれて図々しく田舎の平民の俺がやって来たから侯爵様達は常識が通用しない俺にびっくりしているのかも知れない。
ニコル先生はこんな俺にいつも優しくて何でも答えてくれるから俺はずっと甘えていたんだろうな。
……俺はもうここには居られない。先生甘えてしまってごめんなさい。
「ニコル先生……私の事を心配して下さって有難う御座いました。そしてご家族の方々とご一緒に食事をさせて頂き、お邪魔してしまったようで……大変ご迷惑をおかけしました。お食事の途中ですが、これて失礼したいと思います」
少し涙が出そうになったが、グッと堪えて何とか言えた。
すぐに席を立ち、足速に玄関の方に向かう。
広い家の中で迷いそうだったが、スムーズに玄関まで辿り着いてホッとする。
執事さんが「エネ様、食事がまだ終わっていないのですが、お帰りになられるのですか?」と聞いてきたので、「帰りますので門を開けて欲しいです」と伝えるとお送り致しますと言って庭先の門まで先導してくれた。
門から出る時、ニコル先生が「エネー待って!!お願いだ!!待ってくれ!!」と少し離れた所から聞こえてきた。
執事さんが途中で「ニコル様が呼んでおりますが……」と聞いてくれたが、俺は顔だけ左右に振ってお辞儀をしてから門を出た。
先生が招いてくれたお食事の席を途中退席してしまった今はとてもニコル先生に顔向けが出来ない。
そう思って門を出たらそのまま走りだしてしまった。
先生……俺は出来るだけ失礼のない様に頑張ったんですけど、先生のご家族に嫌われてしまってごめんなさい。
思いっきり走って帰ったので、どんな道で帰ったが覚えてないが、家には帰って来れた。
走って帰って来たせいか、安物のジャケットは汗と埃で汚れてしまったので直ぐ脱いでいく。
すると店員さんが絶賛して薦めてくれたレースとリボンのついたシャツだけの自分が部屋の鏡に映っていた。
自分の目が涙のせいで少し赤く染まっている。
「……シャツで……自分の魅力が増えるなんてある訳ないのにね……」
鏡の自分にそう呟いてからシャツを脱いでシャワーも浴びずに寝てしまった。
確かにすぐ思い出せなかったが、シュワルツ様に言い方が優しそうでいて……とてもキツい事を言われたと思った。
貰った物を忘れてしまっていた訳じゃ無かったけれど……今はそう思われても仕方がなかったかも知れない。
貰い物をすぐ忘れてしまうっていう言葉が図星で心にグサリと棘が刺さった様な気持ちになった。
何故だか手が震えだして今まで美味しかった料理がどんな風に美味しかったのか思い出せなくなってくる。
「兄さん!!本当に何の話をしているんだ!!エネに大した物なんか何にもあげてないよ!!」
ニコル先生がいよいよシュワルツ様に激高していたが、そんなニコル先生に対しシュワルツ様は少し残念そうな目でニコル先生を見ていた。
それにしても、先月はニコル先生に気軽に沢山のパンを貰ってしまい図々しかったかも知れない……よく考えればニコル先生にも余計な心配をさせてしまって、今日は自宅にまでノコノコやって来て食事を頂いている……。
それが、俺にとってはおかしい事だとは思わなかったが、俺の考えがそもそもおかしい事だったかも知れない。
侯爵家に招かれて図々しく田舎の平民の俺がやって来たから侯爵様達は常識が通用しない俺にびっくりしているのかも知れない。
ニコル先生はこんな俺にいつも優しくて何でも答えてくれるから俺はずっと甘えていたんだろうな。
……俺はもうここには居られない。先生甘えてしまってごめんなさい。
「ニコル先生……私の事を心配して下さって有難う御座いました。そしてご家族の方々とご一緒に食事をさせて頂き、お邪魔してしまったようで……大変ご迷惑をおかけしました。お食事の途中ですが、これて失礼したいと思います」
少し涙が出そうになったが、グッと堪えて何とか言えた。
すぐに席を立ち、足速に玄関の方に向かう。
広い家の中で迷いそうだったが、スムーズに玄関まで辿り着いてホッとする。
執事さんが「エネ様、食事がまだ終わっていないのですが、お帰りになられるのですか?」と聞いてきたので、「帰りますので門を開けて欲しいです」と伝えるとお送り致しますと言って庭先の門まで先導してくれた。
門から出る時、ニコル先生が「エネー待って!!お願いだ!!待ってくれ!!」と少し離れた所から聞こえてきた。
執事さんが途中で「ニコル様が呼んでおりますが……」と聞いてくれたが、俺は顔だけ左右に振ってお辞儀をしてから門を出た。
先生が招いてくれたお食事の席を途中退席してしまった今はとてもニコル先生に顔向けが出来ない。
そう思って門を出たらそのまま走りだしてしまった。
先生……俺は出来るだけ失礼のない様に頑張ったんですけど、先生のご家族に嫌われてしまってごめんなさい。
思いっきり走って帰ったので、どんな道で帰ったが覚えてないが、家には帰って来れた。
走って帰って来たせいか、安物のジャケットは汗と埃で汚れてしまったので直ぐ脱いでいく。
すると店員さんが絶賛して薦めてくれたレースとリボンのついたシャツだけの自分が部屋の鏡に映っていた。
自分の目が涙のせいで少し赤く染まっている。
「……シャツで……自分の魅力が増えるなんてある訳ないのにね……」
鏡の自分にそう呟いてからシャツを脱いでシャワーも浴びずに寝てしまった。
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